世界をめぐる、銀白の翼
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第七章 C.D.の計略
Mの襲撃/Wにさよならを
九月某日
時刻は午後3時少し前。
マキシこと神月の指定した時刻。
そして、場所については
「街の象徴たる風車」
「なーんのひんりもないのな」
グオングオンと、大気を掻きまわす巨大な鉄の風車。
風都中心街、そのど真ん中。
ゆっくりと、しかし壮大に。
街を見下ろすように、風都タワーの風車が今日も回る。
かつてエターナルとも戦った風都タワー中腹部。
その金網の上に、神月羽馬真は何をするでもなく二人の探偵を待ち受けていた。
「身辺整理は済んだかい?」
「必要ねーよ」
「君こそ、荷物をまとめるべきではないかい?」
「いや?フィリップ。刑務所にゃあ私物は持ちこめねぇ」
「おや、それは残念だったね」
「ま、どーせ準備してないんだし、いいんじゃねーの?」
神月から始まった会話を、勝手に二人掛けで進めてしまう探偵二人。
この男の身勝手な、実に勝手な願いのせいで、仲間が傷つき、今度は街が泣くかもしれない。
「財団Xが再びガイアメモリ産業に手を出せばこの街はまた実験都市にされる」
「それだけはさせてやれねぇ。だから、負けてやれねぇ」
「そうかい」
チャッ、と
小さな音が各人手の平から聞こえた。
紫、緑、そしてベージュ色のガイアメモリが、それぞれの記憶の名称を叫び
『サイクロン!』『ジョーカー!』
『マキシ』
「「変身!!」」
「変身」
それがベルトに挿し込まれ、三人が二人になる。
仮面ライダーが二人。Wとマキシ。
そして時刻はその瞬間へと到達し
・・・・・・♪~~!!!
午後3時。
その時を知らせるけたたましい鐘の音が、怪人と戦士の背を押していった。
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『翔太郎、あいつに二つ目のメモリを使わせるな!!』
「わかってるっての!!」
マキシシステムは、Wとアクセルのいいとこどりだ。
二つ並列のW。
一つを最大限のアクセル。
それを合わせて、二つを最大限のマキシ。
最大限活用のためにはメモリとの適合率が高い「運命の一本」でなければならない。
本来一人に何本もあるわけがないのだが、マキシはそれをなぜかできるらしい。
『からくりはわからないが、君はとにかく倒させてもらう!!』
「行くぜフィリップ!!」
『ジョーカー!マキシマムドライブ!!』
先手必勝。
手技足技で巧みにマキシの動きを徐々に制限していき、バチンと弾いた瞬間にマキシマムドライブを発動させるW。
数多くの戦闘を経験した彼のその動きにはよどみはなく、一つの型であるかのように隙はなかった。
竜巻と共に浮き上るWの身体。
対し、マキシの身体は大の字になって動かない。
「うむ!?ぬぁああ!!」
だが、マキシとてただの怪物ではない。
若干スタン状態にある身体を無理やり動かし、ガイアメモリを取出し装填する。
「逃がさねぇ!!」
ミストになって逃げるというのか。
だがそれは読み通り。
マキシマムドライブ・ジョーカーエクストリーム
その発動時に起こる竜巻は、霧となって回避するであろうミストマキシの身体を一片たりとも逃がさない――――!!!
『「ジョーカーエクストリーム!!」』
「・・・・ま、そうくるのは、ね」
Wは見た。
違う。
ミストのメモリは群青色。
だが今マキシが持っているのは、同じ「M」だが色が白だ。
ガイアメモリ起動。
だが、そのガイアウィスパーを耳にする前にジョーカーエクストリームの豪風がそれを掻き消し、マキシに向かって突っ込んでいった。
ドドンッ!!と、風都タワーを若干揺らしてWが着地する。
そして即座に振り返った。
命中していない。
翔太郎は自問する。
いや、そもそも俺たちはアイツの身体に触れたのか?
