緋弾のアリア ~とある武偵の活動録~
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~a bird in the cage~
―何だこりゃ……?
「あ、あっくん来たね。それじゃ、食べよっか」
ぱちん。手を合わせて、
『いただきます!』
メニューがどこの中華料理店だ?ってくらい豪華だ。
カニチャーハンにエビチリ、酢豚やアワビのオイスターソース和えまであるぞ。満漢全席だな、これ。
俺はエビチリを一口箸でつまみ、ぱく。
…うん。美味しいな。
「ど…どう?2人とも」
「ああ。美味しいな」
と、キンジ。もうヒステリアモードは切れたらしい。
「美味しいよ。一流の中華料理店みたいだ 」
と言う俺の横には―腕組みしたアリアが、ヒク、ヒク、とこめかみを震わせている。
「ねぇ…………なんであたしの席には何も置いてないのかしらぁ?」
「アリアはこれ 」
急に絶対零度の声になった白雪が、ドン! 丼をアリアの目の前に置く。
「はぁ!?冷飯に割りばし突き立てるって……死にたいの!? 」
「逆に殺せるとお思いで?この幼児体型が」
キンジと俺は即座に指信号で、『避難』と送る。両者共に俺の部屋に戻り、ケータイのYouTubeを開くなり何なりして、現実逃避。この銃撃と斬撃が止むまでな。
…果たしてどうなる事やら。
―やっと銃撃斬撃の嵐が止んだそうなので……俺たちは、慎重にリビングへと戻る。
そーっと扉を開けると―あれ?予想以上に何も変わってない。もっと弾痕とかがいっぱいあると思ったんだが。
目をごしごし擦って再度見直すも、何も変わらない。いつも通りの部屋だ。
「白雪がやったんだよ」
小声で、キンジが教えてくれる。
「俺の部屋で暴れられた時も、後になったら痕跡1つ残さず片付いてた。……本当なら諜報科が向いてると思うんだがな」
と、苦笑いしながら教えてくれた。
俺とキンジはソファーに座り、俺はTVリモコンを取ろうとする―
「あ」
「うん?」
―が、同じくリモコンを取ろうとしていたアリアと手が被ってしまった。
「ちょっと彩斗。あたしは動物奇想天外2時間SPが見たいんだけど」
「あ、俺もだ」
「―お前ら、どんだけ気が合うんだよ……」
若干呆れたような、驚いたような、キンジの声。
「「パートナーだし?」」
「うぜぇ……」
見たかキンジ。これがパートナーの力だ!
そんな出来事があり、動物奇想天外を見ている途中。
「ねぇねぇ皆。巫女占札っていうのがあるんだけど……やる?」
どこからともなく、白雪が出てきた。
お前、今までどこに?
「みこせん…占いか?」
と、キンジが言う。
「そう。何か占いたいことってある?将来とか、仕事運、恋愛運とか」
ふーん。何でも占えそうだなぁ…その巫女占札っての。
「キンジ、やってみれば?」
と、アリア。
「あー…じゃあ、俺の将来を占ってみてくれ」
「ちっ…」
…あれ?また舌打ちが(ry
「うん、分かった!やってみます」
パアッと明るい笑顔になった白雪が、卓上に札を並べる。形はタロット占いに似てるな。
「―……」
占い終わったらしい白雪。だが…その顔が―深刻そうだ。
「…白雪、どうした?」
その様子を見て、少し心配になったのか―キンジが、真剣な顔で聞く。
「……ううん、何でもない。総運、幸運です」
それだけか。もっと詳しい結果は?
