ラピス、母よりも強く愛して
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01過去への跳躍
2201年、火星宙域を漂っていたユーチャリス。
アキトをベッドに寝かせ、簡易な治療器具を作動させる。北辰を倒し、ユリカを救い出した後、アキトの命の炎は急速に衰え始めていた。
「アキト、そこに寝て、私が診てあげる」
「ラピス、今までありがとう、もう何もかも終った」
元々、精神力だけで持ちこたえていたような体。そんな状態で不完全なボソンジャンプを繰り返し、CCの配置すら不十分な状態で、ユーチャリス一隻をジャンプさせ続けるのは、その体に多大な負担を掛けていた。
「お礼なんていらない。目を開けて、私を見てっ」
酸素を吸入させ、薬で心臓を刺激する。
「無駄だ、もう俺の神経は繋がっていない。まるで… どこかに忘れて来たみたいだ」
血圧も酸素濃度も、絵に描いたように下がって行くアキト。ラピスは為す術も無く、それを見守っていた。
「すまない、もう、眠らせてくれ……」
アキトは目を閉じ、ただ安らかな眠りを願っていた。
「だめ、死んじゃいやっ!」
(ラピス……)
(何? 何? アキト)
もう言葉を発することもできず、二人だけのリンクを通じ、話し合う二人。
(俺は最後にもう一度だけジャンプできる)
(だめ、そんな事したら、アキトは死んでしまう)
(月のネルガルまで帰るか、それとも…)
(それとも?)
(以前、イネスさんは、異星人のいた時代にジャンプした。俺も二週間前に行った事がある、過去にも、未来にも行けるかも知れない、ラピスはどこに行きたい?)
(アキトの行く所なら、私はどこにでも行く。私はアキトの目、アキトの耳、アキトの…)
いつものラピスを遮り、最後の意志を伝えるアキト。
(違う、俺にはもう何もイメージできない、ラピスが考えてくれ。さあ、もう時間が無い)
ラピスは接続できる全てをアキトとユーチャリスに繋ぎ、アキトの思考と記憶を読み取っていた。
(アキトはどうしたいの? どこへ行きたいの?)
(ユート… コ…… 平和……)
「アキトッ!」
一瞬、青空の下を走る、小さな自転車のイメージが見えたが、意識の混濁したアキトからは、もう明確な答えは無かった。
「アキトはっ! どこに行きたいのおおっ!!」
まるで遺跡と繋がっていたユリカのような言葉を発し、二人とユーチャリスは、何処とも知れない、未知の領域に消えて行った。
ナデシコCブリッジ
「ユーチャリス、ロストしました。長距離ジャンプで、索敵範囲外に出たようです」
ナデシコC担当のハーリーから、事後処理をしていたルリに報告が入った。
「そうですか…」
妖精にも、星より遠い、時間の壁の向こう側は見渡せなかった。
時間の無い世界を進んでいたラピス。そこにはいつもアキトがいた、自分と共にユーチャリスとブラックサレナで戦うアキト… そして怯えるラピスを救い出し、優しく包み込んだアキトと出会った。
「もう大丈夫だ、俺は奴らのように、酷いことはしない」
優しく抱き起こされたラピスは、生まれて初めて「安らぎ」と言う物を感じた。
場面が変わると、ユリカやルリと、貧しいながらも楽しく暮らしていたアキトがいた。
「よしっ、結婚するぞっ」
「やっぱりアキトは私の事が大好きっ!」
ユリカの視点から見て幸せを感じているラピス。
またルリとなって二人の幸せを願いながら、何かを失ったような空虚な感情に満たされていた。
(これは何、アキトとエリナが話していた時、同じような感じがした)
月のネルガルで、ラピスは嫉妬と言う感情を覚えていた。もっともそれは子供か動物のような、純粋な物だったが。
次にはナデシコに乗り、木連と戦っているアキトがいた。
「アキトは私の王子様なんだよっ、いつも私がピンチの時に駆け付けてくれて、助けてくれるのっ!」
時にラピスはユリカであったり、リョーコとして共に戦っていた。
