レーヴァティン
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第三十六話 北の街その六
「僕一回冬のパリを旅行に行ったけれど」
「そのパリにか」
「家族で年末旅行に行こうってお父さんとお母さんが話して」
「それでか」
「パリに行こうって話になって行ったけれど」
「寒かったか」
「日本に比べるとずっとね。セーヌ川も凍るし」
「確かセーヌ川が寒波で凍ってでござるな」
進太はそのセーヌ川が凍る話からこうしたことを話した。
「麦をか運べなくなりパリが食料危機になって革命となったでござる」
「フランス革命だな」
「元々フランスの財政は破綻していたでござるが」
実はこれはアメリカ独立戦争への参戦等の戦費によってだ、俗に言われる破綻の原因である王室の贅沢は予算で歯止めがかけられていたのでそれ程でもなかった。
「むしろでござる」
「食いものがなくなってか」
「革命となったでござる」
「だからパンがなくなったんだな」
「それまではあったでござる」
セーヌ川で運べてだ。
「だから落ち着いていたでござる」
「川が凍って急にか」
「暴動から流れに流れて」
「革命か」
「最初はそこまではならなかったでござる」
「まさかああなるなんてな」
「恐ろしい話でござるな、パリが暖かければ」
例え寒波とはいえ川が凍らない位の場所ならというのだ。
「革命は起こらなかったでござる」
「寒さが起こした革命か」
「そうなるでござるな」
「凄い話だな、寒さは歴史を作るんだな」
「そうだね、寒さも暑さもだね」
淳二もこう言ってきた。
「歴史を作るね」
「暑さもか」
「うん、気候全体がね」
「まあその国を形成するしな、文化も」
「ひいては歴史もね」
「そうなるな、まあこの寒さはな」
久志もウォッカを飲んでいる、その強い酒を飲みつつだった。身体がサウナや湯とはまた違ったことで熱くなっていくのを感じながら言った。
「こうした場所ってことだな」
「要するにね」
「それでここにいる限りはな」
「この寒さの中でやっていくしかないよ」
「そういうことだな、じゃあ六人目の情報本格的に集めるか」
「キーワードは斧だね」
源三は笑ってこれを出した。
「それだね」
「斧を使う奴か」
「それもかなり見事な」
「斧自体はこの島で武器としてもよく使われてるけれどな」
薪割り等生活以外にもだ、久志もよく見てきている。
「それでもな」
「うん、見事な斧であることは間違いないから」
「俺達の持ってるものと同じだけな」
久志はここで己のレーヴァティンを見た、腰のそれを。
「凄いやつだな」
「そう考えると限られてくるね」
「斧にしてもな」
「剣でも普通に売ってる刀とレーヴァティンは違うし」
淳二もレーヴァティンを見て話す。
「斧も然りだね」
「並の斧と違うと戦ってもな」
「もうどんな強いモンスターでも一撃だから」
「それでやっつけちまうからな」
それでというのだ。
「すぐにわかるな」
「うん、噂を聞いてると何処にいるか」
「そいつが戦ってたらな」
「わかるね、じゃあね」
「まずはここで噂を聞いてくか」
この街に留まってとだ、久志は言った。
「暫くな」
「じゃあ宿屋も見付けてね」
寝泊まりし街においての拠点となるそこにというのだ。
「じっくりと腰を据えてね」
「情報を集めてな」
「やっていこうか」
「そうしような、ここにいるだけでもな」
居酒屋でウォッカを飲んでいるだけでもとだ、久志は話した。
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