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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  驚異の逆転


仮面ライダーアギト これまでの物語は



冬木の地に現れたオルタ。

狙いは大聖杯・この世全ての悪



すでに敵は懐に。
向かうアギト、セイバー、続いてアーチャーと遠坂凛。後から追い付こうと衛宮史郎。


だがすでに戦いは始まっている。
大聖杯が安置される柳洞寺地下大空洞。そこで張っていた魔術師とサーヴァントが相手である。


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「ライダー!!」

「下がっていてください桜!!」


四肢を地に付け、まるでヒョウか何かのような体勢で敵と向かい合うライダー。

その背に声を掛けるのは桜。
だがその腕はダラリと下がっており、まともに魔術も振るえない状態だ。


彼女が扱う魔術は「虚数」
この戦いが始まって、それは最初の数分間かなりの効果を上げていた。

何しろ虚数。
オルタの放つ攻撃やエネルギーを吸い上げ、利用して攻撃。
しかも奪われた瞬間にライダーの直接攻撃が入るのだから、防御しようにもその魔術の充填が間に合わないのだ。



彼女の生い立ち上、あまり多用できるものではないが、ここ数年間彼女は何もしていなかったわけではない。

ライダーやキャスターから、少しずつではあるが魔術の手ほどきを受けていた。
無理をしないように、というライダーの忠告通りに、彼女はよく戦った。



だが、今の彼女は魔術使用時に纏う影がない。
肩から腕に掛けて展開するそれは、今はオルタの腕にある。



「お前もまた、悪と呼ばれた存在。ならば――――」

ギュゥン、とその影が腕から取り込まれる。


オルタはすでに変身を済ませており、その装甲に暗がりが生まれる。
彼は今までの強さに加えて、さらに吸収するだけのキャパシティがある。

このままでは、いずれライダーの力すらも



「桜、ここは引きます」

「ライダー」

「わかっています。みすみす聖杯を渡す真似はしません」


だが、これ以上の交戦は不利にしかならない。
戦ったとして、もしライダーの力が吸収されては自分たちに勝ち目はない。

桜の魔力から虚数因子がなくなっていないところを見ると、あくまでも奪ってトレースということらしい。
時間が経てば戻るかもしれないが、それよりも早く敗北が訪れることは必至。

しかも奪われてしまってはこの先の勝ち目も薄くなる。



これと戦うには同様の力が必要。
と、なれば自分たちが行うべきは時間稼ぎ。



「ってところか・・・?」

そして、それはすでにオルタに予想されていること。

戦えば能力を取られ、しかし時間稼ぎを行わねばならない。
目の前の女の力量から見て、そんなことは無理だということはわかり切っていた。


「その悪の力、ぜひボクのものに―――ッ!?」


足を前に。
しかし、オルタの身体は動かない。


彼女は英霊。
反英霊だとしても、その力は魅力的だ。

加えてその属性は悪。オルタとしては是非とも自分の力の一つに加えたかった。

だが動けない。
気づけば硬直は足だけにはとどまらず、腰からさらに上体へと広がっている。


繰り返すが、彼女は英霊だ。真名をメデューサ。
この怪物の逸話は有名すぎる。


絶世の美女。蛇の髪の毛。
そしてその眼を見た者は―――――


「石化―――!!!」

ライダーの眼光が怪しく光る。
見るだけで対象を石化させるこのキュベレイならば、なるほど確かに時間稼ぎにはもってこいだ。

そして更に、彼女には奪われた力を奪い返す策がある――――!!!


自己封印(ブレイカー)・・・・」

「まずいそれは」

暗黒神殿(ゴルゴーン)ッッ!!!」

ズシッ!!と、その場の空気が赤く染まり、一気に重くのしかかる。
本来は彼女の魔眼を抑えるための結界であるそれを、対象に向けて展開することで敵の能力を抑え込む。

そして、必要なポイントに陣を書き込めば、それは更に発展する。


「覚悟してください」

総てを奪うには無理かもしれない。
だが、少なくとも桜が奪われた能力を、奪い返すことくらいはできるはず。


他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォード・アンドロメダ)

