普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
216 ブラック邸にて
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
〝吸魂鬼〟にアニーが襲われる──なんて事もなく、アニーがグリモールド・プレイスに来て早一週間。
俺が色々と介入した結果なのか、バタフライ・エフェクトよろしく〝吸魂鬼〟にアニーが襲われるイベントが無くなったので、当然ながらアニーの魔法省を訪れるイベントも無くなった。
なので意外な事に俺とアニーはこの一週間を課題を片付けたりフレッドとジョージの追及をかわしたり──と、割とゆったりと過ごしていた。
〝割と〟とそんな言葉が付いているのは俺とアニーには≪不死鳥の騎士団≫の会議に顔を出す事が許可されているからだ。
……かと云って、俺とアニーは〝対外的に〟まだ未成年の魔法使いと魔女であるからして、〝騎士団〟の立ち位置は〝見習い〟とかそんな感じだろう。
(……ただ、まぁ…)
俺が≪不死鳥の騎士団≫に入った事により、〝フレッドとジョージを除くウィーズリー家の男兄弟は全員〝騎士団〟に籍を置いている事になっているので〟、フレッドとジョージの気持ちも判らなくもない。
〝パーシー〟で思い出した事だが──てっきり魔法省側に付くと思っていたパーシーだが、意外なことにパーシーも〝騎士団〟に入っていたりする。ダンブルドア校長の説得ももちろんだが、只今アスカバン上がりで弱った身体を療養であるクラウチ氏の説得で≪不死鳥の騎士団≫への参戦を決めたらしい。
そんなパーシーだが、実を云うと〝本部〟には殆んど顔を出していない──どころか、住まいすら別だったりする。
……と云うのもパーシーの〝騎士団〟での役どころが起因していて、その役どころが〝某・鼬〟みたいな多重スパイだからだ。
本来ならパーシーは、そのまま大人しく大臣補佐官になっていたのだろうが、ダンブルドア校長が画策した欺瞞工作によってパーシーの立ち位置はそんな風になってしまった。
故にパーシーは今日も今日とて〝〝騎士団〟にとって〟損にならない情報をせっせと魔法省にリークしていることだろう。南無──と云うのは、ダンブルドア校長の欺瞞工作に肉付けをした俺が言ってはいけない事だろうか。
(さて、いつダンブルドア校長に〝分霊箱〟についてバラそうかね──あっ)
課題も大方終わっていて手持ち無沙汰になったので、壊した〝分霊箱〟についてダンブルドア校長に打ち明けるタイミングについて考えていた時、ふとこの家に“サラザール・スリザリンのロケット”が2つ在ることに気付いた。
一つはクリーチャーがレギュラス・ブラックから預かったもので、もう一つは俺の〝倉庫〟に眠っている壊れた──壊したものだ。
(……それに…)
そして、連鎖的に前者の〝ロケット〟がこのブラック邸から持ち出されず、〝過去の俺〟がマンダンガス・フレッチャーから入手出来ない可能性が出て来た事にも気付く。
恐らくだが、シリウスが死んだからこそマンダンガス・フレッチャーがこのブラック邸で好き勝手に動けたのだろうが、この世界線では態々自由の身にしてアズカバンから引っ張り出したシリウスを死なせるつもりはちゃんちゃら無かった。
……ともすれば、主人の居るブラック邸でのマンダンガス・フレッチャーの動きも変わってくると云うのが道理。
(……ここで〝無理〟を徹そうすれば道理も引っ込む──か。……自分のケツくらいは自分で拭くか)
「はぁ~…」
これもある意味に於いての自業自得だと、俺は一つため息を吐いてから、〝後者の〝ロケット〟〟を〝倉庫〟から出しながらクリーチャーの居る部屋に向かうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クリーチャーの説得も思いの外早く──それこそ20分や30分で終わり、あっという間に時は流れて9月1日。……つまりは新学期が来た。
先日──と云うか、つい昨日に俺とアニーが監督生がなったと云う知らせがホグワーツから届き、そのお祝いとして盛大なるパーティーが開かれた。グリフィンドールの女子監督生枠を競っていたであろうハーマイオニーもアニーが監督生に選ばれた事について納得しているのか、特に何も言わずアニーを祝っていた。
クリーチャーの説得は最初こそ〝〝血〟を裏切る者!〟とか言われたりして、壊れた〝ロケット〟を見せるなり、俺が〝ロケット〟を盗んだと思ったのか──凄い形相で襲いかかって来たが、それを口先で静めて──〝〝逆転時計(タイム・ターナー)〟を使った〟と嘯いたりして、何とか〝ロケット〟と〝ロケット〟を交換してもらい、改めて入手した新品同様の〝ロケット〟をマンダンガス・フレッチャーに二束三文で売却した。
……そしてその〝ロケット〟を〝“腑罪証明”で過去から来た俺が〟買うことで〝現在〟に収束することになるのだろう。
(しかし──なぁ…)
意外な事もあった。……が、しかしそれは悪い事ではななく、ある意味に於いて嬉しい誤算だった。
(……まさか〝俺が〟クリーチャーの忠誠を得てしまうとは…)
ダンブルドア校長からの指示でクリーチャーを取り込む様に言付かっていたので、嬉しい誤算ではあるが──〝ロケット〟を交換した時点でクリーチャーからの忠誠を得てしまった。