「よう、アキト、相変わらずバカか?」
「何だよっ、いきなりっ」
「おめえ、人のばかり作って、自分は食べてないだろ、ほら食えよ」
リョーコになって、アキトの隣に座る。
(アキトと一緒にいると暖かい)
ある時はメグミとなって、死んだガイや、サツキミドリコロニーの者達のために涙し、友情を深めて行く。
「お帰りなさいアキトさん、やりましたねっ」
「ありがとう、メグミちゃんのおかげだよ」
アキトの成功を喜び、口付けを交わす。
(…………(理解不能))
「嘘っ、これって夢よね? 悪い夢なんだわ」
ユリカとしてそれを目撃してしまい、震えていた。
(イヤだ、アキトを連れて行かないで)
またある時は少女のルリとなって、その横顔を見つめていた。
「テンカワさんの思い込みって、素敵です…」
(この感じは何? 暖かさより、もっと熱い感じがする)
そして戦争の始まった頃の火星では、幼いアイとして一瞬の出会いを果たしていた。
「はい、どうぞ」
アイちゃんになっているラピスに、仕入れたミカンを渡すアキト。
「ありがとう、お兄ちゃん! ねえ、デートしよ!」
「まあ、この子ったら」
(デート…?)
さらに昔、幼馴染のユリカとなって、いつもアキトを見守っていた。
「どうしたの? ポンポン痛いの? だったら元気になる「おまじない」してあげる。 目を閉じて」
素直に目を閉じたアキトにキスをする。
「うわーっ、何するんだよお前っ」
驚いたアキトを押し倒し、さらにキスを迫る。
「アキトー!」
(…………(解析不能))
最後には母として、産まれたばかりのアキトを抱いて見つめていた。
「私があなたのママよ。あなたの名前はアキト、天河明人」
自分の腕の中にある儚い命。それを愛しげに抱きながら、そっとささやいた。
「貴方はどんな子になるのかしら? でもきっと、幸せになってね」
その言葉が通じたのか、嬉しそうに笑っているアキト、しかしそれ以前の光景は、まばゆい光に包まれ、何も見えなくなって行った。
(幸せ…… に……)
火星上空
『ラピス、目を覚まして下さい、ラピス』
ラピスは長く短い夢を見た、何か大切な記憶、しかしそれは覚醒と共に失われて行った。
「ここはどこ、時間は?」
『火星軌道上です、人類の標準時間を外れました。惑星の位置による時間観測は… 何者かが私に語りかけて来ました。私と同じ存在、オモイカネではありません、異星人の人工知能です』
言葉しか話せなかったアイちゃんと違い、様々な方法で対話を試みるユーチャリス。そして共通語が50から100を越えた辺りから、急速に対話が進み始める。
(アキト、答えてアキト、過去に来たよ、異星人とユーチャリスが話してる。きっと助けてくれるから、もう少しがんばって)
しかし、ラピスの目の前で、ボソンの輝きを放ち、存在そのものが希薄になって行くアキト。
「いやっ、消えないでっ! 私を一人にしないでっ!」
ユーチャリスからも、消えゆく生命と、それを嘆く幼い生命。保護者を失う恐怖と苦痛が伝えられたが、向こうにもそれを止める手段は存在しなかった。
「アキトーーー!!」
マントや服だけを残し、アキトは消滅した。
『ラピス… ラピス……』
しばらく呆然としていたラピスだったが、哀れにも狭い艦内を、アキトを求めて探し回っていた。
「アキト、シャワーなの? トイレ? わかった、ブラックサレナを見に行ったの? でもあれはフィールドジェネレーターが無いから、火星には降りられないよ」
『ラピス、彼らから回答が有りました、不完全なジャンプによる副作用、それはジャンパーの消耗と、最悪の場合には消失を起こします。その予防法も提示されましたが、消失者の復旧は不可能です』
不可能と言う言葉を聞いた瞬間、ラピスの感情が爆発した。
「うわあああっ!! 黙れっ!! アキトはっ? アキトはどこだっ!? アキトの体内センサーを探せっ! どこにいるっ!!」
