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悪霊

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第三章

「これからね」
「な、何だこいつ」
「化けものか?」
「早く何とかしろ」
「銃出せ、銃」
 だが銃を出す前にだった、少年は彼等に襲い掛かり。
 腕や足を引き抜き首をねじ切る、恐怖と絶望と苦痛に動けなくなった彼等を容赦なく殺戮した。そしてある顧客が事務所で惨劇の後を見て腰を抜かして通報してまた警察が動いた。
 現場に駆け付けた警官達のうち何人かはその場で嘔吐した、そのうえで言うのだった。
「これ平日の昼間のことか!?」
「今日の昼ここまでしたのか?」
「何だ、首ねじ切れてるぞ」
「腕もひっこ抜かれて」
「手足が折られてる奴ばっかだな」
「おい、目ん玉抜くな」
「耳も落ちてるぞ」
 身体のあちこちが引き千切られてそこにあった。
「歯も落ちてるな」
「ここで潰れてるの心臓だぞ」
「これは胃だぞ」
「内臓出してるとかな」
「無茶苦茶な殺し方だな」
「闇金でもこれはないだろ」
 警官達は蒼白になりつつその惨劇を検証しはじめていた。
 そうしてだ、こう言うのだった。
「これは前の梅沢の息子殺した奴か?」
「だろうな、殺し方が同じだ」
「相変わらずえげつないな」
「えげつない殺し方する奴だ」
「同じ奴にしか思えないな」
「あいつ以外にないな」
「本当に神戸から大阪に来たな」
 彼等はこのことを推察した。
「このテリーローンは俺達が目をつけていた」
「あんまりにもやり口がえげつなかったからな」
 闇金の中でもというのだ。
「そんな連中だったからな」
「何時かは思ってたが」
「先に全員嬲り殺すとかな」
「とんでもねえことしてくれる」
「神戸から来たにしても」
「誰なんだ」
 謎の連続殺人犯のことを思うのだった、しかしだった。
 事件はこれだけで終わらなかった。銀山達哉という男がいた。
 かつては高校の陸上部のホープだったが交通事故から部を去り今では校内でも札付きの不良になっていた、カツアゲにイジメに万引きにレイプとだ。
 これまたやりたい放題の屑になっていた、痩せた目つきの悪い顔に横をやや短くしたくすんだ金髪の男だ、この男が自分を交通事故に遭わせた男の娘をつけていた、娘に自分の恨みを押し付け犯すつもりだった。
 娘の帰り道をつけてそうして人気のないところで襲って犯すつもりだった、だが公園に来た時にだった。不意に彼の前に。
 影が現れた、彼は瞬時にだった。
 銀山の股間に蹴りを入れた、それで急所を両方共潰した。それからだった。
 激痛に蹲ろうとした銀山の頭を掴み顔に何度も膝蹴りを浴びせた、それで顔の骨を数ヶ所砕き歯も十本程折り。
 気を失いかけたところで頭を掴んだまま引き摺って物陰に連れ込んで彼に言った。
「銀山達哉君だね」
「あがががが・・・・・・」
「君のことも聞いてるよ」
 銀山はここで見た、白い詰襟の少年が自分の前に立っているのを。股間と顔中の激痛の中で彼を見た。少年は彼にさらに話してきた。
「陸上部を退部してからならず者になった」
「だ、誰だ手前」
「髪罰を与える者」
 少年は銀山に答えた。
「君にこれまでの悪行の報いを与える者だよ」
「俺は事故に遭った被害者だぞ」
 銀山は自分のことを言った。
「その俺にかよ」
「事故は事故、罪は罪」 
 これが少年の返答だった。 
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