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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第7話

 
前書き
あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!  

 
~第Ⅱ分校~



(そろそろ下校時間か………一通りの生徒とも話したし、そろそろ宿舎に戻るか。)

校門まで来たリィンが宿舎に向かおうと校門から出ようとしたその時

「あっれぇえ~~~っ!シュバルツァー教官じゃないッスかァ。」

わざとらしく声を上げてリィンを呼び止める男子の声が聞こえ、声に気づいたリィンが振り向くとアッシュがリィンに近づいてきた。

「君は―――(たしか戦術科の……)」

「お勤めゴクローさまーッス。――――アッシュ・カーバイド。Ⅷ組・戦術科のの生徒ッス。なんか、生徒達にマメに声をかけてましたけど、さすがに熱心ッスねぇ~?人気絶頂の若き英雄―――”灰色の騎士”サマは。」

リィンに近づいたアッシュは名乗った後不敵な笑みを浮かべてリィンに対する皮肉を交えた指摘をした。

「………あくまで就任したばかりの新米教官だからな。ランドロス教官とランディの報告で聞いたよ。なかなかの身体能力らしいな?授業や教練で教える事も多いだろうし、改めてよろしくだ、アッシュ。」

「ハッ……そりゃどうも。ところで、前々からアンタに聞きたかったことがあるんスけど。―――デカい灰色のオモチャ乗り回して、”異世界の皇族の犬”として働くっつーのはそんなに気持ちいいんスかね?」

「……これまでマーシルン皇家の”要請(オーダー)”に応じてヴァリマールを使っての活動をした事があるのは4、5回程度だったから、そんなに頻繁にヴァリマールを乗り回してはいないはずなんだがな………――――それと、アッシュも知っての通り俺はメンフィル帝国の”貴族”で、元”メンフィル帝国軍人”だ。”軍人”や”貴族”が”祖国の皇族”の命令に従うのは当然の事だ。メンフィル帝国軍からは既に退役した身だが……俺がメンフィル帝国の貴族である事は変わらない。”皇族の犬”はさすがに言い過ぎだと思うが貴族が仕え、支えるべき存在である祖国の皇族の為に働く事はそんなにおかしな事か?」

アッシュの毒舌や皮肉を交えた問いかけに対して静かな表情で答えたリィンは困った表情でアッシュに問い返した。

「へえ?いや~、さすが元祖国の皇族に対して罪悪感を持っていた両親の為だけに、元祖国の兵士を容赦なく殺しまくった上大貴族の当主達やその関係者達まで殺して、元祖国と今の祖国の間で起こった”戦争”どころか、元祖国の内戦まで短期間で終わらせて今の祖国どころか元祖国のお偉い連中にまで感謝された英雄サマの言うだけはあって説得力もあるッスねぇ~。まあ、実際そのお陰でその英雄サマは今の祖国からは”褒美”として、将来大貴族の当主になれる事にしてもらった上、1年半前の戦争で今の祖国が元の祖国から奪った”帝国の至宝”とか呼ばれて元祖国では大人気だった元祖国の皇女サマまで与えられた事によってその皇女サマを英雄サマのハーレムに加える事ができて、いつでも自分の好きな時にその皇女サマともヤレるッスもんねぇ~。しかもその皇女サマも、戦争や内戦の件で英雄サマに感謝していて、英雄サマにヤラレる事も本望のような態度を取っているッスもんねぇ~?」

「……っ……」

(この方は一体……?)