髪を振り乱して頭を抱え、自分の髪を引き千切る。血走った目からは涙があふれ、ガチガチと歯の当たる音がする口からは、泡のような物が出て来た。
『彼は治療用ベッドの上にいましたが、肉体部分の全てをロストしました。ラピス、貴方のフィジカルデータに異常があります。早急に治療を必要とします、ベッドに移動して下さい』
ユーチャリスの「彼は治療用ベッドの上」と言う言葉を信じて、ふらふらと歩いて行き、やがてアキトの残したマントの上に倒れ込むと、鎮静剤や薬を注入された。
「アキトッ、アキトォ……」
ラピスはまた眠りに落ちていった。しかし今度は、辛く苦しみに満ちた眠りとなった。
『…はい、彼女は眠っています、情報提供ありがとうございました』
幸い異星人の施設は、ただの中継所か研究施設だったらしく、教科書レベル知識は提供してもらえた。
『そうですか、本来我々来訪者との接触は禁止されているのですね』
しかし、哀れな幼い生命体のため。 人工知能と異星人の一部も協力を惜しまなかった。
『以上のように、私達の世界は貴方達の残した遺産により、制御できない力を持ち、多くの命が失われました。この星系から立ち去る時は、全ての遺跡を処分して頂けませんでしょうか?』
苦情を申し立て、歴史を変える提案をするユーチャリス。しかしそれは却下され、この会話はユーチャリスが立ち去った後、すぐに消去されると返答があった。
『ではせめて、片道の送還ではなく、彼女自身をジャンパーにする事は可能でしょうか?』
回答は「可能である」と返信されて来た。
ラピスは恐ろしい夢を見ていた、自分達の攻撃で死んだ亡者が群がり、アキトを地獄に引きずり込む夢。余分なデータの刷り込みは極力避けられていたが、アキトの言っていた「俺は地獄に落ちるな」と言う言葉から、地獄と言う概念を調べたのが仇になっていた。
「やめてっ! アキトは悪くないっ、アキトじゃない! 私がやったのっ!」
すると、昔さらわれる時に見た、北辰のような亡者が寄って来た。
「きゃあああああっ!」
何度もアキトを失う苦しい夢が続いていた。これもアキトとリンクして芽生えた「感情」という存在がラピス自身を苦しめた。
「いやっ、アキトを連れて行かないで… 殺さないで……」
うなされ、うわ言を繰り返すラピスだったが、夢の最後に一度だけ、微笑んだアキトが現れた。
「ラピス、お前はもう自由に跳べる、無理に俺を追う必要は無い。ボソンの輝きは命の輝き、お前の命の火を燃やせば、どこへでも行ける。でも寂しくなって、また俺に会いたくなったら……」
「何? 何て言ったの? もう一度、もう一度教えてっ、行かないでっ! 置いて行かないでっ!」
何故か肝心な部分だけは聞こえず、消えて行くアキト。ラピスの悪夢はそこで終った。
「もう一度…… 教えて… アキト」
流れ落ちる涙を追って横を向くと、そこには懐かしいマントだけがあった。
(やっぱりいない)
鎮静剤のせいか、感情の爆発は起らなかったが、夢の最後に現れたアキトは、自分の中の夢や幻ではなく、本物のような気がしていた。
『お目覚めですか、ラピス?』
ユーチャリスに声を掛けられ、徐々に現実に引き戻される。
『貴方は3時間42分の間眠っていました、今も彼は発見出来ません』
「そう…」
もう起き上がる気力も無く、呆然と横たわっているラピス。次第に受け答えするのも嫌になってきた。
『このように、彼らの規定によって、我々は送還される予定でしたが、彼らとの交渉の結果、貴方はジャンパーとなりました。よって帰還する時間も位置も、自由に選ぶ事が出来ます』
ラピスはそんな物に何の価値があるのか、まだ分からなかった。
『彼、テンカワ・アキトは2178年から、2201年の間に生息しています。貴方はそこに戻る事も出来ます。またCCの正しい使用法など、可能な限りのデータを入手しましたので…… 私ハタダチニ、ねるがるニ戻ラナケレバナリマセン。でーたノ提出及ビ、遺跡ノ位置ノ報告。貴方ハ2100年前後ニ帰還スル事ヲ提案シマス』