レギュラス・ブラックとクリーチャーの信頼関係をすっかり失念していたのだが──それが逆に〝打算〟にならならなかったので、クリーチャーとの信頼関係を結べたのだと納得している。
……本来なら〝それ〟は〝ブラック家〟の当主であるシリウスがやらなければならない事だったのだろうが…。
(さて…)
父さんの愛車の──条例的に考えて真っ黒なフォード・アングリアに揺られながら今年度の事について考える。
今年度ホグワーツでしなければならない事と云えば〝原作〟に於ける≪ダンブルドア軍団≫のような自衛隊を設立し、そこへの参加希望者の自衛力の強化くらいなものなので、去年とかに比べると今年度と来年度そこまで性急に過ごさなくて済む。
……尤も、〝ホグワーツ外〟でしなければならない事は意外とあるのだが…。
閑話休題。
(久しぶりにマジック・アイテムの開発とかをガッツリ腰据えてやるか──あ、いっその事〝自衛団〟をネタにアンブリッジをおちょくるのもアリか)
ファッジに〝介入〟してない以上、ファッジがアンブリッジを使って教育に介入してくるのは半ば確定なので、メンバーをより精査して〝知識〟にある以上の布陣を敷いてアンブリッジを──ファッジを〝無能だ〟と嘲るのも、かなりの労力が必要そうだがそれなりに面白そうだ。
アニーの言葉を借りるなら、確か〝愉悦〟──だったか。
すると、中二チックではあるが〝自衛団〟の名前の候補もあやふやではあるが決まってきた。よくよく考えれてみばこれ以上ないネーミングだとも自負出来る。……少なくとも≪ダンブルドア軍団≫よりは…。
【キングズ・クロス駅】についたのはそれから間もなくの事だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うーっす」
「ただいま」
「おつかれさま」
1時間かそこらの監督生についての説明を受けて、ハーマイオニーやジニーの気配をたよりにノックを忘れず──コンパートメントにアニーと一緒に入る。そのコンパートメントには〝気配〟から判っていたが去年の帰りのコンパートメントと同じメンバーが揃っていて、ハーマイオニーが俺達に労いの言葉をくれる。
「その内また見回りに出なきゃいけないけどな」
そう告げながらコンパートメントのドアを閉めると、開口一番ハーマイオニーが確認ながら訊いてきた。
「……で、スリザリンの監督生はだれだったの──いえ、男子の方十中八九誰が任命されるか判っているから、女子の方だけで構わないわ」
「ハーマイオニーいわくの〝イカれた雌牛〟だよ」
「〝イカれた雌牛〟──って、パンジー・パーキンソンが?」
首肯する俺とアニー。ハーマイオニーはパンジー・パーキンソンが監督生に選ばれた事について「脳震盪を起こしたトロールよりバカなのに」などと重ねてディスっている。
そんなハーマイオニーに愛想笑いで返しながらハッフルパフがアーニー・マクミランとハンナ・アボット。レイブンクローがアンソニー・ゴールドステインとパドマ・パチルだと言葉少なに伝える。レイブン・クロー生であるルーナからも特に言及は無い。
それからと云うものの、ホグワーツに着くまで──マルフォイが襲来したりすることも無く、ホグワーツに到着するのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
“組分け帽子”の歌──と云うよりは警告と〝アンブリッジ先生〟の啓発的なスピーチを聞き終え、グリフィンドール寮。
「アンブリッジのスピーチ、どう思った?」
談話室は“組分け帽子”の警告とアンブリッジのスピーチについての話で騒がしく──そんな談話室の隅にハーマイオニーに、コンパートメントに会同していたルーナを除くメンバーが召集されていて、召集した張本人であるハーマイオニーは単刀直入にそう切り出してくる。
「あれってダンブルドアへの釘差しでしょ?」
「……まぁそうだろうな」
ハーマイオニーの質問に口を一番に開いたのは、答え合わせをするかの様な体のジニーだった。
本来なら俺やアニーにも言及があるはずなのだが、ファッジはクラウチ・ジュニアの話だけで判断しているらしく、そうはならなかった。……故に今はジニーの云うとおり、こうやって──ホグワーツにちょっかいを出したりする事しか出来ないのだろう。
今のところ糾弾できるのはダンブルドア校長くらいなものだからか──〝日刊予言者新聞〟を見る限り、メディアを使ってのネガキャンもいまいちパンチが弱いとしか言い様がない。
俺の肯定に言葉が足らない思ったのか──アニーが言葉を足した。
「今のところ〝例のあの人〟の復活を公言しているのは、ダンブルドア校長先生くらいだからね」
「……魔法省はそれだけ〝例のあの人〟恐いってこと?」
「ある意味そうだが、むしろファッジが怖がっているの〝復活していないとしている〝あれ〟〟より、ダンブルドア校長だろうな」
「どうして?」
「きっとファッジはダンブルドアの反乱を怖れているのよ」
「うわぁ…」「ファッジェ…」
重ねてくるネビルの問いに答えてやる。するとネビルと──母さんの意向で詳しい話を聞けていなかったジニーも絶句する。激しく同意出来る。
「まぁ、〝アンブリッジ先生〟の教師としての手腕は〝闇の魔術に対する防衛術〟で拝見ね」
そう締めくくるハーマイオニーの顔はどこか憂いが見えた。
SIDE END
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