レーヴァティン
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第三十七話 極寒の地その二
「はじめてだよ」
「まあそうだろうな」
「酒屋でもこんな酒はな」
六十度になると、というのだ。
「そうそう売ってないからな」
「あれっ、売ってるぜ」
正もそのウォッカを飲みつつ久志に応えた。
「ちゃんとな」
「そうなのかよ」
「ああ、中にはこの前話した九十七パーセントのな」
「あの酒もかよ」
「売ってるからな」
「そんな酒飲む奴いるんだな、日本にも」
久志はその六十度の酒の強さに驚きながら飲みつつ言った。
「信じられねえな」
「いるぜ、それにな」
「まだあるのかよ」
「その酒に火を点けたらどうなるかわかるよな」
「そりゃ殆どアルコールだからな」
その場合はどうなるか、わからない久志ではなかった。
「燃えるだろ」
「だから吹いてな」
飲んだその酒をだ。
「そこに火を点けてな」
「火を吹く人いるか」
「ああ、凄いだろ」
「それ無茶苦茶危ないよ」
即座にだ、源三は夕食の鍋を作りつつ述べた。鍋には肉があるが途中に猟で手に入れた兎の肉である。
「冗談抜きでね」
「顔に火がかかるからな」
「そうなるから」
「それで実際に火が顔の方に来てな」
そのうえでとだ、正も話した。
「口の周り火傷したって話もあるんだよ」
「やっぱりね」
「そうもなるからな」
「大道芸だけれどね」
「だからこうした遊びはリスクも考えてしないとな」
「下手したら火傷じゃ済まないから」
火の状況次第でというのだ。
「僕だとそうした遊びはしないよ」
「まあそうしたことをする人が出る位にな」
「強いお酒なんだね」
「そうなんだよ、まあ俺もな」
正は六十度のウォッカを飲みつつさらに言った。
「そこまで強い酒はな」
「飲まないんだ」
「というか飲めないな」
「あっ、そうなんだ」
「身体が受け付けないんだよ」
何故飲めないかをだ、正は話した。
「その酒その火を吹く人に飲ませてもらったけれどな」
「それでもだったんだ」
「飲めなかったんだよ、強過ぎてな」
「それで身体が受け付けなかったんだ」
「これが限度だな」
今飲んでいる六十度のものがというのだ。
「本当にな」
「そうなんだね、まあウイスキーでもね」
源三はこの酒のことを話に出した、三十五度や三十七度と今彼等が飲んでいるウォッカよりはずっとアルコール度は低い。
「身体が受け付けない人がいるからね」
「そうだろ、強い酒は駄目って人がな」
「正もそれだけ強いと無理なんだね」
「洒落になってねえからな」
「私ですと」
順一は自分の杯に外から仕入れてきた氷、雪が凍ってそれと化しているものを入れてそこにウォッカを注いで飲んでいる。
「こうしていないとです」
「ロックでもないとか」
「無理です」
「強過ぎてか」
「私には」
「拙者もこれは」
進太は苦労して酒をのんでいた、そのウォッカを。
「ギリギリでござる」
「日本酒やワインは普通に飲めるけれどな」
それでもとだ、久志が言うには。
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