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【アンコもどき小説】やる夫は叢雲と共に過剰戦力で宇宙戦艦ヤマトの旅路を支援するようです

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閑話 天王星基地の酒場にて

 国際連合国連宇宙軍天王星基地は天王星の衛星オベロンに建設されている。
 外惑星域艦隊の司令部が置かれ、漂流者が交渉用に領事館を設置している。
 総領事はメイドロボ『シャングリラ』と名乗っているが、緑髪の彼女と共に女性型メイド十数人と共に地球側との交渉を一手に賄っている。
 今や外惑星域最大の拠点となったオベロンには付随した都市が作られ、防衛の最前線であると同時に外惑星域開発の拠点としても発展しようとしていた。

「放浪者艦隊さまさまだな。
 昨日までは、海王星で働いていたのに」

 歓楽街の酒場で酒とともに雑談を楽しんでいる古代守がさらりと新見薫に話す。
 彼女も優秀な成績と出世コースを蹴って、天王星基地で働いていた。
 休暇なのを良い事に天王星基地まで遊びにこれるのも、放浪者艦隊のGR-75中型輸送船が海王星と天王星の間を結んでいたからである。
 ワープ機能がある彼らの艦艇による外惑星航路は以下のとおりである。

 天王星-海王星 (資源採取プラントからの資源搬出ルート 放浪者艦隊が代行)

 天王星-木星  (資源輸出ルート 地球側 放浪者艦隊代行)

 天王星-セドナ (資源輸出ルート 放浪者側 地球側は基地の存在をまだ知らず)

 天王星-冥王星 (軍事基地への補給ルート 放浪者艦隊代行)

 全航路が放浪者艦隊任せで成り立っている。
 その代行手数料としての重水素取り分割当も結構払っているのだが、それ以上に運ばれた重水素のエネルギー量に地球側は狂喜していた。
 その為、全部を自分で取りたい木星の資源採掘ステーションとその資源搬出航路の建設に地球側は邁進していたのである。

「本当ですよ。
 地球側はやっとジュピトリス級の木星船団を出発させたばかりですよ」

 古代守を呼び出した新見薫が言ったジュピトリス級もまた放浪者艦隊から設計図を提供されたスペースタンカーである。
 地球と木星の間を数ヶ月で往復する事でこれらの資源を地球にもたらすことができるので、各国は軍備増強と同時にこのスペースタンカーの製造に狂奔。
 これによって、現在の地球は史上空前の大好況に湧いていた。

「この数年で宇宙開発については劇的に進化した。
 だが、それは俺達の手では無く、与えられたという所がポイントだよな。
 放浪者艦隊はまるで母か教師のように俺たちに進化を促している。
 健全に、急ぐ事無くだ」

 新見薫に古代守を呼ぶように指示した真田志郎が淡々と現在の状況を分析する。
 酒の席でこの二人が漏らすことはないと信じているからこそ、機密すれすれの怪しい話を二人に漏らす。
 今の彼は天王星基地勤務で、新見薫と共にガミラスの鹵獲戦艦の研究に従事していた。

「ガミラスの捕虜とのコミュニケーションでガミラス側の技術についてかなり分かってきたが、ゲシュ=タム機関を調べていってその理由がわかった。
 あれを試行錯誤で扱ったら、下手すれば多分星が飛ぶ」

 ワープをする場合尋常ではないエネルギー量を必要とし、熱核融合エンジンですらそのエネルギー量に届いていなかった。
 二度に渡るオールト会戦で生存者が少ないのも、この巨大エネルギー炉が爆発したら生き残れないというのが大きい。

「もっとも、星が爆発するエネルギーがあれぐらいで済む訳じゃない。
 ゲシュ=タム機関。おそらく次元波動超弦跳躍機関と名付けられるそれの爆発でエネルギーがあれだけしか無いのは、機関暴走によるエネルギーが別次元に逃れているんだよ。
 実際気になる報告があってな。
 オールト域での光および電波観測で障害が発生してる箇所があるんだ。
 オールト会戦の戦場跡で。
 明らかに何かが起こっているんだが……」

 このまで言って真田志郎は黙って酒をあおる。
 現在の地球は母星防衛戦争の真っ只中で、ある程度の危険を許容してもガミラスに対抗する手段を欲していのである。

「たしか、ガミラスの戦艦のもう一隻は木星で研究中だったか?」

「ああ。
 地球近くで波動超弦跳躍機関、面倒だから波動機関でいいか。
 それが暴走したら目も当てられんという理由と、国連各国の政治的材料にされるのを軍が嫌ったという理由から木星の宇宙ステーションで研究される事になっている」

 古代守のあいうちに真田志郎は酔ったふりをして適当に手を動かす。
 つまり筆談をしなければならないほどやばい話なのだが、それはこの三人の友情と信頼を信じているからこそである。

『で、だ。
 漂流者艦隊から与えられた戦艦の設計図を見て気づいたんだが、あの船波動機関の載せ替えが可能だ。
 というか、その載せ替え前提に設計図を作っているふしがある』

