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真田十勇士

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巻ノ百十九 大坂騒乱その十

「あの方はとかく口出しをされるからのう」
「難儀ですな」
「まことに」
「戦にも関わるとなると」
「政でもそうですが」
「家の大事ですが」
 しかしとだ、彼等も言うのだった。
「どうしたものか」
「あの方が静かにして頂ければいいのですが」
「そうはなりませぬな」
「難しいところです」
「どうにも」
「あの方を止められぬ為に」
 大野の言葉は嘆きになっていた、その嘆きの言葉で言うのだった。
「豊臣は滅ぶか、しかしな」
「そうしてもですな」
「それでもですな」
「右大臣様だけは」
「何としても」
「豊臣家のただお一人の方じゃ」
 だからこそというのだ。
「あの方はな」
「はい、だからです」
「そのお命は何としても守りましょう」
「その為にもですか」
「真田殿をですか」
「文を書く」
 大野がというのだ。
「そしてそのうえでな」
「大坂に来て頂き」
「いざという時はですな」
「あの方に右大臣様を救って頂く」
「そうしますな」
「そのつもりじゃ、あの御仁さえおれば」
 大野も幸村そして十勇士達のことを知っている、それで言うのだった。
「右大臣様はな」
「例え敗れようとも」
「大坂城が陥ちようとも」
「それでもですな」
「あの方のお命だけは」
「何とかなるやも知れぬ」
 それ故にというのだ。
「あの御仁には文を送る、そしてな」
「他の方々もですな」
「天下の浪人衆の中から」
「名のある方には文を送り」
「来て頂けますな」
「おそらく大名は誰も来ぬ」
 大野はこのことは確信していた、彼にしても天下の流れは片桐程ではないがわかっているのだ。
「しかしな」
「浪人衆はですな」
「来ますな」
「文を送り俸禄を約束すれば」
「その時は」
「一旦集めればそれこそ勝って俸禄を与えねばならぬが」
 それでもというのだ。
「戦になるとなってはな」
「背に腹は代えられぬ」
「それが現実です」
「ならばですな」
「その時は」
「うむ、集めるぞ」
 その浪人達をというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「すでに戦は避けられぬ状況」
「それではですな」
「今より用意をしておきましょうぞ」
「頼む。しかし」
 大野はまた項垂れる顔で言った。 
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