(どうやらリィンに対して、何か思う所があるように感じるけど……)

そしてアッシュの更なる毒舌や皮肉の指摘に対してリィンが息を呑んで気まずそうな表情をし、その様子を見守っていたメサイアは戸惑いの表情をし、アイドスは静かな表情でアッシュの事を推測した。



「ふふっ、失礼します。」

するとその時ミュゼが二人に声をかけて近づいてきた。

「あ……(確か彼女は主計科――――それもアルフィンの話にあったユーディット皇妃殿下の……)」

ミュゼの登場に一瞬呆けたリィンはすぐに我に返るとミュゼの事を知っていたアルフィンから教えられたミュゼの情報を思い出し

「チッ……朝に続いてかよ。」

一方アッシュは舌打ちをしてつまらなそうな表情をした。

「Ⅷ組のアッシュさんにリィン教官でしたか。ふふっ、楽しそうなお話で盛り上がっているみたいですね?」

「ハッ……そんじゃあ俺はここで。―――週明けの機甲兵教練、楽しみにさせてもらうぜ?」

ミュゼに問いかけられたアッシュは鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべてリィンを見つめた後下校し始めた。

(機甲兵教練……?)

「あら、ひょっとしてお邪魔たっだとか……?」

アッシュの言葉が気になり、下校していくアッシュの背中を見つめながら考え込んでいるリィンにミュゼには問いかけた。



「いや、そんな事はないさ。えっと、君は主計科の――――」

「Ⅸ組・主計科所属、ミュゼ・イーグレットと申します。すでに授業で何度かお世話になっていますが……ご存知でいらっしゃいますか?」

ミュゼは名乗った後微笑みを浮かべてリィンに訊ねた。

「ああ、ちゃんと覚えているよ。トワ教官やレン教官からも話を聞いている。なかなか―――いや、かなり成績優秀らしいな?何せあのレン教官が君の事を『育て上げれば、レンと同格になれる器がある』と言っていたくらいだからな。」

「ふふっ、私程度の成績で優秀だなんて恥ずかしいです。それにレン教官と同格になれるだなんて、恐れ多いですわ。多分レン教官のお世辞の意味も含めた過剰評価だと思いますわよ。実は私も、リィン教官の噂を色々と伺っていまして………お近づきになれたら嬉しいなってずっと思ってたんです。」

「そうか……そういう噂は話半分くらいに受け取って欲しいんだが。」

(ベルフェゴールやリザイラがいて彼女の反応を見たら、また面白がるでしょうね……)

(ア、アハハ………というか少なくても教官と生徒が結ばれるのは冗談抜きで色々と不味い気がするのですが……)

頬を僅かに赤らめたミュゼの言葉に対してリィンは苦笑しながら答え、その様子を見守っていたアイドスとメサイアは苦笑していた。

「……?ああ、”灰色の騎士”とかそういう噂ではなくって。”前の”Ⅶ組の皆さんの事や従妹さん、新皇女殿下方面の噂です♪」

「え……!?」

そしてミュゼのある言葉に驚いたリィンがミュゼを見つめたその時

「クスクス……ごきげんよう、リィン教官。若輩者ではありますがよろしくお願いしますね?」

ミュゼは意味ありげな笑みを浮かべて会釈をした後下校を始めた。

(………戦術科のアッシュ・カーバイドに主計科のミュゼ・イーグレットか。Ⅶ組や他の生徒達も含めてみんな一筋縄じゃ行かなさそうだな。)

