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フルメタル・アクションヒーローズ

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外伝 メタル・ライフセーバーズ
第1章 着鎧甲冑ドラッヘンダイバー
  第1話 第二世代へのバトン

 
前書き



 冬塚おんぜ様より、この外伝「メタル・ライフセーバーズ」の表紙イラストを賜りました! 冬塚様、ありがとうございます!
 

 
 ――西暦二◯三二年、東京。

 先進国の一角として、繁栄の時を謳歌するその大都市を、ある一人の男が見下ろしていた。

 広大なビル群をガラス越しに一望できる、そのオフィスに佇む彼は――鋭い眼差しで、都会を行き交う人々を見つめている。
 百九十センチはあろうかという圧倒的な肉体を漆黒のスーツに隠す、浅黒い肌を持つその男は――太陽の煌めきをスキンヘッドで照り返しながら、懐に手を伸ばした。

 取り出されたのは、携帯電話。着信音を鳴らし、男を呼び出した相手は――

「ワガハイだ。……どうだね、屋久島の秘密飛行基地でテストしているフェザーシステムの状況は」
『――『至高の超飛龍(アブソリュートフェザー)』、もとい六十二号の調整は順調です。遅くとも来年の末には、正式にロールアウトできるでしょう。予定では来年の八月二十日に、最終テストを行う予定です』
「頼もしい限りだな、西条主任。――して、先月こちらから派遣したテストパイロット達はどうだ? なかなかの粒揃いを寄越したつもりだが」
『はい。こちらの期待通り、かなりのデータを集めてくださいました。ただ、その……テスト飛行中、エンジントラブルで……』
「全滅、か? ――君のいる部隊では、珍しくもないようだが」
『……はい』

 ――西条夏(さいじょうなつ)。その名を持つ女性は、電話越しに沈痛な声色でそう呟いた。

「そうか……遺族には、ワガハイから話しておこう。補償のことも含めてな。……それで、やはり生き延びているのは――例の少年だけか?」
『はい……。現在も、彼の二十一号だけがテスト飛行を続行しています』
「『改造電池人間(かいぞうでんちにんげん)』……か。甲侍郎殿が恐れていた救芽井エレクトロニクスの暗部が、着鎧甲冑の未来に大きく貢献しているとは皮肉なことだ」
『……やめてください、その言い方は! あの子はただ……!』
「あぁ……すまなかった。ワガハイとしたことが、今の発言は思慮に欠けていたな。――彼も、望んで今のようになったわけではないのだから」
『……』

 男の言葉に、相手の女性は何も返さない。これ以上この話題を続けるな、と暗に訴えているかのようだった。
 その意図を知ってか知らずか、男も話題を切り替えた。

「――何にせよ、今のフェザーシステムにはあの少年の力が不可欠だ。最後まで協力して貰えるよう、こちらも最大限のフォローは尽くす」
「……ありがとうございます」
「さて。話は変わるが、こちらからも報告すべきことがある。ダイバーシステム試作三号機の試験運用を、ワガハイのアカデミーで行うことになった」
「ヒルフェン・アカデミーで……ですか? 今年から入る一期生から、テストパイロットを選抜するという噂は伺っておりましたが……まさか、本当に……?」
「ワガハイはデマを流したつもりはない。レスキューカッツェに回した一号機と二号機からは、すでに十分なデータが取れているが……それは、あくまで経験豊富なベテランから得た情報に過ぎん。これから次世代機と共に歩んでいく若者のデータがないままでは、試作機の意味がなかろう」
『しかし、ダイバーシステムは精鋭揃いのレスキューカッツェの隊員ですら、乗りこなせる人間は一握りだったのですよ。学生の中から適格者が見つかるものでしょうか……』

 電話の向こうから、訝しむような彼女の声が聞こえてくる。だが、男はその反応を予見していたかのように――口元を緩めていた。

「案ずることはない。すでに、目星は付けてある」
『え……!』
「帰る場所のない彼には、丁度いい拠り所になるやも知れん。それにダイバーシステムの資格者であるという名誉も、故郷への土産話になろう」

 そう言ってのけた彼の背後にある、一台のコンピュータは――ある一人の少年の情報を、そのディスプレイに映していた。
 携帯電話を顔から離し、それを一瞥した男――久水財閥現当主・久水茂(ひさみずしげる)は、視線を窓の向こう……遙か彼方の海原へ移す。

「貴様の後釜にも――なり得る少年であることだしな。なぁ……一煉寺龍太(いちれんじりゅうた)よ」

 この日本から遠く離れた砂漠の国で、今この瞬間も戦い続けている――盟友を思って。
 
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