悪霊
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第五章
一連の事件が終わって一週間後だった、神戸のある教会の中で金髪に白い詰襟の少年佐藤十字が同じ教会にいる神父に語っていた。
「大阪での出張だけれどね」
「全てですね」
「上手くいったよ、全員ね」
それこそというのだった。
「神罰を与えたよ」
「一人残らずですね」
「そう、全員そうしたよ」
「それは何よりです」
「彼等全員にこれ以上はないね」
「恐怖、絶望、苦痛を」
「心に刻み込んだうえでね」
そうしてとだ、十字は神父に坦々と話した。
「この世での生を終わらせたよ」
「それは何よりです」
「悪人は死んで悪霊となる」
「はい、しかしですね」
「悪霊となろうともどの様にして最後の審判まで人に害を与えない様にすべきか」
「その悪霊に怨念を与えないことですね」
「恐怖と絶望、苦痛を与え」
そしてというのだ。
「その感情で心を満たさせればね」
「人への怨念、憎しみを持たず」
「死んでもそちらにいくから」
心、それがというのだ。
「だからだよ、僕はね」
「神罰と共にですね」
「悪人達を徹底的に殺すんだよ」
「あえて惨たらしく」
「悪人への神罰は容赦なく」
そしてだった。
「最後の審判まで人に害を与えさせない」
「生きている時と同じ様に」
「その為に僕は悪人を常に徹底的に惨たらしく苦痛と恐怖を絶望を与えているんだ」
「生きてきたことを後悔するまでに」
「実際に後悔させているよ」
そこまでのものを与えているというのだ。
「そうしていれば。悪霊となりその場に留まっていても」
「例えそうなっていても」
「人を見ることは出来ないから」
「気付くこともですね」
「苦痛と絶望、恐怖に死んでからも苛まれて」
十字自身が与えたそれによってというのだ。
「それどころじゃなくなるからね」
「その様に殺されていますね」
「そう、神罰は神の怒りだけじゃないんだ」
「悪霊に人に害を与えさせない」
「その意味もあるんだ」
「そしてその神罰をですね」
「大阪でも与えてきたよ」
神罰を与えるべき然るべき悪人達にというのだ。
「そうしてきたよ」
「お疲れ様でした」
「それではね」
「これよりですね」
「少し休むよ、そして明日は」
「登校されますね」
「そうさせてもらうよ」
こう神父に答えた。
「学校に戻るよ」
「それでは」
「うん、そしてね」
「そしてですね」
「また誰かいれば」
「神罰を与えるべき輩が」
「僕は出るよ」
神罰、それを与えにというのだ。
「法皇猊下からのお言葉があれば」
「そうされますね」
「それが僕の務めだからね」
十字は坦々と述べ続けていく。
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