ミュゼが下校して行く様子を見守りながらリィンはアッシュやミュゼを含めた生徒達を思い浮かべて苦笑した後下校を始めた。



その後宿舎に戻ったリィンは夕食を取って次の授業に向けての準備をした後宿舎を一通り回り、風呂に入浴した後明日に備えて休む為に自室に戻った。



~宿舎・リィンの自室~



リィンが部屋に入ると着信音が聞こえてきた。

「この着信音は……?(聞いた事のない音だな。)」

着信音に気づいたリィンはARCUSⅡを取り出して通信をしようとしたが、普段の画面とは異なる為首を傾げた。

「?(この色は……通信着信じゃないみたいだ。ということは、導力ネット経由でファイルでも送られてきたのか?)」

初めて見る画面の色に首を傾げながら操作をすると新たな画面へと変わった。

「……ん?なんだ、この画面は―――ROUND・OF・SEVEN(ラウンド・オブ・セブン)……”Ⅶ組の輪”……?」

「―――もしもし、リィン。ちゃんと繋がってるかな?」

新たな画面にリィンが首を傾げているとARCUSⅡから聞き覚えのある青年の声が聞こえてきた。

「そ、その声は……」

「あはは、よかった。ちゃんと繋がったみたいだ。ちょっと待ってて。今、画像を出すから。」

声にリィンが驚いていると画面には旧Ⅶ組の生徒の一人―――エリオット・クレイグが写った。



「エリオット―――!」

「リィン、久しぶり。先月通信で話して以来かな?顔を見るのは半年ぶりくらいだけど。」

「ああ、そのくらいか……―――じゃなくて!どうしたんだ、この映像は!?」

「ふふっ、タネを明かすとオリヴァルト殿下の計らいでね。リィンもARCUSⅡを殿下から贈られたでしょ?それに特別なアプリ?っていうのが入ってて、その機能を使ってるんだって。」

「そんな機能が……俺の顔もそっちに映ってるのか?」

エリオットの話を聞いた驚いたリィンはエリオットに確認した。

「うん、バッチリだよ。ひょっとしてまた背が伸びた?あ、そう言えば誕生日も近かったんじゃなかったっけ?」

「ああ、来月だが……ははっ……………」

「ふふっ…………」

その後リィンは久しぶりに話すかつての仲間との会話を懐かしみながら過ごした後、明日に備えて休み始めた。



4月16日、自由行動日――――



翌日、ブリーフィングの時間までリィンは町や分校を見回りながら生徒達の相談に乗ったり、町の人々に挨拶をしたりと、色々な事をして過ごしている内にブリーフィングの時間も近くなった為、分校の軍略会議室に向かい、ブリーフィングの時間が来るまで待ち始めているとミハイル、トワ、レン、ランディ、ランドロス、セレーネに加え、リアンヌ分校長も集まり―――定刻通り、午後3時にブリーフィングが始まるのだった。



PM3:10―――



~第Ⅱ分校・軍略会議室~



「………………」

「えっと………?」

「もう時間は過ぎてますけど始めないんスか?」

定刻が過ぎてもミハイル少佐はブリーフィングを始めず黙り込み、その様子にトワは戸惑い、ランディはリアンヌ分校長に視線を向けて訊ねた。

「うふふ、”始めたくても始められない”のじゃないかしら?―――特に”特別カリキュラム”関連で。」

「え……それはどういう事なのでしょうか?」

意味ありげな笑みを浮かべてランディの疑問に対して答えたレンの推測を聞いたセレーネは不思議そうな表情でレンに訊ね

「レン達教官陣も、”特別カリキュラム”の事について何も知らされていないのよ?普段の授業の為にレン達がそれぞれ準備をするように、”特別カリキュラム”の為にも当然”準備”が必要のはずよ。なのに、その”準備”すらもできないようにレン達にも”特別カリキュラム”について知らされていない事を考えると、その”理由”について大体予想できるでしょう?」

「何らかの理由があって俺達にも黙っているか、分校長自身も”特別カリキュラム”について知らされていないかのどちらかという事か。」

「それは………」

「!……………(さすがは1年半前の内戦で自身が描いた結果へと導き、通商会議でも宰相閣下と共和国の大統領相手に互角以上に渡り合った”殲滅天使”か……それに”紅き暴君”も、豪快な性格とは裏腹に鋭い部分もあるな………)」

レンの推測に続くように不敵な笑みを浮かべて呟いたランドロスの推測を聞いたリィンは真剣な表情をし、レンとランドロスの推測が当たっている事に驚いたミハイル少佐は真剣な表情でレンとランドロスを見つめた。



「―――フフ、さすがですね。お二人の推測通り、”特別カリキュラム”について私ですら詳細も知りません。――――そちらの主任教官殿とこれからくる連絡役以外、になりますが。」