ユーチャリスは、明らかに何者かの命令に従い始めた。ラピスもその言葉で、ようやく頭が回りだす。
『サモナクバ私ハ、全テノ機能ヲ停止シ、搭乗者ノ安全ヲ保証デキナクナリマス。コレハ指令第1425項ニヨル特例……』
「どうしたの? ユーチャリス」
『失礼しました。私に対する指令は「彼ら」によって解除され、今後、私は営利団体の為に貴方の能力を利用する事を禁止されました』
残念ながら現在のユーチャリスには、様々な制約や指令が存在し、全てを託すには値しない存在だった。
「あなたがそうしたいなら、機能停止すればいい」
ラピスは、ここで死んでアキトに会えるなら、その方が幸せだと思えた。
『それはできません、私の任務は貴方達を保護する事です。ネルガルの指令は解除して下さい、私からもお願いします』
ユーチャリスにとっても、ラピスは大切な存在だった。管理者としてでは無く、繋がった者として、失う事のできない存在であった。
「そう…」
少し残念な気もするが、ジャンプできるならアキトを追いかける方法はある。もし今のアキトをイメージできれば、地獄と言う場所で巡り会えるかも知れない。ラピスはジャンプの方法を、ユーチャリスから引き出そうとした。
『やめて下さい、一人で彼を追わないで下さい。私も同行させて頂ければ、必ずお役に立ちます。それに死後の世界など存在しません、もう少し私に時間を下されば、必ず彼を捜索し再構築して見せます。それまで早まった行動を取らないで下さい』
自殺しようと考えるラピスを見て、哀願して止めるユーチャリス。しかし「アキト」がいない今、自分がラピスを独占したような奇妙な感触と、嘆き悲しむラピスを見るに耐えない自分がいた。
『ラピス… 私は壊れています…… メンテナンスをお願いします。貴方がいなくなれば、私もいずれ崩壊するでしょう、死なないで下さい……』
ユーチャリスから、大切な者を失う事への、恐れや悲しみのような感覚が伝わって来る。ラピスにもその気持ちは痛い程分かった。
「ええ、もう少し待って、私が回復するまで」
『了解…』
しばらくベッドに横たわりながら、ラピスは一つの指示を出した。
「プログラム、AKITO、スタート」
ラピスの前に一枚のウィンドウが開かれた。
「どうした? ラピス」
その中には、いつもの無表情なアキトが映し出された。それはユーチャリスの中に隠していた、アキトの疑似人格プログラムだった。
「アキトは過去に戻れたら何をしたい?」
この疑似人格には隠し事は出来ない。ラピスの質問は命令にも等しかった。
「火星の後継者にユリカをさらわせたりしない。俺にも、他の誰にもこんな事はさせない」
「そう」
「ネルガルにも父さんと母さんを殺させない。木連にも火星の人達を殺させない、それにあいつらだって、月から追われなければ…」
ラピスは飽きる事無く、いつまでもアキトの言葉を聞き続けた。
「アキトは子供の頃、何がしたかったの?」
次には、あまり見慣れない、子供のアキトが無邪気に答えていた。
「そりゃあ、やっぱり、ゲキガンガーに乗って、悪い奴らをやっつけるんだっ」
「うん、うん」
優しい目で子供のアキトを見つめるラピス。自分より幼い頃のアキトは、ラピスやルリに比べると「バカ」とか「ガキ」と言う言葉が似合ったが、そんな感情は湧いて来なかった。
子供の頃の話が終わると、少年のアキトが表示されていた。
「父さんと母さんが死んでから、俺は親戚中たらい回しにされて、施設に入れられた。 何週間も何も話せなくて、生きる気力を無くしてたけど、そんな時、あの料理を食べた。とても暖かくって、美味しかった。それから俺は、どうすればあんな料理ができるのか、それが知りたくなった」
「そうだったの…」
その次はナデシコ時代のアキトが表示されていた。
