作った予言
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第一章
作った予言
ノストラダムスの本を家でくつろぎつつ読んでだ、岬由利香はその丸く小さな目を大きく見開いてこんなことを言った。
「あれっ、外れてるじゃない」
「あんた今更何言ってるのよ」
母の早百合が娘に呆れた声で言った。
「一九九九年終わってもう二十年近いでしょ」
「というか私が生まれる前の話じゃない」
女子高生の由利香はこう言った、茶色にしている髪はショートで背は結構ある、とにかくスタイルがよくラフな半ズボンが似合っている。
「もう」
「そうよ、というか何でそんな本読んでるのよ」
「たまたまブックオフで売ってて」
それでというのだ。
「百円で安かったから」
「それで買ったの」
「それで読んでるけれど」
「予言外れてるでしょ」
「あれもこれもね」
「そんなものよ、予言って」
早百合は髪型以外は自分にそっくりの娘に言った、母親の髪型は茶色は同じだがかなり伸ばしている。
「外れるものよ」
「そうなの」
「後で言うものよ」
「後でって」
「何かがあって」
そしてというのだ。
「後で適当なこと言って予言されてたとかね」
「言うものなの」
「ノストラダムスなんて正直何書いてるかわからないから」
俗に諸世紀と言われているその本はだ。
「何とでも言えるのよ」
「その一九九九年も」
「そうよ、実際にね」
これがというのだ。
「マルスだの恐怖の大王とか言うけれど」
「人類は滅亡するとか」
「それ本によって滅亡を逃れるとかなってるから」
「あれっ、そうなの」
「そうよ、それに実際にね」
「私達今こうしているわね」
一九九九年を遥かに過ぎたがだ。
「生きてるわね」
「滅亡しないでね」
「それじゃあ」
「そう、後で言うのよ」
何かが起こってからというのだ。
「予言はね」
「そんなものなのね」
「そう、後ね」
「後?」
「そこから色々と煽る人がいるけれど」
「何かこの本って」
由利香は今読んでいるその本の話も母にした。
「煽ってるわね」
「そうでしょ、人類滅亡とか言ってね」
「何か下手に読むと不安になりそうよ」
「それで読ませるから」
「そんなことしてるの」
「その本はまだずっとましよ」
煽っていてもというのだ。
「昔あった漫画なんかもっと凄かったのよ」
「凄かったって」
「もう何から何まで人類滅亡だ、他の知的生命体だ三百人委員会だって喚き散らしていたのよ」
その漫画の中でというのだ。
「それで何も知らない子供が読んでね」
「人類は滅亡するって?」
「思って落ち込んでいたのよ」
そうだったというのだ。
「これがね」
「それかなり悪いことよね」
「箸が落ちても人類滅亡だったのよ」
そう喚き散らしていたというのだ。
「そうしたことになるから」
「こうした本も問題なのね」
「真に受けたら問題なのよ」
それこそというのだ。
「予言は、ただ笑って読めば」
「そうすればいいのね」
「そう、普通にね」
それこそというのだ。
「今読んでいる予言の本を何年か後で読むと」
「思いきり外れているわね」
「そうでしょ、予言は後で言うものよ」
「後で当たっていたって」
「そうよ、後でわかるのよ」
まさにというのだ。
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