「………お待たせして申し訳ありません。」

「連絡役……ですか?」

「という事は鉄道憲兵隊の方か――――」

リアンヌ分校長に視線を向けられたミハイル少佐は静かな表情で謝罪し、二人の会話を聞いて新たに疑問が出て来たセレーネは不思議そうな表情で首を傾げている中、察しがついていたトワが推測を答えかけたその時

「悪ぃ、待たせちまったか~?」

扉の外から青年の声が聞こえてきた。

「「え………」」

「この声――――」

「………まさか………!」

聞き覚えのある声にトワやセレーネは呆け、ランディは表情を引き締め、リィンは驚きの表情で声を上げて扉へと視線を向けると扉が開かれ、レクター少佐と1年半前の内戦で共に戦った旧Ⅶ組の一人にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の一人でもあるミリアム・オライオンが現れた。



「レクター少佐……!そ、それに――――」

「ニシシ………」

「ミリアムさん……!?」

「久しぶり―、リィン、セレーネ!」

自分達の登場にセレーネと共に驚いているリィンにミリアムは無邪気な笑顔を浮かべてリィンにタックルをした。

「うぐっ、いきなりタックルは…………って、はは………」

「ふふ………」

「えへへ……いやー、無理言ってレクターについてきてよかったよ!また来週から任務でさー。いつ会えるかわからなかったから。久しぶり、リィン、セレーネ。ていうかすっごく背が伸びたねー!?セレーネはおっぱいがまた、大きくなったんじゃないの?」

リィンにタックルをしたミリアムは無邪気な笑顔を浮かべてリィンを見つめた後セレーネに近づいてセレーネの豊満な胸をもんだ。

「キャッ……!?もう……1年半前の時点でわたくしは既に”成竜”なのですから、あれから身体的な成長がある訳ありませんわよ。わたくしやツーヤお姉様、それにミントさんは”成竜”になれば、後は老いる時が来るまでずっと”成竜”になった時の姿のままなのですから……」

「はは……俺は5リジュくらい伸びたよ。ミリアムは変わらないな。元気そうでなにより――――」

ミリアムに胸を揉まれたセレーネは声を上げた後両手で胸を隠して頬を赤らめて答え、その様子を苦笑しながら見守っていたリィンは懐かしそうな表情でミリアムに声をかけたがすぐに再会を喜んでいる場ではない事に気づいた。

「へえ……って事はそいつがお前達が1年半前の内戦で共に戦ったって言う士官学院の仲間の一人か。」

「あはは………ミリアムちゃん、久しぶりだね!」

リィン達の様子を見守っていたランディは興味ありげな様子でミリアムを見つめ、トワは懐かしそうな表情でミリアムに声をかけた。



「やれやれ。久しぶりだ、シュバルツァー―――いや、ロード=リィンと呼ぶべきか?ここで会うのは本来想定外だが。ったく、1年半前の内戦終結以来あれ程俺達どころか”エレボニアに関わる事自体”も徹底的に避けていた癖に、こんな形でエレボニアに再び深く関わるなんて、一体何を考えているんだ?」

一方レクター少佐は若干呆れた後苦笑しながらリィンに問いかけた。

「……何の事かサッパリですね。それと俺の事は以前通りの呼び方で構いません。――――ですが、お久しぶりです。ユーゲント皇帝陛下にアルフィンと一緒に招待された今年の年始のパーティー以来ですね。」

「ああ、そうなるな。ハーシェル女史も久しぶりだ。さぞ憲兵少佐さん相手に窮屈な思いをしてるんじゃねえか?」

「あはは……そ、それほどでも。」

「当てこすりは止めてもらおうか、アランドール少佐。」

レクター少佐に冗談交じりの言葉をかけられたトワが苦笑している中ミハイル少佐はレクター少佐を睨んで指摘した。

「アルフヘイム嬢も―――おっと、アルフヘイム子爵閣下と呼ぶべきでしたか?」

「ふふっ、わたくしの事もお兄様同様以前の呼び方や口調で構いませんわ。」

「そりゃどうも。―――レン皇女殿下もご機嫌麗しゅう。正直貴女がこの分校に来たのはシュバルツァー以上に想定外でした。シュバルツァー達の件も含めて貴国―――いや、”英雄王”は一体何を考えているのやら。」

