儚き想い、されど永遠の想い
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121部分:第十話 映画館の中でその十一
第十話 映画館の中でその十一
それを見てからだ。彼女に話したのである。
「去りますか」
「そうしましょう。飲み終えてから」
「残すのは好きではないです」
「はい、私もです」
二人共同じだった。食べ物や飲み物を残すのは好きではないのだ。
そのことがわかってだ。義正はだ。
微笑んでだ。今度はこんなことを話した。
「食べ物は大事にしないといけないですね」
「はい、それはとても」
「私が聞いた話ですが」
「聞いたお話ですか」
「欧州での貴族はです」
彼等はどうなのか。そうした話だった。
「宴の場で満腹になり終わりではないのです」
「それで終わりではないのですか?」
真理は義正の今の言葉にはきょとんとした顔になった。そのうえでだ。
彼女はだ。こう義正に問い返した。
「満腹になれば」
「日本ではそうですね」
「はい、そうなればもう満足です」
その日本人の感覚でだ。話す彼女だった。
話しながら珈琲を飲む。それが終わってからだ。
彼女はだ。また義正に尋ねた。
「それで終わりでないとは」
「下品な話ですが」
義正はこう断ってだった。それからだった。
珈琲を飲み終えてだ。あらためて彼女に話した。
「出してから食べるのです」
「食べたものをですか」
「出してそのうえでまた食べるのです」
「それは」
その話を聞いてだ。真理はだ。
顔を曇らせてだ。そのうえで己の考えを話した。
「あまりにもです」
「はい、あまりにもですね」
「品がありません」
こう言うのだった。
「そして無駄です」
「満腹で終わりではないのですから」
「はい、無駄です」
真理にしてみればだ。そうとしか思えないことだった。
それでだ。顔を曇らせてだ。彼女は話すのだった。
「満腹になればそれで満足すべきです」
「全く以てそうですね」
「それをしないのは誤っています」
どうしても受け入れられないのだった。そうした考えはだ。
「欧州も。美しいものばかりではないのですね」
「何事も美醜があります」
「その二つが」
「光があれば影もあります」
今度はそういった風に例えるのだった。
「その影がです」
「その吐いてから食べるという」
「そうです。あまりにも無駄な贅沢ですね」
「堕落にさえ思えます」
真理から見ればだ。まさにそうしたものだった。
「そうして食べ続けるというのは」
「古代希臘や羅馬がそうであり」
「それだけ過去からなのですか」
「そしてバロックやロココの時代もですね」
「仏蘭西ですか」
「はい、あの国での宴でした」
「あの仏蘭西でその様なことが」
真理がその話に引くものを感じているとだ。義正もだ。
真面目な顔でだ。こう述べるのだった。
「満ち足りれば。それだけで充分ですね」
「そう思います」
「何事もそうです」
また話す彼だった。
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