ラピス、母よりも強く愛して
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
16火星革命政府誕生(複数)
ほんの数日、アキトをキャンプにでも連れて行くつもりで、反政府軍のアジトに連れて行ったラピス達。
そこにはどこかから借りて来たキャラ設定の違う老人がいて「サマリン博士」と紹介された。
もちろんラピスが使っている人間モドキで、脳みその中身はチップに入れ替え済みの、火星の支配者ラピス母の使用人である。
「これは、全員が腹いっぱい飯を食えるか? という理屈だ」
その人物は共産主義的な理論を全員に説明し、アキトに地球軍から鹵獲したコンバットアーマーを託した。
肩に大砲を担いだ旧式のコンバットアーマーでは使いものにならないので、地上戦の間はラピス達から敵側にもザクでもグフでもサベージでも供給され、どこかの軍曹さんが使っていたアームスレイブなんかも支給される。
金髪ポニーテールの人が同じ金髪ポニーテールのASで、銀髪桃色で赤い悪魔がヴェノムとかエリゴールらしい。
空を飛べる反則技の機体は無くても、地球軍にはザクやサベージ程度のザコが大量供給され、サベージスキーには堪らない戦場が提供された。
コンバットアーマーでも出来が良かった八本足の多脚戦車は出るらしい。
スーパーロボット対戦でも、身長50~100メートル、複数合体したり、体重550トンも有って巨体が唸って空を飛ぶ化け物はゲキガンガーが出るまで不可。
ダンバイン系列はオーラ力も無くてハイパー化なんかも有るので不可。CVが速水奨さんでブチメカに乗って毎週やられる機体も無いので、ガリアンとかエルガイムとか光速移動してしまうヘビーメタルなんかも出てこなかった。
その後は舞台が火星だけに、ロミナ姫(誰?)が乗った船が忍者戦士を乗せたまま火星に逃げて来たり、木連の皇帝の思惑を知らされたアキトが「地球は狙われている!」とか言って、どこかのアルバトロナル・エイジ・アスカみたいにSPTに乗ってVMAXしたり、地球まで行って「伝説のニンジャ」を探しに行くらしい。
火星全土、政府崩壊中
その頃には、公共放送も人民の波に飲み込まれて「火星自由の声」だとか「ジャコバン派革命政府」とか「白露軍」とか「クメールルージュ」とか「何とか共産党」とか「国民党」などなど、コミンテルン系の山ほどある反政府勢力が火星独立宣言と新憲法を乱立した。
フランス革命後とかロシア革命後のように血みどろの内戦と宮廷闘争に入って暗殺し合い、政府軍とか王党派が盛り返す面白おかしい状況にされたり、制空権と制宙権を持っている地球軍が「月は無慈悲な夜の女王」なんかと同じように重力の上から爆撃してしまえば全滅させられるのにも関わらず、圧倒的に不利な状況でも独立を叫んでいた。
「オモイカネ、現状報告」
『おめでとうございます。イネスフレサンジュ逮捕以降だけでも100万人以上が死亡しました、餓死や疾病ではなく、革命による死者です』
占拠された放送局では、ありもしない水や食料の配給の増加、難民棄民にも住居を提供するなどの空手形を出しまくり、どこかの民主党ぐらいの面白おかしい宣伝工作で民衆を自分の陣営に引き込もうと争っていた。
死刑反対論者とリベラリストが、処分が決まっていたような重犯罪者まで冷凍から覚ましてしまい開放。
処分されてしまったクズの人数を発表して、政府の犯罪を暴き立てたつもりになって宣伝。
『犯罪者の殺害件数は政府統治前の20倍以上、軽い窃盗の前科があるだけで広場で吊るされて、僻地のコロニーでは犯罪件数が低下に転じました』
