儚き想い、されど永遠の想い
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221部分:第十六話 不穏なことその十三
第十六話 不穏なことその十三
「話は順調に進んだ」
「まことにいいことに」
「まことにな。そう思う」
実際にだ。そうだというのだ。
「これからは鉄道も軸となり」
「そしてそこからですね」
「百貨店や。遊園地も」
「遊園地もですか」
「劇場もだ。不動産もそうしたものも」
「鉄道からはじまりますか」
「それが軸になり進む」
あらゆる産業がだ。人を運ぶ鉄道が軸になっていくというのだ。
「鉄道の力は凄い。それとだ」
「それと?」
「車だ」
車のこともだ。話す彼だった。
「あれもいいものだ」
「鉄道だけでなくそれも」
「車も軸になる」
鉄道だけでなくだ。それもだと話すのである。
「あれもだ」
「車は」
「いや、なる」
鉄道に関するのとは違い懐疑的になる妻にだ。彼は確かな声で話した。
「あれも産業の軸にだ」
「そうであればいいのですが」
「亜米利加にフォードという企業がある」
「フォード?その企業が」
「車を大量生産して安く売っているのだ」
それが為されてきていた。亜米利加も大きく変わってきていた時代だったのだ。
「それまでは金持ちの道楽だった車が」
「それが」
「日本もな」
「そのフォードができますか」
「我が家がなる」
そのだ。八条家がだというのだ。
「我が家がな」
「では車も」
「亜米利加に人をやってだ」
早速といった話だった。
「それで進めている」
「早速ですか」
「少し早いか」
語りながらだ。その顔をいぶかしむものにもさせる。
「それは」
「いえ、この場合はそれでよかったかと」
だが妻はだ。夫のその早い行動をよしとしたのだった。
「人を送られたのですね」
「そのフォードに。研修にな」
「それはいいと思います」
「何故いいのだ?」
「それは勉強だからです」
「後々の為のだな」
「はい、ですから」
勉強だからいいというのだ。ここで妻はその勉強について話した。
「学問とも言うべきでしょうか」
「学問でもあるのか」
「車に関して。そして産業に関して」
「そうしたことも学問になるのか」
「全て。学問です」
彼女独自の考えだ。それを夫に話したのである。
「この世のあらゆることはです」
「では産業もまた」
「はい、学問です」
また夫に対して話す。
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