魔法陣の打ち込みは一瞬ですむ。
そんなに広い範囲でなくて済んだのが幸いだ。


オルタの身体から、魔力が漏れ出て能力が解けだす。
体を覆う装甲が融解し、煙を上げて地面へと水滴となって落ちていく。


「クッ・・・・!!」

「むぅ・・・!!」

息の詰まるような声を上げるオルタに、踏ん張りを利かすライダー。
見た目の損害は軽微だが、ライダーかがけている力は全力だ。

仕掛けている術者はこちらだというのに、この能力すら奪い取られそうなのだから。
一瞬でも気をゆるめば、吸収されるのは自分たちだ。


しかし


「おぅっ!?」

バシュゥ!!と、ついに限界を迎えたのかオルタの変身が解ける。
すると、身体から様々な力の片鱗が漏れてできては解けて魔力に変換されていく。


成功だ。
ライダーは安堵する。

しかもこの分なら、元のスペックも弱体化できるかもしれない。


「流石だ・・・・これでこそ悪の力・・・・!!」

だが、オルタは倒せない。
力を奪われていても、魔力にある程度耐性があれば苦しくはあるがこの結果以内は行動可能だ。

ライダーもそれは承知だ。
この結界は容易く突破されるだろう。

現に、動き出したオルタが結界の起点である魔法陣を一つ踏みつぶすと結界の効果は消えた。


だが、弱体化できたことと時間稼ぎが主な目的。


ならば、これで十分に



「変身」

カァッ!!

「・・・・な」


変身を行うオルタ。
それ自体は問題ではない。

たがなぜだ。
彼から感じる魔力は漲っており、吸収前と変わりない力強さがあるではないか――――!!!


「当然。ボクは能力を奪っているんじゃない。わかりやすく言えば「習得」に近い。そして、私の体内にあるこのベルトが、無限の力の供給源。多少吸い取られたところで、修復は容易さ」

「チッ・・・・」


じりじりと引くライダー。
ダメだ。

自分にはこれ以上こいつを止めることはできない。
すでにゴルゴーンにアンドロメダと宝具にかなり魔力を裂いた。ベルレフォーンを発動しようにも、今のこいつ相手には発動前兆で潰される。


「さて、これでもう阻むものは」

「左へ!!」

「ッ!!」

「ん?」

ドギャォッ!!



左に跳ねるライダー。
穿たれる地面。
そして、着地するのは剣を手にしたセイバーだ。

剣を手に放たれたストライク・エアが、オルタの背後から襲い掛かったのだ。


オルタの姿は土煙に消え、しかしまだそこにいることを感じ取るセイバーは着地と同時に一気にその中へと突っ込んでいった。


「破ァっ!!」

「っぉあ!!」

ガァン!!という音がして、その衝撃に土煙がはじけ飛ぶ。
セイバーの横薙ぎの剣を、オルタが膝と肘で挟んで白羽どりで止めていた。


ギチリと押し込んでいこうと力を込めるセイバーだが、オルタはそれを平然と押しとどめていた。


「背後から奇襲とは、手段を選ばなくなってきたな!!」

「クッ・・・」

「だけどいい。正義にそこまでの力を使わせなければならないほど、僕の悪は強まっていると言えるのだから!!」

「ハッ!!」


徒手空拳を主とするオルタ相手に、これ以上この間合いでの競り合いはまずい。
セイバーは手に込める力を抜き、オルタの体勢を崩しながらそこに蹴りを入れて後退。

蹴りを受けたオルタが、即座に体を起こしてセイバーへと追撃を仕掛ける。
だがそこに斬りかかっていくのはまた別の、炎を纏ったアギトの剣。


「おぉお!!?」

「ハァッ!!」

アギト・フレイムフォームの固有武器フレイムソードが、轟火を纏って振るわれる。
その切れ味のすさまじさに、回避したはずのオルタの腕に小さくではあるが切れ込みが入る。