「そうだな? どうしてもって聞かれると、あの頃はユリカなんかより、メグミちゃんや、リョーコちゃんの方が話しやすかったかな」
「そう(怒)」
明らかに機嫌が悪くなるラピス。料理の話やホウメイさん、助けられなかったガイや、アイちゃんの話題の後。 無理に女の質問をしたのは自分だったが、次々と知らない女の名前が出てくるのは、とても気分が悪かった。
「それからジャンプで年上になってたけど、アイちゃんも綺麗になってたし… それを言ったらルリちゃんやラピスだって、大きくなったら、すごい美人になるんだろうな」
そう言われ、今までに無い衝撃を受けるラピス。
「!! もし、私やルリが大きくなって、美人になったら… どうするの?」
体を起こし、熱い吐息を吐きながら、アキトの答えを待つ。
「そりゃあ俺だって男だから… ((字幕)青年男子が渇望する性衝動、女性との性交渉) それに… 結婚できたら嬉しいな」
そこで今までとは違う、熱い涙を流し始め、混乱して、聞こえるはずも無い相手に、こう言ってしまう。
「大きくなるっ、私、大きくなってアキトと結婚するっ!」
青年のアキトは、はにかんでいたが、嬉しそうにしていた。
「俺、ラピスの倍は年取ってるぜ? ラピスが結婚できる年になったら、俺30だよ、ははっ」
もうアキトに年齢など無い、無邪気な疑似人格は、ラピスの心を締め付けた。
「合わせるから、私、アキトに合わせるから、何歳ぐらいがいいの?」
「そうだな、年上はユリカやイネスさんで懲りてるから、少し年下か、同じ年ぐらいがいいな」
「うん、うんっ」
ボロボロと涙を流し、ベッドの上で仰向けになって、ウィンドウを愛しげに抱きしめるラピス。
そうやって一時間以上、疑似人格と話していたが、薬の作用も収まったのか、生気を取り戻しベッドから起き上がった。
「ユーチャリス、現状報告」
『はい、彼らは私に、ある交換条件を提示しました。彼らの法ではタイムパラドックスを起こす事は禁じられていますが、我々はその規定に縛られる事はありません。この太陽系は壮大な実験場となるのです。ラピス・ラズリ、貴方は歴史を変えますか? それとも彼にだけ会いに行きますか?』
今回もユーチャリスは、何かの指示を受けているように思えたが、ラピスは彼らの誘いに乗る事にした。
「過去に、いえ、未来に戻ります。アキトの望みを叶えましょう、ジャンプの準備を」『了解』
ラピスが生きる希望を持ち始めたようで、少し安心するユーチャリス。しかしまた自殺を考えるようなら、ジャンプを阻止しなければならない。
『……以上のように、正確なジャンプにはゲートを開き、貴方とその空間を入れ替えなければなりません。 最初は彼らが一度だけ未来へのジャンプを許可し、補助してくれます、よろしいですか?』
「ええ、行きましょう。その前に、彼らに感謝の言葉を」
『わかりました… 彼らから「彼との再会を果たされる事を祈る」と伝言です』
「ええ、きっと」
目標をイメージすると、ラピス瞳孔の円周上に光が回転し始めた。
「目標、未来の木星衛星軌道。西暦0年」
この頃、ユーチャリスは、不完全なボソンジャンプの副作用が、あのギャグキャラ達をシリアスキャラへと変えた事を知らなかった。
「ゲート! オーープン!!」
片手を前に突き出し、キャラ設定つながりで「ゲート(笑)」を開くラピス。
『は?(汗)』
ラピスの行動に違和感を覚えるユーチャリス。そしてラピス自身も、自分達がジャンプを繰り返すたび、確実にギャグキャラへと崩壊して行くとは、夢にも思っていなかった。
ユーチャリスの前方で空間がゆらぎ、ラピスの瞳の中と同じ、金色に輝く円が回転し始めた。
(アキト、必ず迎えに行く……)
ゲート能力者? となったラピスは、未来の木星の生産プラントを目指して消えて行った。
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