儚き想い、されど永遠の想い
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15部分:第一話 舞踏会にてその十二
第一話 舞踏会にてその十二
「貴女は若しかして」
「先程庭にいまして」
「そこで拾われた」
「そうです」
その通りだと話す美女だった。
「その通りです」
「貴女がでしたか」
「今からそちらに向かいます」
美女からの言葉だ。
「庭の方に」
「いえ、それには及びません」
しかしだった。義正は自分からこう言ってだ。美女を止めた。
「私の方からそちらにお伺いします」
「貴方がですか?」
「はい、そうさせてもらいます」
こう美女に話すのだった。
「そうして宜しいでしょうか」
「いえ、殿方にその様な」
「何、構いません」
美女の礼節はだ。鷹揚な笑顔でいいとした。
「私のハンカチですから。だからですか」
「はい、だからです」
それでだと話してだ。彼はだ。
自分からバルコニーに向かった。そうしてなのだった。
バルコニーに出てだ。彼はだ。
美女の前に出た。そのハンカチを受け取ったのだった。
「有り難うございます」
「はい」
彼は美女の手から直接受け取った。話はそれで終わりではなかった。
美女はだ。微笑んでこう彼に言った。
「あの」
「何でしょうか」
「貴方のお名前は」
こうだ。彼に尋ねたのだった。
「何というのでしょうか」
「私の名前はですか」
「そうです。貴方の名前は何というのでしょうか」
また彼に尋ねた。
「宜しければお答えして頂けますか」
「はい、八条といいます」
義正はだ。まずは姓から話した。
「八条義正といいます」
「八条!?」
「はい、八条です」
また話す彼だった。
「それが私の名前です」
「そうですか」
その名前を聞いてだった。美女はだ。
暗い顔になってだ。そうして彼に話したのだった。
「御名前を言って頂けました」
「はい」
「では私も名乗らなくてはなりませんね」
こうだ。その暗い顔で話すのだった。
「私の名前はです」
「何というのですか?」
「白杜といいます」
こう話す彼だった。
「私の名前は。白杜理恵といいます」
「白杜、ですか」
「はい。因果なものですね」
また彼に暗い顔で述べた。
「二つの家がこうしてここで会うとは」
「全くですね」
自然とだ。義正も俯いてしまっていた。そうなってしまっていた。
これが二人の出会いであった。全てはここからはじまった。だがそれで終わりではなかった。むしろだ。これがはじまりであったのだ。
第一話 完
2011・2・20
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