「クスクス、レン達の派遣にパパが関わっている事は否定しないけど………誰かを驚かせるのはレンの”専売特許”でもあるから、レンがこの分校に来ることもそんなにおかしな事ではないわよ♪」

レクター少佐の指摘に対してレンは小悪魔な笑みを浮かべて答え、レンの答えにその場にいる多くの者達は冷や汗をかいた。



「やれやれ……”お茶会”の主催者の貴女が言うと冗談になっていませんね。それと――――アンタともお久しぶりか、オルランド。」

一方レンの答えに苦笑したレクター少佐はランディに視線を向けて声をかけた。

「ああ、1年半前のクロスベル帝国建国以来になるな、”かかし(スケアクロウ)”。」

「そうなるな。………それにしても、クロスベルにとっての念願の”自由”を手に入れる所かエレボニアを超える大国へと成りあがってその件でエレボニアとクロスベルは今も微妙な関係なのに、わざわざ自分からその微妙な関係になっているエレボニアに入り込むなんて、さすがは一課ですら手が出せなかった”競売会(オークション)”にも入り込んだ支援課の一員と言うべきか?」

「ま、否定はしねぇよ。だが、それに関してはお互い様なんじゃねぇのか?アンタはクロスベルがまだ自治州だった頃、アンタの親玉と一緒にマフィアやスパイ、テロリストの温床になっていたクロスベルに乗り込んでその”競売会(オークション)”の関係者と密会をしていたそうだからな。」

「言われてみればそうだから、反論できねぇな。――――それと”仮面の紳士”殿、だったか。何でそんなバレバレな格好をして、顔だけ仮面で隠しているのか訳がわからねぇが……まさかとは思うが本気でそれで、正体を隠せると思っていないよな?」

ランディの指摘に対して苦笑しながら同意したレクター少佐は真剣な表情でランドロスを見つめ、やがて呆れた表情でランドロスに問いかけた。

「何が言いたいのか良くわからないが、俺は”仮面の紳士”ランドロス・サーキュリー!以前俺が惚れて力を貸した男の親友が教師を探している話を聞いて、再び山から降りてきて、”捨石”扱いされているガキ共がこの先全員生き残れるように、しごいてやっているとても懐が広~い教師だぜ?」

そしてランドロスの答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「あ~……リア充皇帝達の話だと、どこかで士官学院の教官をしている”某元自治州の元警備隊司令”の型破り過ぎる行動にまともに付き合う必要はないし、バカな行動は止めようとする方が時間の無駄だとの事だぜ。ちなみにリア充皇帝達の話だとその男の二つ名の中には”バカ王”って二つ名もあって、リア充皇帝もそうだが仲間達の一部もその男の事を割と”バカ”呼ばわりしていたとの事だ。」

「なるほどな……狙ってやっているのか、無意識でやっているのかはわからねぇが、やっている事が規格外かつそのやっている事に対しての考えや行動の意味すらも全くわからねぇからある意味情報局(おれたち)にとって”天敵”になる一番性質の悪いタイプだな………………で………………」

疲れた表情を浮かべたランディの説明を聞いたレクター少佐は納得した様子で溜息を吐いた後真剣な表情でリアンヌ分校長を見つめた。



「フフ、どうしましたか?”鉄血”の懐刀殿。私の事は気にせず、幾らでも久闊を叙して構いません。」

「………いえ、お初にお目にかかります。エレボニア帝国軍情報局・特務少佐、レクター・アランドールであります。―――お見知りおきのほどを。」

リアンヌ分校長の言葉に対して静かな表情で答えたレクター少佐は恭しく一礼をした。

「噂の”子供達”に(まみ)えるのは1年半前かつての部下を見逃して貰う代わりに、マーシルン教官が要求した”代償”によって”煌魔城”での戦いで共闘したそちらの”白兎”を除けば、貴方が最初になりますね。フフ、私―――いえ、”私達”がここに赴任した”流れ”を考えるとその”流れ”には間接的に貴方も関わっていたでしょうから、それを考えると初めてにはならないかもしれませんね?」

