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変わらない味

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第二章

「僕はその頃から美食家でや」
「ここに来てたんやね」
「そや、面白いわ」
「そうなんやね」
「ああ、明日はまた別のお店に行ってな」
「食べるんやね」
「そうするわ、明日は明日でな」
 こう子供に言ってだった、作之助は家に帰ってまた執筆にかかった。大阪の平和を乱す者がいれば彼等とも戦い。
 その中でお好み焼き屋でお好み焼きを食べている彼に客の一人がこんなことを聞いた。
「ちょっとええか?」
「どないした?」
 作之助はその客にすぐに応えた。
「財布落としたか」
「ちゃうちゃう、お金は持ってるわ」
「そうなんか」
「そや、ちょっと作之助さんに聞きに来たんや」
「次回作のことかいな」
「それは読んでのお楽しみにしとくわ」
 それはという返事だった。
「またちゃうわ」
「ほな何や」
「作之助さん美食家って言うてるな」
「ああ、こうして今もな」 
 いか玉をサイダーと共に楽しみつつだ、作之助は答えた。
「楽しんでるわ」
「お好み焼きをか」
「そや、こうしてな」
「そうやな、けどあんたな」
 客は作之助にさらに問うた。
「別に高いもんは食うてへんな」
「高級なもんはか」
「料亭とか最高級のレストランとかな」
 そうした場所に入ってというのだ。
「食べてへんな」
「ああ、そういうお店はな」
「行ってへんな」
「僕はそうした店は入らんねん」 
 作之助は客にはっきりと答えた。
「最初に生きてた頃からな」
「そういえば」
「作品の登場人物でもやろ」
「そやな、夫婦善哉のな」
「柳吉もやろ」
「あれはあんたか」
「それは想像に任せるわ」
 作之助は笑ってこのことについてははっきり答えなかった。
「あんたのな」
「そうなんか」
「ああ、けどな」
「それでもか」
「僕は昔からや」
「高級なお店には行かんか」
「そうや、別にええとこのボンボンでもないしな」
 自分の生まれのことも話した。
「そうしたもんは食べて慣れてない」
「それでか」
「食べてへんわ」
 そうしているというのだ。
「最初に生きてた時も今もな」
「そうなんか」
「それが僕や」
「美食家のか」
「美食家いうてもや」
 それでもというのだった。
「別に高いもんばかりやないやろ」
「それはな」
「美味しいものを食うのがやろ」
「美食家やな」
「それでや」
 作之助は客に話した。 
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