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レーヴァティン

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第三十八話 オーロラの下でその十二

「大丈夫だよ、それにね」
「それに?」
「僕ここまでいつもだから」
「立って寝てたのかよ」
「そうなんだ、外でね」
「それはまた凄いでござるな」
 進太は大男の言葉に驚きつつ応えた。
「テントも使わないで、ござるか」
「そうだよ、ずっとね」
「立って寝てでござるか」
「ここまで来たんだ」
「野生の獣より凄いでござるな」
「元々の世界でも寒さには強いし」
 大男は一行と向かい合いながら笑って話した。
「立ったまま寝られるからね」
「この世界でもござるか」
「そうしているんだ」
「そのことはわかったごでざる、そして今でござるが」
 進太も他の者達も大男の今の言葉は聞き逃さなかった、聞いたその瞬間に表情が変わっていた。それで今は進太が代表して大男に問うた。
「元々の世界は、と言われたでござるな」
「うん、言ったよ」
 はっきりとした返事だった。
「今ね」
「では貴殿は」
「そう、外の世界から来たよ」
「拙者達と同じということは」
「ああ、君達皆そうだね」
 大男はここで久志達を見てわかった、全員厚い帽子で頭全体を覆っていて顔しか見えないがその顔を見ての言葉だ。
「アジア系だね」
「この島では珍しいでござるな」
「僕と同じだよね」
 源三と似ているがより朴訥とした喋り方のニュアンスだ。
「そうだね」
「その通りでござる、そして」
「うん、僕はね」
「世界を救う十二人の一人だよな」
 今度は久志が聞いてきた。
「そうだよな」
「十二人?」
「その話は知らないか」
「いや、そうした話は」
 大男は朴訥とした口調のまま久志に答えた。
「僕は」
「知らないのかよ」
「こっちの世界に気付いたら来ていて」
 このことは久志達と同じではある。
「暫く大きな荘園に雇われていてそこで農夫をしていたんだ」
「そうだったのかよ」
「大学、八条大学じゃ農学部の林業科で木のことにも詳しくて」
 それでというのだ。
「斧も使っててね」
「まさかそこでか」
「ちょっと長いお話になるけれどいいかな」
「ではです」
 大男の今の言葉を聞いてだ、順一が応えた。
「今からテントを出しますので」
「その中に入ってだね」
「詳しいお話をしましょう」
 そうしようというのだ。
「ここは」
「それがいいな、ここは立ってるだけでも寒いしな」
 相当な厚着をしてカイロを中に入れていてもだ、久志はその寒さを肌で感じつつ順一の提案に頷いた。
「テントの中で飲みながら話をするか」
「そうしましょう」
「あんたもな」
 久志は大男にも声をかけた。
「それでいいよな」
「それじゃあね」
「しかしあんた本当によくこんな中で寝られたな」
 またこのことを言う久志だった。
「超人かよ」
「寒いのには強いから」
「それでも限度があるだろ」
「あはは、そうだけれどね」
 素朴な笑みでだ、大男は久志に応えた。
「これ位の寒さでも平気だよ」
「そうか、けれどな」
「うん、テントの中でだね」
「ウォッカ飲みながら話そうな」
 こう話してだ、早速人間用と馬用のテントを出してだった。一行はその中に入って話をはじめた。大男の話をそこで聞くのだった。


第三十八話   完


                2017・10・16 
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