フィリップは感じていた。
違う。絶妙な力加減で、自分たちのキックは緩やかに逸らされたのだ。
ブシュウウ―――――
マキシの腕。
包帯のように巻かれた白い布がバタバタと風に揺れ、それの隙間から煙が放出されていく。
そしてそのまま腕から延びる白のラインが、ミストの時とは違い直線的にマキシの全身を奔った。
両腕は若干前に。
身体も若干半身にしており、左右に分かれたWをそのまま押して逸らしたかのような、そんな腕の配置。
そのマキシの背中を見て、Wの二人は同時に思った。
あれは何だ。
何のメモリだ。
その答えは、マキシドライバーが悠々と叫んで教えてくれた。
『マキシ―――マーシャル!!』
「仮面ライダーマーシャルマキシ」
ビッ!と踵を返して仁王立つマキシ。
ただしその姿に隙と言えるものはなく、その「記憶」に恥じぬ武人がいた。
「行く――――」
「フィリップッッ!!!」
「―――ぞっ」
ヒュッ、とマキシが一歩を踏み出した。
瞬間、翔太郎が無理やりWの全身を駆動させて四肢をフル稼働させた。
そのマキシの一歩は、優に20メートルはあった二人の距離を一瞬で詰め、まるで千手観音でも相手をしているかのような手数の手技が、Wに一斉に襲い掛かった。
それを、サイクロンの俊敏とジョーカーの戦闘スキルで対応していくW。
『ダメだ翔太郎!!僕が追い付かない!!』
「いいから踏ん張れフィリップ!!足りねぇ分は俺が引っ張る!!」
フィリップは、確かに格闘と言えば常人以上に戦える。
しかし本分ではない。
しかもこのマキシ、どういうわけかマーシャルメモリをも最大限に効能を発揮している。
『いや、これはもはや、マーシャルメモリの範疇を大きく超えて――――!?』
何かを理解したフィリップ。
そうか、この男、だからか――――
しかし
ビッ!!
『マーシャル!!マキシマムドライブ!!!』
『なっ、速い・・・』
無限に手があるのではないか。
そう思えるほどに多くの手数で攻めてくるマーシャルマキシ。
しかもその合間を縫って、メモリを抜き、マキシマムポケットに挿し、そしてマキシマムドライブを起動させる手順を一つずつ挟んできた。
速い、どころではない。
迅さが、違う。
「ォォオオオオオオ!!!」
驚愕するフィリップが、サイクロンに意識を割いていれば、まだ対応できたかもしれない。
だが、彼は知ろうとする知性の塊だ。
そこで答えに行きついてしまった彼の優秀な頭脳が、それ故にWに痛恨のミスを生んでしまった。
バチバチバチ!!!
『翔太郎!!』
「行くぞフィリップ!!!」
『ヒート!『メタル!!』マキシマムドライブ!!』
メタルのガイアウィスパーが重複する。
それほどに素早いメモリ装填。
だが、コンマ一秒が足りなかった。
『「メタルブランディん」』
とんっ
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何が来たのか、全く理解できない。
左翔太郎が目覚めると、そこは白い空間だった。
死んだか?天国か!?
おやっさんはいるのか!?
