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大雨の中で

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第三章

 ジャビット団の面々に完全に囲まれていた、だがその中であくまで冷静であった。ジャビット団の面々はその冷静さに問うた。
「怖くないのか」
「これだけの数に囲まれているのだぞ」
「大雨の中でガスから火を出すことは出来ないというのに」
「何故そこまで冷静だ」
「死ぬのが怖くないというのか」
「僕は死なないし負けない」
 ガス太郎は冷静な顔のまま彼等に答えた。
「だから落ち着いているんだ」
「痩せ我慢か?」
「それとも恐怖で頭がおかしくなったのか」
「力を使えないでこの数に囲まれて」
「それで頭がおかしくなったのか」 
 ジャビット団の面々はこうも考えた。
「それでか」
「それでなのか」
「東成はおかしくなったのか」
「そうなったのか」 
 ジャビット団はガス太郎の冷静さを狂気かとも思った、だが圧倒的な数に武器もある。それでだった。
 彼等は指揮官の号令一下ガス太郎に襲い掛かった、力を使えない彼ならばと勝利を確信しつつだった。
 だがその彼等にだ、ガス太郎は。
 ガスバーナーを出した、そうして。
「受けろ!」
「!?」
「まさか!」
 ジャビット団の面々は見た、その光景を。
 ガス太郎のガスバーナーから炎が出た、それは赤い炎ではなかった。
 白く燃える炎だった、それは大雨の中でもはっきりと出てだった。
 ガス太郎はその白い炎を自ら駒の様に回転して周囲に放って自分を囲んで襲い掛かるジャビット団の面々に攻撃を加えた。すると。
 ジャビット団の面々を一瞬で焼き尽くした、指揮官は瞬時に消え去った部下達と白い炎を放ったガス太郎を見て驚きの声をあげた。
「馬鹿な、炎を出したというのか」
「僕は確かに水で火を消されるよ」
 ガス太郎はもう火を収めていた、そのうえで指揮官に答えた。
「けれどそれは温度が低い火ならだよ」
「高温の火ならか」
「そう、水が幾ら火を消そうとしても」
「水が消しきれないか」
「そう、だから今は」
 大雨の中ではというのだ。
「あえて高温の炎を出して」
「戦ったのか」
「そうだよ、僕の全力だったよ」
 先程の白い炎を出して自分に襲い掛かった彼等を焼き尽くしたことは。
「そしてその全力で」
「大雨にも我等にも勝ったというのか」
「今の様にね」
「おのれ、何ということだ」
「全力だから疲れたけれど」
 それでもというのだった。
「君達には勝ったよ」
「この様なことになるとは」
「じゃあ次は君と戦うよ」 
 ガス太郎は指揮官を見据えて彼に宣言した。
「いいね」
「誰かいるか!」
 指揮官は部下を呼んだ、しかし返事はなかった。他の戦士に向けた戦力も一人残らず倒されてしまっていた。 
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