「ねぇねぇ、次はあたし占って?因みに、乙女座だけど」
アリアが、テーブルに乗り出して言う。
「ふーん。似合わないね」
「何ですって!?」
これ以上はケンカになりそうだから、強引に止める。
「お前ら、占い1つ平和に出来ないのか?」
ベレッタ・DEをそれぞれに向けながら俺は言う。
「むぅ…………」
俺は銃をホルスターに収め、アリアはふて腐れつつソファーに座る。白雪は、ぺらっと札を捲り―
「総運、ろくでもないの一言に尽きます」
明らかに占ってないだろ、それ。
「ちょっと!ちゃんと占いなさいよ!」
「何?私の占いに文句言うのは許さないよ」
あーもう……と、俺が2人を再度止めようとした矢先。
「お前ら、占い1つ平和に出来ないのかっ!?」
キンジがさっきの俺と同じ言葉で、2人を制した。
「ふーんだ!」
アリアは白雪に向かってあかんべーし、そのまま走って自室に籠ってしまった。
「…悪口は言いたくないけどさ、アリアって可愛いけどうるさいよね。回りの空気読めないし。男子は皆アリアをカワイイって言うけど―私はキライ」
「……なぁ。白雪」
突然にキンジが口を開いた。
「何?キンちゃん」
「―お前、本当にアリアのことがキライか?」
……どういう事だ?
「ほら、彩斗。お前も分かってるかもしれんが、白雪は結構アリアに対しては物事ハッキリ言うだろ?俺たちにはキョドるが。まあ…何が言いたいかってーと、俺は白雪がこんなに感情を露にしてるのは見たことない気がするんだ。いつもの大人しい白雪とは別に、アリアに対する白雪の方が本音を出してるって感じがして……な」
「なるほどね。分かりやすくすると、どこかとある1面では噛み合ってるんじゃないか?ってことだろ」
「まあ、そういうことだ。…白雪、分かったか?」
無言で、こくり。
「キンちゃんは……本当に私のこと、分かってくれてるね」
「まぁ、小さい頃から一緒にいたからな。そのくらいは分かるさ」
……あれ、何この雰囲気。邪魔しちゃ悪いかな?
と思った俺は、静かに立ち上がりリビングを抜けて自室へと戻ったのである。
~キンジside~
「……なぁ。白雪」
「何?キンちゃん」
「―お前、本当にアリアのことがキライか?」
「えっ?」
白雪は、少し面食らった顔をした。
「ほら、彩斗。お前も分かってるかもしれんが、白雪は結構アリアに対しては物事ハッキリ言うだろ?俺たちにはキョドるが。まあ…何が言いたいかってーと、俺は白雪がこんなに感情を露にしてるのは見たことない気がするんだ。いつもの大人しい白雪とは別に、アリアに対する白雪の方が本音を出してるって感じがして……な」
「なるほどね。分かりやすくすると、どこかとある1面では噛み合ってるんじゃないか?ってことだろ」
物分かり良すぎだろ。コイツ。
「まあ、そういうことだ。…白雪、分かったか?」
無言で、こくり。
白雪は原則、人の言うことを良く聞く子だ。それは良いこと―という風になってる……が、その従順な性格には欠点もある。性格故に、そこには白雪の意志が無いのだから。……それでも、白雪はアリアに対しては本音で当たってる気がするのだ。
「キンちゃんは……本当に私のこと、分かってくれてるね」
「まぁ、小さい頃から一緒にいたからな。途中ブランクはあったが」
「きっと私以上に私のことが分かってる」
さっきより穏やかな声になった白雪が、ちょっと座り直すようにして―そっと、近付いてきた。
「アリアは……私とキンちゃんの世界に、真っ直ぐ踏み込んで来た。まるで銃弾みたいに」
そんな世界あったっけ。
……まぁ、ここは話の腰を折らないようにツッコまずにいておくか。
「そして私の全力を受けても、1歩も退かなかった。そこはある意味では凄いと思ってるよ」
全面的にはキライだが、複雑な感情を抱いてるって感じか。
「だから……アリアにキンちゃんを取られるかもしれないって思うと、何か怖くなってきて…………」
「取る取られる以前に、アリアは彩斗のパートナーだろ。だから俺がアリアに取られることは、無い…と、思う。…多分な。それに、幼なじみと武偵のパートナーは違うだろ」
「幼なじみ……そうだよねっ!」
ぱぁっと顔を明るくした白雪は、嬉しそうにぴょんぴょん飛びはね―自室に戻っていった。
……『かごのとり』―か。
青森に兄さんの仕事の都合で暮らしていた時、星伽の小さな巫女達をそう哀れむように呼んでいた。何だったんだろうな。その理由は。
~Please to the next time!
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