調子の秘密
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第二章
「眞鍋君の調子が悪い時に大事な仕事を任せるとね」
「普段みたいにだね」
「遅いってこともあるから。エースはうちはまだいるし」
「事務課は人材豊富みたいだね」
「お陰でね、控え選手はいないよ」
笑ってこうも言った事務課長だった。
「それでエースの一人の調子はね」
「把握しておきたいってことだね」
「そういうことだよ、一体どうして極端に調子が悪い日があるのか」
香澄にだ。
「そのことをわかっておきたいよ」
「そこをわかってやっていくのも中間管理職だからね」
「どうしてなのかな」
首を傾げさせつつだ、事務課長はビールを飲みつつ考えた。そうして香澄のことを見ているとだった。
休日明けの月曜日は調子が悪い日が多い、だが火曜からはいつもの調子に戻る。香澄は日曜は交際相手とよく遊びに行くと休憩時間に同僚達に笑顔で話していた。
そう聞いてだ、事務課長は思った。それで人事課長と二人で大学の一室で書類整理をしている時にこんなことを言った。
「ひょっとしてうちの眞鍋君は」
「何かわかったのかい?」
「うん、疲れているとね」
その時はというのだ。
「日曜日に交際相手の彼と遊んでね」
「それで次の日はだね」
「月曜日にはね」
「疲れていてだね」
「調子が落ちるのかな」
こう思うのだった。
「そうなのかな」
「疲れているとだね」
「それが出てね」
そうしてというのだ。
「仕事の能率が極端に落ちるタイプかな」
「そうした子はいるね」
人事課長は特に人事を預かっているのでそうしたことはよくわかった、人のそれぞれのタイプというものがだ。
「疲れていない時は普通でもね」
「疲れるとだね」
「調子が極端に落ちる子がね」
「じゃあ眞鍋君は」
「そちらだろうね」
まさにというのだ。
「タイプとして」
「そうだったんだ」
「だからね」
「疲れている時はだね」
「特に月曜はね」
その日はというのだ。
「あまり重要な、それも急な仕事はね」
「回さない方がいいだろうね」
「そうだね、それにね」
「疲れはわかるね」
「うん、顔に出たりするからね」
このことは事務課長もわかることだ。
「どうしてもね」
「そうだね、ならね」
「それを見てだね」
「やっていくといいよ」
香澄にどういった仕事を任せるか決めることをというのだ。
「そうしたらいいよ」
「そうだね、しかしね」
「しかし?」
「いや、こうしたことはね」
どうにもという顔で言うのだった、書類を二人で的確に整理をしつつ。
「実際によく見てわかるね」
「そうだね、そしてわかればね」
「それを活かしていくべきだね」
「是非ね」
人事課長もこう言った。
「さもないとね」
「それぞれの課を預かる意味がないね」
「そうだよ、課長は伊達か」
同期にだ、人事課長は聞いてきた。
「それはどうかな」
「勿論違うさ」
事務課長は笑って返した。
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