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流麗なる者

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第四章

 周りの者達は調べた結果洋妃に噂を流す様に言われてはいたし実際にそうした、しかし公主を殺したのは誰か結局はわからなかった。
 しかし宋からことの次第を聞いてだ、皇帝は言った。
「何もなくてはな」
「洋妃様もですな」
「自ら命を絶つこともなかった」
「調べの場において」
「自らの潔白を強く言っていたであろう」
「あの方なら」
 宋もこう述べた。
「そうされていましたな」
「あの者なら」
「ならばです」
「やはり洋妃が殺したのであろう」 
 幼い公主をというのだ。
「そうしたのであろう」
「皇后様と藍妃様を陥れる為に」
「我が子を殺してまでか」
「そうでもしてです」
「己の座をより高い場所に持って行きたかったか」
「そうだったかと」
「恐ろしいな、しかしな」
 ここでだ、皇帝は宋に言うのだった。
「若しそなたがいなければだ」
「この度にことはですか」
「はっきりとはわからなかった」
 ことの真実、それがというのだ。
「到底な、そしてな」
「皇后様と藍妃様が」
「朕は遠ざけておった」
「そして遠ざけたならです」
「洋妃はさらに手を打っていたな」
「そうした方ですから」 
 己の権勢の為に我が子を殺す様な者だからというのだ、宋は洋妃に対して只ならぬものを感じつつ皇帝に話した。
「お二方を今度は」
「命を奪う様なか」
「策を用いられていたでしょう」
「そうしておったか」
「毒を用いることもありますし」
 宋がまず思ったのはこれだった。
「他にも手はあります」
「悪謀の類はか」
「それこそ幾らでも」
「だからか」
「はい、ですから」
「ここで止めていて何よりであったか」
「それがしもそう思います」
 洋妃が今以上に力を持ち宋もどうにも出来なくなっていたのではないかというのだ。
「危ういところでした」
「まことにそうであったな」
「しかしここで、です」
「止められた、何よりじゃ」
「全く以て」
「後宮にそなたがいてよかった」
「実はそれがしはです」
 ここで宋は皇帝に己のことを話した。
「宦官を志したのは」
「こうしたことを考えてか」
「後宮こそは国の要所ですから」
「そこに何かあればだな」
「この度の様に一大事ですから」
「宦官を志したか」
「幼い時より、そしてです」
 宋は皇帝にさらに話した。
「家の者達を説得したのです」
「そして宦官になったのじゃな」
「そのうえで今ここにおります」
「成程な、そこまでして国のことを考えておるとは」
 皇帝は宋の言葉と考えを聞いてしみじみとした口調になり言った。
「見事、そなたこそまことの忠臣いや良臣である」
「有り難きお言葉」
「褒美を弾む、これからも国に尽くしてくれ」
 皇帝は宋ににこりと笑って告げた、そうして宋はこの時からこの世を去るまで後宮つまり国の要所を護り続けた。宦官将軍という非常に珍しい立場から。


流麗なる者   完


                 2017・12・22 
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