「来たか、アギト!!」

「オルタ・・・」


猛るオルタ。
対して、アギトのほうの声は苦しいものだった。


何故。
つい数か月前自分を訪ねてきた青年は、気の弱くオドオドしていたが、こんなことをするようには思えなかったのに。

会って最初の一言で、あまりにかけ離れた印象。
だからアギトは、踏み込むべき剣で踏み込みに行けなかった。


「アギト。なぜという顔をしているんだろうね」

「オルタ。なぜこんなことになってしまったんだ!」

叫ぶアギト。
それは、悲痛というには十分な哀しみが込められている。


それに対し、オルタは語る。
それは今までと変わらぬ答え。


世界を見てきた。
悪の多さを知った。力を知った。

世界は悪が元であると悟った。

ならば、進化というその果てに行きつくのは悪であろうし、正しい姿はそれである。


「すべて悪!!この世界は悪という色であるべきだったんだ!!だから、僕はそれを為しに来た」

真っ黒な大聖杯を指さし、それこそが願いだと彼は迷いなく叫んだ。

「僕たちは人類の進化の道しるべとしてこの世界にいる!!だから、僕は染め上げるよ。この世界を悪一色の真の姿に!!」



―――――十分だった。

オルタは実に、アギトの質問に正直に、しっかりと答えた。
だったら、自分も答えを出さなければならない。

倒すべき敵だと


「倒すよ。君を」

「そう。それでいい。これは最初から、光と闇の戦い何だから!!!」

「ハァッッ!!」

アギトの装甲が、炎に包まれる。
噴き出してくるそれはまるで火山口。噴出するそれは怒りを体現したかのような赤銅色をした炎。

仮面ライダーアギト・バーニングフォーム。


燃え盛る轟炎
その力は、闇すらをも焼き尽くす炎を発現する。

そしてそのパワーは

「行くぞ!!!」


アギトのフォーム中最強を誇るほどのもの。


突き出されるパンチ。
放たれるキック。

ただの通常攻撃であろうとも、炎を纏うその一撃一撃は剛撃だ。



この戦いに手出しは不要。
そう悟ったのか、セイバーも、遅れて到着したアーチャーと凛もその姿を見ていた。

アギトの姿は、まるでこうするしかない自分への怒りをぶつけているかのようだった。


そして拳がまともにオルタの胸にめり込み、その身体が地面を転がる。


最後だ。
誰もが悟った。

アギトの拳に流れていく溶岩のような赤いエネルギーがそれを明確に表していた。


「ぉぉぉおおお!!!!」

ダンダンダンッッ!!と、一気にオルタへと駆けだしていくバーニングアギト。
その一歩一歩が、大地に亀裂を走らせて揺るがせる。


振りかぶり、炎の尾を引きながら放たれるバーニングライダーパンチ。
闇の使徒アンノウンですらをも粉々に吹き飛ばすこの一撃で、苦しませずに終わらせる。


「「もらった」」

ゴンッッ!!!







何が起こったのかわからない。
ただ、セイバーが見たのは結果だけだ。


アギトがパンチを打ち込んだ。
それは見ていた。

だが

次の瞬間に拳を突き出していたのはオルタだったし、アギトは大空洞のドーム部分に吹き飛んでめり込んでいた。


「は・・・・?」

後方頭上を振り返り、アギトの姿を確認した凛。
そしてその頭部をアーチャーの剣が守っていた。


「貴様――――!!!」

「おっと、よそ見してるから狙ったが」


いたのはオルタ。
その手刀が凛の脳天に向けて振り下ろされたのを、アーチャーの剣が止めたのだ。


だが恐ろしいのは


オルタとアギトのぶつかった地点、アーチャーと凛がいた地点。
その間にセイバーとライダーが立っていたにもかかわらず、この男はそれを気づかれることもなく素通りして攻撃したということだ―――――!!!


「流石はアーチャー。鷹の目ってことかな?」

「戯言を!!」


弾き飛ばし、剣を振るうアーチャー。
下がったオルタに、即座に反転して構えた弓を向けて放った。

放った剣はフルンディング。
敵を追尾していく魔剣だ。

だが、オルタはそれを容易に叩き潰した。
真上からの拳が剣を叩き落とし、しかもそれを魔力に分解して吸収した。



その様子に、セイバーは理解が追い付いていなかった。
なぜこの男があんな一瞬でアギトを、しかもバーニングフォームの彼を?

だがライダーはわかっていた。
思えば、オルタが抵抗少なくバーニングフォームの攻撃を喰らっていたことがすでにおかしかったのだ。



「仮面ライダー」という強者故に攻撃が入っていた。
皆がてっきりそう思っていた。

オルタは強かったが、同様の能力者であるアギトならばまともに戦える。
「アギト」なら奪われない。

そう思っていた


だがが違った。吸収していたのだ。
あの凄まじい拳を、パワーを、炎を。

考えてみれば当然だ。
すでにこの男は、ギルスとの戦いで戦闘経験値をすでに盗んでいるのだから――――!!!


「さて、仮面ライダーオルタ・・・・アヴェンジフォームとでも名付けようか?」

まるでこれから自分が何を手にするのかを暗示する名称。
加えて、まさしく復讐(アヴェンジ)に相応しいその能力。



「ライダー!!君は桜君を連れて下がれ!!セイバー!!!」

「はい!!!」

即座に切り替え、剣を構えて駆けだすセイバー、アーチャー。
両手を広げて、それを迎え撃つオルタ。




アギトが敗れた。
あまりに簡単に。




オルタ
この青年に、勝つ手段はあるのか


この、世界の闇を体現したかのような大空洞で



to be continued
 
 

 
後書き

オルタつえー!!
バーニングがスパァンとやられたのを呆気なく書けてるといいな!!




翔一
「次回。輝き」

ではまた次回

 
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