そう思って起き上がろうとするが、身体が痛い。
見ると、横でフィリップも倒れている。
そして思い出す。
そうか、ここは精神世界だ。
Wがエクストリームになったときの、二人の共有空間。
「寝てられるか」と、翔太郎が意識を外に向ける。
意識を取り戻した左。
変身はまだ解けていないようだ。
仮面ライダーW・サイクロンジョーカーエクストリームの赤い複眼が、目の前の状況にやっと追いついた。
ググッと身体を何とか起き上がらせて、プリズムビッカーを杖のようにして立つW。
あの瞬間。
指先だけをつける合掌。
力を抜き、円を作るかのような手の形を作ってWの胸の真ん中に手を当ててきたマキシ。
とんっ、という軽く当てられた程の一手。
しかし、そこから放たれた衝撃は尋常の域を3つか4つは飛び越えていた。
当てられた部位から、円形に放たれる一撃。
しかもそれはWの全身にとどまり切らず、風都タワーの一角を大きく陥没させるほどの余波を放っていた。
今日、風都タワーはマキシの予告もあって警察の手で封鎖されている。
だが、だからといって安心というわけではない。
この街の象徴が崩れるのを、この町の住民は過去一度目にしている。
あれは絶望の時だった。
街を市の街に変貌させんとするテロリストによって、あの風車が地に落ちたのだ。
直後、この街の希望がそれを黄金の輝きと共に打ち砕いたため、その時はそう大きなショックはなかった。
だが、忘れたわけではない。
覚えているのだ。この街の象徴が崩れる、あの時を。
そして、それが今目の前に――――
「て、めぇ・・・・」
コツコツと歩をこちらに進めるマキシ。
その背後には、もはや風車を支えきれずにグニャリと曲がった鉄骨と、それ故に二人の戦場に突き刺さった風車があった。
「これで証明された。もはやWシステムもアクセルシステムも、取るに足らない過去の遺物だと」
自分の勝利だと。
マキシはマーシャルメモリを引き抜き、通常のマキシへと戻りそれを宣言する。
ギギギギギ、と金属が擦れる嫌な音がする。
間もなく、この中腹部が重みで落ちる。
「待て・・・・コラァ!!!」
『ダメだ翔太郎!!』
「なんでフィリ・・・グッ」
立ち上がり、プリズムソードを引き抜いて斬りかかろうとするW。
だがすぐに膝が崩れ、ガシャリとその場に倒れ込んでしまう。
「辛うじてエクストリームに変身し致命傷を逃れたようだけど・・・それ、もう逃げられないって事でいいかな?」
マキシの言う通りだった。
この段階にまでなって、これだけのダメージ。
しかもマキシはほとんど無傷。
攻防、戦闘時間はたったの6分だった。
先手必勝のマキシマムドライブ。
防御され、マーシャルメモリの猛攻。
そして、この一撃。
簡潔にしてたったの3行。
この程度の戦闘で、Wの敗北は決定した。
「まだもう一つメモリはある。せめてそれを目にして逝ってくれ」
『マッハ!!!――――マキシ!』
空色の、気持ちいい色をしたマッハメモリ。
マキシの全身を同じ色のラインが走り、その姿をマッハマキシへと変貌させ
そして、Wの首根っこを掴んで飛翔した。
「な!?」
「さあこの一撃で、仮面ライダーに終わりを手向けよう!!!」
超高速に、一直線に
空気の層を一瞬で3度はブチ破り、風都タワーから上昇していくマキシとW。
その異常な風圧とソニックブームに、Wのみ動きは一切封じられた。
「な、マッハだろ!?なんで飛べんだよこいつ!?」
だが、そんな状況だというのに翔太郎の脳内には一つの疑問が浮かんでいた。
そう。
マッハメモリはあくまでも「マッハメモリ」なのだ。
高速移動するならまだしも、空まで飛べるのはおかしい。
『それは、翔太郎』
その疑問に、フィリップが答える。
解明されるマキシの謎。
何故、彼は複数のメモリを、高適合メモリのように扱えるのか。
『彼は、マキシマムメモリの異常適合者だからだ――――!!!』
異常適合者。
運命のガイアメモリと言えるほど、相性のいいガイアメモリは通常以上の威力を発揮してくれる。
だが時に、それが異常に高いレベルで現れるときがある。
それが異常適合者。
かつて透明になる程度のインビジブルメモリで、一人の少女が存在ごと永遠に消え去ろうとしていた事件があった。
普通は制御などできない。
だが、この男はそれを可能にした。
マキシマムメモリ。最大の記憶。
その機能は、肉体を人間レベルで最高のものに変貌させる。
だが、それが異常適合者であるならば、訳は全く違ってくる。
「その通り。俺がマキシマムメモリを使うとな・・・ありとあらゆるメモリが、俺にとって「運命のガイアメモリ」になるんだよ」
「な・・・・」
そう、だからだ。
だからこの男は、今までのメモリでメモリ以上の能力を発揮できたのだ。
ミストの毒ガス。
マーシャルの無限の手数と威力。
そしてマッハの飛行。
本来の通常使用では発揮されないスキル。
高度の適合かつ熟達したメモリだからこそ得られるであろう絶技。
このマキシメモリに適合した男は、それを容易に発揮させることができる。
もしもこの男がこれ以上のガイアメモリを手にすれば、この男を止める術はもはやない――――!!!