犯罪者を街に解き放ち、さらに絶望的な状況に追い込み、解放後即、殺人レイプ強盗傷害を実行、治安が悪化して、犯罪者は市民がリンチで殺すか、疑わしい人物は広場に連れて行って高い所に吊るした。
どのコロニーも火星政府が機能していた頃より死体で埋まり、街路樹や街灯には必ず死体がぶら下がっている楽しい光景が広がり、政府が倒れたので食料も水も供給が止まり、旧火星居住者が難民キャンプやテント村に行う迫害も、武器を携行した狩りに発展し、面白いように人口が減っていった。
『現在、日用品や作物の窃盗だけで死刑、コロニー内の道路、居住区での排便でも絞首刑。自警団が狩りを行い始め、難民キャンプ、テント村への襲撃は数え切れず、まだ件数が把握できないほどです』
「宜しい、放送では更にデマを流し、難民キャンプにいるゴキブリを処分しない限り、放火、略奪、レイプの被害に遭い、家族が殺されるとイメージさせなさい」
『了解』
この会話を聞けば、救世主のアキトがラピス母を殺してしまう。
そうするのが最善の解決方法なのだが、脳内の通信限定で通話、オモイカネ型人工知能の思考速度と等速なので、高速すぎてアキトや人類には傍受できない。
テレビやネットでは食料がなくなった難民キャンプの略奪者が暴動を起こし、コロニー居住者を襲撃して殺害する映像が途切れること無く垂れ流された。
炎に包まれて壊滅するコロニーの映像も流し続けられ「殺さなければ殺される」の論調が既定路線になった。
地球でもこの状況は一切報道されず、今まで通り治安が悪すぎる火星に棄民される人員は山のように送り込まれ、航路も空港も今まで通り機能してゴキブリを野に放ち続けていた。
やがて、放送局が旧火星政府の犯罪行為を調査するうち、砂漠の中で地平線まで続く墓標が何箇所も確認された。
重犯罪者が薬物を与えられ、笑顔のまま穴を掘り、自分の墓標になるモノリスに名前を刻んで設置、自分の記憶と思考回路を転写してから墓穴に入り、新しく送られてきた人物が土をかけて埋葬し、また自分の墓穴を掘って埋まり続けていた。
「ごらん下さい! これが旧政府に殺害、埋葬された方達の墓標です! 数え切れません、地平線まで続いていますっ! これが、これが人間のやることなのでしょうか?」
放送スタッフも泣きながら嘔吐し、生々しい死臭が渦巻く墓地で、何とか正気を保てた人物がアナウンサーに代わって代弁し、泣きながら放送を続けた。
「あちらに人がいます! 行ってみましょう!」
ホロコーストの現場に出くわした人物は、生きた人間を埋葬している人非人を見付け、武器を準備しながら近寄っていった。
「あなた達っ、何をしてるんですかっ? 今すぐやめるんだっ、これは犯罪ですよっ!」
ここに送り込まれた元重犯罪者たちは、取材班に暴力を振るうどころか、にこやかに手を振って挨拶して作業場に迎え入れた。
「おれ、あなほる、なまえ、かく、これにてをあわせる、きおくさせる、おれ、うめてもらう、てんごくにいく」
「何だって?」
天国に行くというのは比喩でも何でも無く、墓標であるモノリスに接続されたサーバーの中で現実世界より遥かにましな生活を始められる。
今までのように軽度知的障害、発達障害、人格障害、言語障害、識字障害などなど、あらゆる障害にまみれて劣った人物として生活し、労働や日常生活すら不可能で、犯罪によって金銭を得る以外に無い苦しい人生を終える。
架空の世界では願えばなんでも叶い、スポーツでも、商売でも、研究でも、趣味でも、誰からも尊敬されて羨まれ、立身出世、恋愛でも家族でも欲しいものは全て手に入り、満足した人生を終えられる世界に転送される。
