ハンカ=マンカのお話
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第一章
ハンカ=マンカのお話
ハンカ=マンカはご主人のトム=サムがお仕事から帰って来てテーブルの上に出したものを見てこう言いました。
「あれ、またなの」
「うん、貰ってきたんだ」
トム=サムはこう言って奥さんに答えました。
「工場の所長さんからね」
「ドールハウスを」
「そうなんだ、けれどね」
「私達前にね」
ハンカ=マンカはご主人に困ったお顔で言うのでした。
「ドールハウスがお家に来て」
「何が何だかわからないまま無茶苦茶にして」
「そうしたことがあったから」
だからだというのです。
「それでまただから」
「わしもそのことははっきりと覚えているよ」
「また滅茶苦茶にしそうで」
「断れなかったんだよ」
トム=サムは腕を組んで苦々しいお顔で奥さんに言葉を返しました。
「どうにも」
「そうなのね」
「どうしたものか」
「私達が持っていてもね」
「誰も楽しまないしな」
「あの時のこともあるし」
「どうしたものか」
夫婦でどうしようかと考えながらお部屋の中をぐるぐると回っています、歩き名がら考えているのです。
ですがどう考えても結論が出ません、二匹もこの状況に次第に苦しくなってきました。
結論が出ないこの苦しみに耐えかねてです、ハンカ=マンカはトム=サムに言いました。
「もう幾ら考えても結論が出ないから」
「だからだね」
「もう考えるのを止めましょうか」
「いや、それだと何にもならないだろ」
トム=サムはこう奥さんに反論しました。
「確かにどうしていいかわからないにしても」
「それはそうだけれど」
「じゃあこうするか?」
ここでトム=サムが言うことはといいますと。
「コインを出して表か裏かでだ」
「投げて出る面のことね」
「そうだ、表なら売るか知り合いの人に譲ってだ」
「裏ならどうするの?」
「物置にしまうんだ」
そうしようというのです。
「これでどうだ」
「そうするのね」
「ああ、ここに出したままでも仕方ないだろ」
「私達はドールハウスには興味がないから」
「それなら物置にしまうかだ」
「売るかあげるのね」
「そうすればいい、興味がないものは持っていても仕方がない」
「子供達で好きな子もいないし」
「孫達にもな」
鼠なので子沢山、孫沢山です。しかも皆どんどん育っています。
「だからな」
「ここはなのね」
「そうだ、そうしよう」
「どっちにしてもここに出したままではいけないわね」
「ああ、邪魔になるだけだ」
「それじゃあ」
ハンカ=マンカも頷いてでした。そのうえで。
トム=サムが自分のお財布からコインを出してでした、そのコインを垂直に上に投げました。
コインはくるくると回転してトム=サムの前足の中に落ちました、そして止まった時の面は。
「表だな」
「売るかあげるかね」
「そうなったな、それじゃあな」
「誰に売るかあげるかね」
「よし、ピーターさんのところに行ってだ」
兎のです、実はトム=サムとハンカ=マンカの夫婦は兎と鼠が近い種族ということもあって兎のピーター一家と仲がいいのです。
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