「何っ!?」

 声を出して立ち上がった古代守に新見薫がすかさずフォローを入れる。

「だめですよ~古代さん!
 もっとお酒は楽しく飲まないとぉ~」

「ああ。
 すまんすまん。
 新見ちゃんが可愛いものだから……」

「やだあ♪もぉ♪」

 馬鹿話をしながら筆談は続く。
 それぐらいの腹芸ができないと、学校の主席と次席はつとまらない。
 後輩の新見薫もしっかり主席だった。

『本当ですか?それ?』

『載せ替え可能と載せ替え前提では設計に大きな差が出る。
 あの戦艦は明らかに余剰スペースや燃料タンクが大きくてここまで出るための設計かと思ったが、波動機関に転用した場合綺麗に収まるんだ。
 漂流者艦隊は間違いなくこの技術について知っていて、俺達がそれを得た時にすぐに戦力化できるように船を作っていたという訳だ』

 なお、与えたやる夫側からすれば勘違いも良い所である。
 皮だけで中は再設計だったから、熱核エンジンでの出力を補う為に巨大燃料タンクを用意しただけなのだが、波動機関の小型化がそれに偶然収まっただけである。
 とはいえ、ワープ対応で外部装甲の設計はしたのは事実なのだが。
 
「なぁ。古代。
 やる夫を覚えているか?」

「ああ。
 嫁の叢雲と共に木星開発の際の事故で行方不明だっけ?
 お前たちと一緒に葬式に参加しただろう?」

 古代の言葉に真田志郎は筆談でここに彼を呼び出した理由を書いた。


『入即出やる夫が放浪者艦隊に関わっている可能性がある』


 グラスの水滴がテーブルに落ちる程度の時間、古代守は動けなかった。
 真田志郎の顔を見るが、彼だけでなく新見薫も真顔だった。
 つまり、酒の席での冗談ではないらしい。

『元々気になってはいたんだ。
 何で与えられた技術や戦艦の設計図が地球の規格と一致するかとな。
 漂流者艦隊は地球のことを知っていた。いや知りすぎていた。
 それは地球人が存在したからじゃないかと俺は考えている。
 たとえば、俺たち地球人を知ろうと送り出した偵察艦艇が、木星近くで事故に会ったやる夫の船を見つけるなんて偶然があったかもしれん』

 新見薫が一枚の写真を手渡す。
 それはあの日卒業式でとった記念写真で、記念だからと叢雲のメイドだった鹿角さんも一緒に映っていた。
 それに古代守はひっかかりを覚える。

「最初に気づいたのは新見なんだよ。
 彼女の指摘でピースがハマった。
 ちょうど時間だな。モニターを見てみろ」

 真田志郎の言葉に古代守は首をひねりモニターを見ると、ちょうどニュースが始まろうとしていた。

「外惑星域ニュースの時間です。
 放浪者艦隊シャングリラ総領事は外惑星艦隊沖田司令官との会見で、『現在の戦力では防衛が追いつかない可能性がある』と指摘。
 地球側の更なる戦力強化を求めました。
 これに対して沖田司令官は更なる技術供与と軍事支援を要求し…………」

「っ!?」

 古代守は気づく。
 シャングリラ総領事の着ているメイド服に。
 それが鹿角さんとそっくり同じものだという事に。
 古代守が次のリアクションを取るまでに、グラスの酒二杯を消費しなければならなかった。

『それ、上に伝えたのか?』

『伝えられる訳無いだろう。
 偶然に偶然を重ねた妄言でしかないからな。
 だが、俺はやる夫か東雲叢雲か鹿角さんが生きていると考えている。
 漂流者艦隊のおそらく首脳部に近い所に日本人が居る可能性があるなんて漏れてみろ。
 国連内で下手したら戦争が勃発するぞ』

 漂流者艦隊の取り込みという地球での暗闘は外惑星域でも激しさを増していた。
 ロシア艦隊が建造したてのボロジノ級二隻を送り出したのも、中国艦隊が盾にもならない大艦隊を並べたのも全てはこの暗闘の為である。
 なまじ大量破壊能力を保持しているから、戦争で都市が数個焼けるならまだまして、全面核戦争の果てに人類滅亡もあるから怖い。
 現在の地球は国家間で壮絶に争い合いながら、その余力を持ってガミラスと戦っていると言ってよかった。
 勝てるわけがない。

『何でそれを俺に伝えたんだ?』

『お前がいる海王星基地の資源採取プラントは漂流者艦隊にとっても大事な場所だ。
 会えるとすれば多分ここ天王星基地よりも、海王星基地の方が高い。
 もし会えたのならば……両親を心配させた罪でぶん殴ってやれ。
 今も両親の二人は心配していると伝えてやってくれ』

 たったそれだけ。
 友だったからこそそれが許せなかった。
  
「分かった。
 お前の分も入れて二発は殴ってやる」

 アラームが一斉になって、モニターも切り替わる。
 それの意味する所はガミラスの襲来だった。

「緊急警報!緊急警報!
 休暇中の国連宇宙軍将兵は最寄りの基地にて待機してください!
 市民の皆様は所定のシェルターに避難してください」

 それぞれの持つ端末に、それぞれの階級に合わせて情報と任務が提示される。
 それぞれの情報を総合して古代守が呟いた。

「探査衛星からの報告らしい。
 ガミラスの奴ら、ミサイルを冥王星に打ち込んだと同時に、隕石を大量に木星に送り込んだらしい」

 その呟きに真田志郎が疑念を持つ。

「隕石?
 ガミラスの奴らがそんな手を使うのか?」 
 

 
後書き
元ネタ
シャングリラ 林トモアキ『ミスマルカ興国物語』10巻より。
 私のお気に入りシーンなので登場決定。
 彼女が空を見るシーンは泣いた。

ジュピトリス級 Zガンダム シロッコの船 でかい 
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