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不良に串カツ

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第三章

「たったそれだけでか」
「俺はそれだけだぜ、けれどな」
「それで充分だったのかい」
「ああ、俺も他の戦士達もな」
「皆か」
「やっぱり背負うものがあって背負うからにはな」
「ちゃんとしないと駄目か」
「そう思ってるからな」
 それでというのだ。
「俺だってな」
「真剣にか」
「生きてるしそれをああした連中に見せるとな」
「いいってか」
「前もこうしたことがあったんだよ」
 串勝は店にいる客達の串カツをその素早い動きで揚げつつ話した。
「不良の連中がいてな」
「そいつ等を更生させたんだな」
「こういうのは結局な」
「あれこれ言わずにか」
「見せればいいんだよ」
 そうすればというのだ。
「串カツ食わせてな」
「それからか」
「そうすればいいんだよ、それでな」
「あんたの行いを見せたんだな」
「そうさ、じゃあな」
「ああ、これからもだな」
「串カツ焼くぜ。追加は何がいいんだい?」
「海老いけるかい?」
 客は笑って串勝に答えた。
「それと帆立な」
「二本ずつだな」
「ああ、それだけ貰えるかい?」
「わかった、じゃあすぐに揚げるな」
「宜しく頼むぜ」
「不良は背中を見せるのがいいんだよ」
 またこうしたことを言った串勝だった。
「健全で恰好いいものをな」
「本当の恰好よさか」
「戦士の、串カツ屋のそれをな」
「そういうことか、じゃあいいことを教えてもらったからな」
 客は串勝の言葉に笑顔で応えた。
「蛸と烏賊も追加していいか」
「わかった、じゃあそっちもな」
「ビールも貰うな」
 客は笑ってこちらも注文した、そうして串勝の串カツを楽しんだ。それはまさに世界一の串カツだった。


不良に串カツ   完


                  2017・12・26 
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