このモノ達は機械で脳を置き換えてやらずとも、簡単な薬物を与えてこれからの将来を約束してやるだけで、全員苦しい人生を捨てて、オモイカネやラピス達が用意した「楽園」に旅立っていた。
「おまえにも、きこえる、このこえ」
墓場で放送されている内容を脳に送り込まれ、素晴らしい世界の一端を見せられる取材班。
そこには腐りきった上司はおらず、自分を愛していない配偶者も、自分を罵り恨んでいる子供もいなかった。
美しい異性が自分を出迎え、ウィットに飛んだジョークで楽しませ、自分もその世界に行けば何の面白みも無い人物ではなく、楽しいジョークでヒトを楽しませ、どんな取材でも許可されて、圧力に屈せず、報道の自由を行使して「ペンは剣よりも強し」を実践できる。
「おまえも、これ、のむ、しあわせ」
用意されている錠剤を手渡され、迷わずに飲む報道陣。自分用の端末を渡されて、空いている場所に、笑いながら自分で穴を掘って準備する。
自分の穴を掘り終わった連中も手伝ってくれて、杭を打ち込んでモノリスも設置してくれる。
「ああ、ありがとう、ありがとう」
全てが感謝に包まれ、先程の案内者とも笑顔で別れて上から土を掛けてやる。
埋葬者は涙を流して喜び、腐った人生がようやく終わり、これから幸せにだけ包まれる人生が始まるのを喜び、苦しまずに旅立った。
「ごきょうりょくありがとうございました、われわれしゅざいはんもどうこうします、これでちゅうけいをしゅうりょうします」
満面の笑顔のまま中継を終了したスタッフは、後から送り込まれてきた重犯罪者に埋めてもらって、苦しい人生を終了した。
火星到着までに遺伝子登録され、廃棄前に記憶回路に収容されたヒト、冷凍に耐えられず死んだモノ、難民キャンプ、テント村、苦しい人生を終了し、内戦で死んだモノから順番に楽園に入って新生活を始めていた。
木連艦隊、優人部隊艦内。
木連では、驚くべきことに草壁も山崎博士も生存を許されていた。
以前の世界では「火星の後継者」を名乗り、アキト達A級ジャンパーを誘拐して人体実験し、数々の暗殺も繰り返していたラピスの仇敵。
月臣元一朗や九十九と同じように両親が出会うよう仕組まれて、同じ卵子と精子が出会わされて製造され、実際に事件や犯罪を起こすまで経過観察されて、行動した時点で地獄には送られるが、その瞬間までは泳がされていた。
もちろん復讐実行のために生まれて来さされたのは言うまでもない。
「深夜三時、本日も訓練を開始する! 敵襲っ! 魔神、電神、鉄神、緊急発進! 母艦が爆沈する前に三十秒以内で発進せよ!」
地球軍艦隊会敵までは火の出るような練磨が行われ、九十九も元一朗も明人も三郎太も秋山も、休む時間が無いほど追い込まれ、何度も何度でも、身体が覚え込んで無意識に身体が動くまで訓練が続けられ、草壁も指揮官としては有能な所を見せていた。
全員警報に叩き起こされて、宇宙服を来たまま睡眠していた状態から意識が目覚める前に体が動いて、九十九、明人、元一郎が搭乗して緊急離艦する。秋山と三郎太も訓練用の副操縦席に入って離艦して、跳躍空間に落ちる。
訓練の成果により、人道的配慮を無視した行動が可能となって、もし本当に母艦が破壊されたとしても、三人の操縦士と二名の予備は離艦が間に合って助かり、跳躍空間から三次元に戻り、艦を沈めた相手に報復が出来た。
さらに夜中に叩き起こされた状態から、索敵、長距離跳躍、敵艦への攻撃、その間にも航法をしっかりやって現在位置を把握し、たとえ自分が死んでも機体だけは母艦に向かって帰投させなければならない。
明人の電人は特別製なので、航法も操縦も一人でこなさなければならないが、知能、体力全てが高められて、他の部隊隊員よりも強化が成功していた。(ラピスのせい)
