銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第六十三話 春の飛翔
ご心配おかけしました。
風邪はだいぶ良くなりました。
3日ぶりに更新です。
しかし謀略に比べて書きづらかったです。
私はやはり謀略こそ生き生き書けるようです。
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第六十三話 春の飛翔
帝国暦480年3月1日
宇宙暦480年3月1日、この日は銀河の歴史の中ではごくありふれた日であった。
しかし銀河帝国の中で幾人かのその後の人生を、変える日と成ったのである。
この日、銀河帝国中のテレビジョン、電子新聞、町の掲示板等に一斉に発表された内容は、
大多数の臣民は多少の関心を持ち、一部の者には嘲りを持って。
そして、実力や自信のある者達には、ある意味の喜びを持って迎えられたのである。
発表された内容は【ローエングラム大皇女記念大劇場設計コンペ】
【大劇場大ホール壁画及び展示絵画コンペ】であった。
文面は以下のようなモノであった。
【この度テレーゼ皇女殿下のローエングラム領相続記念の為、
オーディンに記念大劇場を建設するに辺り、
昨今のモノ違う斬新なる設計を求めるモノである。
我と思う者は貴賤を問わず応募せよ】
【この度テレーゼ皇女殿下のローエングラム領相続記念の為、
オーディンに記念大劇場を建設するに辺り、
劇場内に飾れし、大壁画及び絵画の制作者を求めるモノである。
我と思う者は貴賤を問わず応募せよ】
これらは銀河帝国内の貧富の差無く、あらゆる階層からの募集を行う事であり、
これまでであれば、それらは貴族御用達の建築家、芸術家が行ってきた。
今回は彼等を優遇せず初めて全臣民からの募集である。
ある意味この事は驚愕を持って迎えられた。
この日より、帝国内において、この噂が話の種に上る日々が続いた。
しかしその話は階層ごとに、それぞれ違う意味で会話されたのである。
貴族達は、この行為を皇帝の悪い遊びがまた始まったとの考え、
ことあるごとにせせら笑っていたのである。
そして、貴族御用達の者達は自らの既得権益を侵される思いで憤慨しており、
門閥貴族に傾倒する姿勢を見せて居るのである。
逆に下級貴族や平民達は、ここ数年の皇帝陛下の為されように心服しはじめており、
また新たな考えに賞賛する者達も増えていくのである。
市井における建築家や芸術家達は、
このチャンスを生かすべく心を奮い立たせるのであった。
■銀河帝国 辺境宙域 アインザームカイト星系
この地に赴任していた内務省官吏の中に、
若き日のブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒの姿が見られた。
内務省官吏として3年前に優秀な成績で入省したものの、
人を食ったような態度が忌諱された彼は、
この様な辺境の一惑星の地方官として派遣されていたのである。
今日もまた暇な毎日が始まるのかと、
最早恒例と成った朝のニュースを見ていたのである。
ふむ相変わらず変わり映えのしないニュースばかりだ、
此処では俺の才能を発揮することすら出来ない、
中央ででかい仕事をして俺の名を後世に残したいモノだ。
ん?皇女の記念劇場だって、又ぞろ無駄遣いだな、
だいたいロココ調だバロック調だって古くさいんだよな、
俺が設計すれば斬新な物を作るのにな。
所がそのニュースを見た彼は、普段の嘯くような態度は何処にも見あたらず、
心の奥底から沸々と沸いてくる喜びに包まれたのである。
「よしー、俺が設計してやるぞ!」
思わず1人で大声を上げるシルヴァーベルヒ。
この年24歳の春であった。
■ボーゲン星系 エルネスト・メックリンガー
此処にもまた若き才能を持つ男が軍務に付きながら、
休みの日にはスケッチを行いつつ過ごしていた。
一昨年、昨年の参謀職により楽しみにしていた個展を中止しなければ成らずに大変残念な結果であった。
彼は今日もスケッチをしながら、次回の個展は何時開けるかと考えていた。
部屋に帰り昼食でもと思っているとTV電話が鳴った。
