大阪の塗り壁
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第五章
「そうしたらね」
「姿を消すんですか」
「そうだっていうから」
それでというのだ。
「若し邪魔するならね」
「棒を見付けてですか」
「下を横に払えばね」
「いいんですね」
「そうよ」
詩織の言葉は素気なかった。
「それだけでいいから」
「無害なんですね」
「日本の妖怪ってそういうの多いでしょ」
「邪魔とか悪戯をするだけで」
「驚かせたりね」
「それだけだからですね」
「そう、もう出て来てもね」
塗り壁にしてもというのだ。
「別にね」
「驚く必要はなくて」
「それでね」
「棒で、ですか」
「下を横に払えばね」
詩織はまた香菜に塗り壁が出たらどうすればいいのかを話した。
「それでいいから」
「そうですか」
「まあ絶対にそこを通らないと駄目じゃない時は」
「うちの主人みたいにですね」
「別の道を透ってもね」
そのやり方でいってもというのだ。
「いいし」
「そう思うと何でもないですね」
「そうよね」
「むしろここに妖怪がいるって思うと」
お茶を飲みつつだ、香菜は自然と笑みになった。そのうえで詩織に対してこう言った。
「面白いですね」
「そうでしょ、八条学園なんてね」
「妖怪のお話が一杯あって」
「もう七不思議どころか百不思議位あってね」
それ位あってというのだ。
「凄く面白いわよ」
「そうなんですね」
「だからね」
「これはですか」
「楽しめばいいのよ」
それがベストだとだ、詩織は香菜に話した。
「妖怪がいたらいたらでね」
「そういうことですね」
「ええ、じゃあ塗り壁についてはね」
「出たらね」
その場合はというのだ。
「言った通りにすればいいから」
「本当にそれだけですね」
「まさにね、じゃあね」
「塗り壁はそういうことで」
「今日も私達どっちもパートよね」
「何か主婦も何かとですよね」
「やること多いわね」
「そうですよね、お金ってどうしても必要で」
香菜は笑って所帯の話をした、自分達のそれを。
「主人も働いて私も」
「私もよ。パートでそうしてね」
「お金稼いで」
「将来お家も欲しいし」
「何といっても子供ですね」
「そうよね、車はあるし」
そちらはもうというのだ。
「車検のお金も必要だし」
「何かと必要ですから」
「お金はね」
「稼いでいきましょう」
二人でこうしたことも話してだった、香菜も詩織も妖怪のことは頭に入れつつも日常の生活の中にいた。お金のことや夫のこと等何かと考えることはあるがそれでも二人は充実した幸せな日常の中にいると言えた。
大阪の塗り壁 完
2018・1・28
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