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儚き想い、されど永遠の想い

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101部分:第九話 知られたものその七


第九話 知られたものその七

「そして掴まれて下さい」
「愛をだね」
「確かな。幸せを」
 こうした話をする二人だった。そうしてだ。
 真理もだ。今喜久子と共にだ。麻実子から話を聞くのだった。
「私どうやら」
「どうやら?」
「どうやらといいますと?」
「お見合いの話なのですが」
 そのことをだ。真理と喜久子に話す彼女だった。今彼女達は図書館の前の喫茶店の外の席に三人で座ってだ。そのうえで茶を飲みながら話すのだった。
「そのことですが」
「そのことですか」
「お見合いの」
「はい、お見合いです」
 まさにだ。そのお見合いのことの話だった。麻実子は首を少し捻ってからだ。真理と喜久子に対してこんなことを話すのだった。
「最初お話に出ていた方と違うお相手になるようです」
「そうなのですか」
「お相手がですか」
「お父様がそう話されています」
 その話を進めるだ。彼がだというのだ。
「それを御聞きしますと」
「そのお相手は誰だったのですか?」
 喜久子はつい気になってだ。彼女に尋ねた。
「それで」
「そのお相手ですか」
「どなただったのですか?」
 こう彼女に問うのである。茶には手をつけず己の前に置いたままで。
「宜しければ。お答え願えますか?」
「お父様はそこまでは仰ってはいませんでした」
 はっきりとした相手はだ。わからないというのだ。
「ですが」
「ですが?」
「私が以前お会いした殿方の様です」
 そうだとだ。麻実子は喜久子に話した。
「その方とのことです」
「その方がなのですね」
「はい、最初私のお見合いのお相手と考えられていたそうです」
 見合いをする、それは即ちだった。
「生涯の伴侶を」
「生涯の伴侶。つまりは」 
 そこまで話を聞いてだ。喜久子は静かに述べた。
「御主人ですね」
「そのお相手をと」
「そうですね。そうなりますね」
 喜久子もここまで聞いたうえで頷いた。
「自然と」
「お見合いですか」
 真理はそのことについてだ。温かい笑顔になって言うのだった。
「それもまた運命の出会いなのですね」
「そうですね。運命になりますね」
 麻実子もだ。真理のその言葉に笑顔で頷くのだった。
 そのうえでだ。彼女はこんなことを言った。
「お見合いというと何か決められたものの様に思えますけれど」
「ですがそれもまた」
「運命になりますね」
 また言う麻実子だった。
「では私はその運命にです」
「向かわれますね」
「はい、そうさせてもらいます」
 麻実子は笑顔で言った。
「そうした考えになりました」
「左様ですか。それでは」
「お見合いを楽しみにさせてもらいます」
 麻実子の考えはそこに至った。そうしてだ。
 今度は喜久子がだ。こう言うのだった。
「私はですが」
「はい、喜久子さんは」
「どうされているのでしょうか」
「実は幼い頃からです」
 その頃からだ。話は遡るのだった。
 そしてそのうえでだ。喜久子は二人に話していく。
 
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