誰かと思えば一昨年の参謀職以来、
芸術談義などで付き合いのある、ケルトリング中将からだった。
「メックリンガー少佐、久しぶりだね」
「中将閣下もお変わりなく、この度の正規艦隊司令官就任おめでとうございます」
「ありがとう、まだ4ヶ月だからね中々大変だよ」
画面の中で照れくさそうにはにかみ笑いをする中将。
ケルトリング中将、銀河帝国開闢以来の武門の名家で侯爵である方。
しかしその人となりは門閥貴族とは思えないほど、
気さくであり部下の忠告を良く聞き作戦を仕立てる方だ。
「本当なら貴官を参謀に欲しかったのだけどな」
残念そうな顔をする中将。
「仕方がありません、色々有りますから」
世間話をするにはしては態々FTLを使う事もないはずである、
何か有るのかと考えていると中将から話し始めた。
「メックリンガー少佐、今朝のニュースを見たかね?」
怪訝な表情をするメックリンガー。
「いえ今朝は朝からスケッチに出ておりましたので未だ見ておりません」
何か有ったのだろうか。
「いやね皇女殿下のローエングラム領相続を記念して、
今度オーディンに記念大劇場が作られるのだよ」
にこやかに話す中将。
「なるほど閣下のご令嬢は殿下のご学友ですね、
しかし其れが何か有るのですか?」
「それで、その劇場の設計を全臣民から募集するのだよ」
しかし私には関係が無いはずだ。
「閣下自分は芸術を解しますが、建築は門外です」
「いや少佐。其れだけでは無いのだよ」
にこやかな中将。
「その劇場内に飾る壁画と絵画の作者も全臣民から募集するそうだよ。
少佐、是非参加するべきだと私は思うんだ」
態々知らせて頂くとはありがたい事だ。
「閣下お知らせ頂きありがとうございます」
「少佐。何れ参謀で来て欲しいモノだよ。
では頑張ってな」
「はっ」
■オーディン ヴェストパーレ男爵邸 マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ
今朝のニュースで発表されました劇場の絵画には、
是非フランツ・オットー・レイトマイエルを参加させなければと思いましたわ。
早速フランツに連絡をしましたわ。
TV電話に出る、フランツは相変わらず母性本能を擽られますわ。
「フランツ。今朝のニュースは見たからしら?」
「マグダレーナ様絵画の話でしょうか」
流石フランツね、よく判ってるわ。
「もちろん貴方も参加するわよね」
「無論でございます」
自信満々の顔で頷くわね、其処がまた良いのよね。
「私も後押しするから頑張りなさいね」
「マグダレーナ様勿論でございます」
「じゃあまた来週にでも会いましょうね」
「はっ」
さてフランツなら実力でも大丈夫でしょうけど、
テレーゼちゃんに話しておきましょう。
■オーディン メルカッツ邸 ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ
小官がヴァガ星域警備隊司令官の職に就き早2年の月日が流れた。
妻と娘をオーディンに残し単身赴任。
食事は将官食堂で三度とも取っていたが、
妻の作る食事が懐かしく思えたモノだ。
洗濯も部屋の掃除もいい加減になってしまうのは、仕方がないと思う。
たとえ同じ下着を3日ほどそのまま履き続けたとしても、
まあ男職場だみな気にしないからな。
時々あまりの部屋の乱雑さに、地元出身部下のご母堂に部屋の掃除をして頂き恐縮したモノだ。
しかし今回の職場はオーディンから僅か2日にあるローエングラム領だ。
しかも大変名誉なことに今回の辞令は皇帝陛下のお声掛かりだ。
昨日。エーレンベルク元帥に会い、話を聞き自分の指名に興奮と誇りを持ったモノだ。
曰く。ローエングラム駐留艦隊は帰国俘虜から成っている。
「その為、苦労するかも知れん」と言われたが。
皇帝陛下からのお声掛かりという名誉を受けたのだ。
これほどの感動は無いだろう。
しかも明日、バラ園で皇帝陛下にお会いすると言う栄華を受けることになっている。
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