華やかと思ったら
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第一章
華やかと思ったら
その花屋は商店街の中でも評判だった、それは品揃えだけや花の状況だけでなく店員でもだった。
二人二十代の店員がいるが二人共女性でだ。
しかも美人でだ、近所でも評判になっていたのだ。
「両手に花だな」
「ああ、あの花屋さんな」
「あの店員さん達店長さんの姪らしいな」
「二人共か?」
「ああ、そうらしいな」
そうだというのだ。
「店長さんが雇ってるらしいんだよ」
「自分の姪御さん二人をか」
「そうなのか」
「そうらしいな」
実際にというのだ。
「これがな」
「二人共姉妹じゃないってな」
「従姉妹同士みたいだな」
「住んでるところが元々近所でな」
「幼稚園からずっと一緒らしいな」
「そうらしいな」
その二人のことも話された。
「高校卒業までな」
「それで卒業してから就職か」
「あの花屋さんに」
「そうなのか」
「そうらしいぜ」
こう話していた、従姉妹の年上の方の名前は稲葉早紀といい年下の方は土橋友希という。年齢は一つしか違わないという。
早紀は面長の顔で蒲鉾型の楚々とした感じのあどけなさが残る目に濃い細い眉を持っている。唇は奇麗なピンクで鼻の形がよく胸のところまで伸ばした黒髪から大きな胸が見える。すらりとしていて背は一六三位である。
友希は一四六位と小柄で可愛らしい愛嬌のある目といつも微笑んでいる赤めの唇に形のいい眉を持っている。鼻の形は中々いい。少し茶色がかった感じの黒髪を首の付け根まで伸ばしている。二人共いつもズボンにエプロン姿で真面目に明るく働いている。
二人共華やかでだ、それで彼等も言うのだ。
「どちらの人も美人だよな」
「花屋さんに相応しいか?」
「そうだよな」
「名花だよな」
美人ということだ、基本歌劇で使われる言葉だ。
「花屋さんの鼻だよな」
「まさにそれだな」
「美人過ぎて声かけられないな」
「そんな人達だよな」
「しかも礼儀正しくて明るくて気さくで」
「性格もいいよな」
こう話すのだった、そしてだった。
二人に興味を持っている者達のうちの一人、伊勢太志が高校のクラスメイト達に教室で話した。
「俺あそこでバイトしたいな」
「それでお二人とお近付きになりたい」
「そうだっていうのかよ」
「あの人達に」
「そう言うのか?」
「ああ」
実際にというのだ。
「そう思うんだけれどな」
「またかなり勇気あるな」
「その店に入るなんてな」
「見るだけじゃなくてか」
「そこからか」
「ああ、どちらかの人とな」
その野心も言うのだった。
「そう考えてるけれどな」
「おい、それはまたでかいな」
「どちらかの人ゲットか」
「稲葉さんか土橋さんか」
「どちらかの人をか」
「そう思ってるさ」
太志は強い声で言った、髪の毛はやや茶色に脱色していて前髪を伸ばしている。明るい切れ長の目で口元は涼し気だ。眉はかなり太く背は一七六位で均整の取れた身体つきである。部活はバスケ部だ。
「実際にな」
「すげえ高嶺の花だと思うがな」
「どっちの人もな」
「それでもチャレンジするか」
「そうするんだな」
「ああ、駄目でも元々だ」
失うものはないというのだ。
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