「だが気付くのが遅い!!しかも無意味だ!!わかったところでどうしようもない。落ちるリンゴは、成す術もなく地面でつぶれるのみ!!!」
『マッハ!!!マキシマムドライブ!!』
ゴンっ!!という音と共に、空が落ちた。
否、落ちているのは自分だ。
急激な方向転換。
まっすぐ上昇していたところから、一瞬で180度方向を変えた直滑降。
その衝撃で、Wの身体はもはや変身解除ギリギリだ。
マッハメモリのマキシマムドライブ。
それは単純明快にして至極当然の――――上げて、落とす。それだけだ。
「ウぉぉォォオオオオオオァァアアアア!!!!」
『翔太郎!!諦めるな!!』
「ここからどーしろって」
『忘れたのかい!?ここはどれだけ上空でも「風都」だ!!』
「―――そうか!!!」
『よし行くぞ!!』
W内の会話。
仮に声が出ていても、この風圧の中ではマキシにも聞こえてはなかっただろうが。
しかし、この形態でいいのは、このような状況でも
『「ハァッ!!」』
二人の想いが通じ、そして「街の力」に集中できるということだ。
「何っ!?」
エクストリームには、まだ先がある。
それが、サイクロンジョーカー――――ゴールドエクストリーム。
その発光と変身の衝撃波で、マキシの拘束を逃れるW。
だが
「・・・・なんだ?」
黄金の輝きは地に堕ちる。
落下速度は幾分か殺せているが、それでもWは大地に堕ちた。
ブレーキをかけ、その様子を眺めるマキシ。
そして、何一つ言わずにその場を去った。
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「クソッ・・・クソッ!!!」
「僕たちの・・・負け・・・か」
ゴールドジョーカーエクストリームは、確かに二人の命を救った。
だが、命を救ったまでしかできなかった。
ズルズルと、互いを支えながら森を進む二人。
積もる落ち葉や木々を、蹴り殴りながら進む二人。
その姿はボロボロだ。
だが、身体以上に心が痛む。
負けた。
オレ達は、負けた。
これまで続いた、仮面ライダー連続発生。
ここにきて、ついに敗北者が出てしまった。
仮面ライダーWは敗北した。
後日、風都を訪れた「EARTH」の調査団は以下の結論を出した。
仮面ライダーマキシこと神月羽馬真は行方をくらました。
そして、仮面ライダーWこと左翔太郎及びフィリップの二人のその後の足取りは、不明である。
to be continued
後書き
まさかの敗北エンド。
そう、マキシはそれほどまでに最強クラスのライダーだったんですよ!!!
人間の能力を最大限まで引き出すマキシマムメモリ。
それが異常適合者・神月羽馬真が使用することで、その力は「ガイアメモリの能力を100%以上に引き出す」ものへとレベルアップされていたのです。
つまり、どのメモリを使ってもラスボス・ユートピアドーパント以下にはならないということです。
しかも下地は肉体レベルマックス以上のマキシ。
Wが二つのメモリを50:50
アクセルが一つを100
マキシはそれを100以上:100以上で使えるんですから、そりゃ勝ち目ありません。
しかもここでお知らせです。
W編、ここで一度締めます!!!
蒔風
「マジで敗北エンドかよ!?」
さて、一体どこで帰ってくるのか・・・・
立ち上がれ、翔太郎!!
がんばれフィリップ!!
悪いマキシをやっつけろ!!
みたいなエンド。
アリス
「ホントに大丈夫なんでしょうか?」
ってことで、次は別のライダーに飛びますよ。
次のライダーは!?
鳴滝
「次回、すべてを破壊し、すべてを繋げ」
ではまた次k
アイエェェェエエ!?ナンデ!?ナルタキナンデ!?
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