今日も地球艦隊への攻撃訓練、模擬戦、格闘戦を済ませて帰投した一同。
訓練後、シャワーを浴びる力も無くし、ロッカールームで宇宙服を開いた途端、崩れ落ちる三郎太。
「これ以上無理だ、白鳥さん、俺死ぬ……」
「これが訓練だ。体が覚えるまで、意識を失っても計画通り体が動くようにしなければならない、優人部隊に選抜された自覚を持て」
そう言いながらも、肉体の限界を通り越して疲労している九十九。元一郎も倒れ、予備操縦士である秋山も三郎太も同じ訓練を受けて倒れた。
「頑張れ、シャワーを浴びて水を飲んで食料を食え、休息時間も長くは無いぞ」
そんな三郎太を宇宙服から出してやって、下着さえ取れば這ってでもシャワーに行ける状態にしてやる明人。
「そんな、もう無理っすよ、明人さんはタフだなあ」
既に全員肉体改造も脳改造も済ませ、長期間食事をしなくても、水分を摂らなくても活動可能で、胃や腸も外して排便もせず、養分も水分も循環、体の冷却保温はヒートポンプ、酸素ボンベも葉緑素も内蔵して宇宙服一つで放り出されても生存可能、脳や生殖器以外は高価で高性能な生体機械に換装していたが、それでも疲労が取れず、動けなくなるまで鍛えられた。
「今すぐ体を洗浄して休息をとれ、じゃないと俺がケツを掘るぞ」
内臓が無いぞうなので、洗わなくても即ガン掘り可能な優人部隊隊士。
「ああっ、それだけは勘弁してくださいっ」
慌てて起き上がって下着を脱ぎ捨て、シャワー室に入る三郎太を、他の連中も大笑いしながら見送った。
影山明人には「あの皇帝陛下を食って姙娠させた」「生き神様も食った」と言う噂があり、股間に装備している次元砲が火を吹けば、誰もが快楽堕ちさせられて、男でも子供を産まされると言う悪評があった。
現に通信で、実の妹でキモウトの生き神様ラピスを孕ませ「男女7歳にして席を同せず」な女子校の生徒もユキナも多数孕ませたと受信して、艦内に多数いる嫉妬マスクに襲撃されていた明人。
それでも閉鎖空間で厳しい戒律や宗教的な陶酔に満たされている隊がどうなるか、あらゆる団体が立証しているので、優人部隊内部も似たような状況に陥っていた。
さらにラピス親衛隊でも有る優人部隊の「局中法度」では、同性での恋愛や交際、結婚は何一つ禁止されていない。
今回は隊長、副長、一番隊までが出撃していたが、二番隊以降の恋愛感情の縺れは大変な問題になっていた。
こんな汚らしい男部屋にはピカチュウと同じ声のょぅじょはいなかったが、肉体強化の素養は持たされ、白鳥家と懇意にしている天河家では、早くも息子と娘を見合いさせて婚約。
白鳥ユキナは、兄やジュンのように自分の思い通りに扱える人物では無い明人の第一印象が悪く、初顔合わせでは「あんな奴大っ嫌い」と思っていたが、誰かと同じように昭和のテンプレを全部経験させられてしまい、「あたし、恋しちゃってるよ……」と言わされているのは言うまでもない。
今も木連では「明人様、ご無事で… ご武運とご帰還をお待ちしております」などと言って出撃前に嫁入し、一夜だけでも妻として契りを交わし、もし夫が戦死したとしても、銃後の妻として夫の子供を産む覚悟をしていたピカチュウも、他の女達と同じように人生の何もかもを捻じ曲げられ、ただ明人を思って愛するだけの生き物として調教されていた。
もしアキトの願いの中に「他の男も食ってみたかったな」とか「俺はノンケでも構わず食っちまう男だぜ」とか「こいつを見てどう思う?」とか「凄く大きいです」とか「せめてガイと九十九とアカツキと月臣さんだけでも…」などと言う願いがあれば、もっと悲惨な地獄が展開されていたが、幸いにもその手の願いは無かったので、女嫌いにされる明人のアドリブに任された。
ページ上へ戻る