「………っ………」

「うふふ、さすがは”聖女”ね。」

「ハハ、過大なお言葉、汗顔の至りであります。」

リアンヌ分校長の問いかけを聞いたミハイル少佐は息を呑み、レンは意味ありげな笑みを浮かべ、レクター少佐は口元に笑みを浮かべてはいたが目は笑っていない状態で謙遜した答えを返した。



(あ、相変わらずこわいな~、”鋼の聖女”は………というか前々から聞こうと思っていたけど、何で”結社”の”蛇の使徒”だった”鋼の聖女”がいきなりメンフィルに寝返って、”英雄王”と”聖皇妃”の専属護衛になったの?)

(ア、アハハ……その件には色々と複雑な事情がありまして、説明する機会ができた時に、説明致しますわ。)

(やりあってるレクター少佐もさすがの面の皮の厚さだが………)

(ううっ………心臓に悪いなぁ。)

(うふふ、多分”特別カリキュラム”の事でブリーフィングをする為にこういう事が頻繁にあると思うから、今の内に慣れておいた方がいいわよ♪)

(ほう?クク、同じ”鉄血”の”子供”の”乙女”と比べると随分と肝の据わった男だぜ。)

(あー……そう言えば以前の”合同演習”の件でアンタとルイーネ姐さんが”氷の乙女(アイスメイデン)”をビビらせて追い返した話があったな。まあ、あの面の皮が厚い男だったら、アンタやリア充皇帝もそうだが、ルファディエル姐さんやルイーネ姐さんともまともにやりあえるだろうな……)

一方レクター少佐とリアンヌ分校長のやり取りを見守っていたミリアムは冷や汗をかいてセレーネに小声で訊ね、訊ねられたセレーネは苦笑しながら答えを誤魔化し、リィンは苦笑しながらレクター少佐とリアンヌ分校長を見比べ、居心地の悪そうな様子を見せているトワにレンはからかいの表情で指摘し、興味ありげな様子でレクター少佐を見つめて呟いたランドロスの小声の言葉を聞いたランディは苦笑していた。

「―――まあいいでしょう。そろそろ本題に入って下さい。奇しくもここに、鉄道憲兵隊と情報局の少佐殿達がいる――――さて―――どのような興味深い話をしてくれるのですか?」

そしてリアンヌ分校長の言葉を合図に”特別カリキュラム”についてのブリーフィングが始まった――――




 
 

 
後書き
今回の話を読んでお気づきと思いますがアルフィンが閃Ⅲ篇開始の時点で既にリィンの妻の状態なので、当然ミュゼの正体とかもリィン達に教えていますのでリィンもミュゼの正体を知っています(汗)そして何気に今回のリアンヌの発言で灰の軌跡の閃Ⅱ篇のネタバレが(冷や汗)それとランディのレクターならヴァイス達とまともに渡り合えるという発言を聞いてこう思った人もいるかもしれません……ヴァイス達はレクターごときじゃはりあえる相手じゃない!クレアの二の舞いになるのがオチで、ルファ姉やルイーネに挑むのはもっと無謀だ!……と。まともにはりあえるとしたらルーファスやオズボーンでしょうね……とは言ってもルーファスは閃Ⅲ開始時点で既にこの世から退場させられていますし、オズボーンも通商会議でヴァイス達に思いっきり嵌められましたから、事実上ヴァイス達とまともに張り合う事すら厳しいでしょうねww 
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