べとべとさん
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第一章
べとべとさん
財前奈津美と結月の姉妹は同じ八条高校に大阪の旭区の自宅から通っている、姉妹仲はいいことで知られている。
奈津美は父譲りの薄茶色の髪を後ろで団子にしている。髪の左右の部分は伸ばしていてラフな感じにしている。二重のやや切れ長の大きな目を持っていて眉は薄い。スタイルはよく胸が特に目立つ。
妹の結月は姉よりかは幾分胸は小さいが母親譲りの黒のロングヘアが見事で生真面目な感じの吊り目が印象的な整った感じがしている。二人は美人姉妹としても評判だ。
だがその美人姉妹が今ある男の部屋の中で不機嫌な顔をして作業をしていた、二人でその作業をしつつ大柄でどうにもむさ苦しい外見の男に言っていた。
「叔父さん、何で年末いつもこうなの?」
「どうして仕事が多いんですか?」
二人で叔父の財前修に言っていた、彼の丸くあちこちに無精髭のある顔を見ながら。修は自分の席で必死に何かを描いている。
「年末になりますと」
「こんなのよね」
「いや、仕方ないんだよ」
その修がそれぞれの机で色々描いたりしている二人に申し訳ない顔で答えた。
「この時期はね」
「普通の雑誌の連載とコミケで?」
「あとライトノベルのイラストで」
「あと十八禁の雑誌の方もよね」
「そっちは叔父さんだけで描いてますね」
「何で二人共そっちの仕事知ってるの?」
修は二人のその突っ込みに聞き返した。
「表とは別のペンネームなのに」
「いや、絵柄見てわかるから」
「ネットで同一人物って判明してますよ」
「しかも叔父さん否定しないし」
「わからない筈がないです」
姉妹で自分の叔父に冷たく突っ込みを入れた。
「私達も知ってますから」
「そっちの仕事もね」
「そっちの仕事は兄貴と義姉さんには内緒にしておいてね」
修は年末臨時でアシスタントを頼んでいる姪達に言った。
「くれぐれもね」
「ええ、その代わりバイト料弾んでね」
「去年の一割増しでお願いします」
「今回も私達手伝ってあげてるんだから」
「部活がない間に」
「わかってるよ、本当に年末進行で忙しいからね」
とにかくと返した修だった。
「今年もお願いするよ」
「全く、漫画家も大変ね」
奈津美は叔父の同人誌の手伝いをしつつ言った。
「毎月の締め切りはあるし」
「あとサイトのイラストも更新しないといけないですね」
「そっちはもうやったよ」
修は結月に答えた。
「もうね」
「そうですか」
「だって単行本の告知もあるから」
それでというのだ。
「宣伝の為にもね」
「お疲れ様です」
「有り難う、しかし本当に年末は助かるよ」
姪達、自分の兄の子達を拝む様な感じの言葉だった。
「普段は僕一人でも大丈夫だけれどコミケの同人誌にイラストの依頼とかが集中的に重なるんだよね」
「というか叔父さん仕事入れ過ぎなんじゃないの?」
奈津美は身も蓋もない突っ込みを入れた。
「そもそも」
「いや、稼げる時に稼がないとね」
「漫画家ってそうなの」
「そう、だからね」
「もう三十なのに結婚もしないで」
今年四十の兄とは十歳離れている兄弟だ。
「それでなの」
「結婚のことは置いておいてね」
「そうなの」
「ちゃんと自炊して栄養バランスも考えてるから」
そうして食事を摂っているというのだ。
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