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真剣で納豆な松永兄妹

作者:葛根
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第九章 休日の過ごし方



「休みの日まで学生服とはね」
「義経達は決闘があるからな。制服の方が相手に分かりやすいのだ」

休日の午前は学校で決闘。
午後もどこかしらで決闘があるらしい。
休日の学校は学食は休みで、更に今日は弁当を持ってきておらず学校近場の店で昼食を取ろうとしたところで俺に声をかけられた。
ついでと言えばついでだが、源義経と昼食をとった。

「義経と仲良くしてもらってありがとう」
「出来れば那須与一君とも仲良くしたいが、どうも距離を置かれていてね」

話してわかったが、彼は重度の中二病だ。
コミュニケーションを取りづらいが、恐らく中二病の振りをすれば話はしやすいだろうが、自分に精神的なダメージが大きい。

「アレは病気だね。まあ、その内治ると思うけど。敢えて距離を置くのも手だね」
「そうか……。与一にも仲良くできる友人が沢山できると良いのだけど」

源義経の悩みを聞きつつ、話をした。
源義経は那須与一を気にかけている。
しかし、中二病の治療法は今の所ない。時間が経てば勝手に治る。
そう言うものだ。

「むぅ。そうか。時が解決してくれるのか。思春期特有の男の子がかかるはしかのようなもの、か。確かクラスメイトにも同じ事を言われたな」
「そうそう。強引に治すよりは、病状を知って対応してあげると良いと思うよ」

将来それが最大の汚点になるが。



昼食後、用事がある源義経と別れた。
たぶん、世話焼きの先輩くらいには覚えられたと思う。
ふらりと商店街を歩く。
書店で、見慣れた姿の葉桜清楚がいた。

「清楚なにしてるの?」
「あ、久秀君。ちょっと本をね」

個人店の書店から出てきた葉桜清楚に出会った。
なんだ?
武士道プランの女の子と縁があるらしい。

「本が好きだね。図書館にはいった?」
「これから行くよ。でも珍しい本屋さんがあったからつい立ち寄っちゃった」

何で制服なのだろうか。
私服とかないのか?
それとも趣味?

「あ、制服なのは学割が効くからね。色々と便利だよ?」
「学割かー。お小遣いとかどうなってるの? 九鬼財閥から支給されるの?」
「うん。月々5000円は自由に使えるかなー」

行くアテも特にないので葉桜清楚についていく。

「久秀君はどうしたの?」
「まだ転校してきて間もないから散策かな。図書館まで付いて行ってもいいか? 大体の場所はわかるが行ったことがない」
「良いよ」

図書館に向かう道中で色々と話してみた。
文学少女という印象は相変わらずだ。
経済の本の話やら、ライトノベルの話やらをしつつ図書館に着いた。

「久秀君も結構本読むんだ」
「まあね。清楚だってかなりの量を読んでるね」

その後、図書館で図書カードを作り、閉館まで葉桜清楚に付き合った。

「じゃ、また明日」
「うん。またね。それと、また遊んでね」

アレが遊びと言えるかどうかは分らないが、了承した。



時間が経つのは早い。
もう夕方か。

「うむ。図書館で休んだおかげでそこそこ馴染んできた」

体感的には朝よりマシになってきている。
しかし、完全に慣れるまでに一ヶ月はかかると思うぞ。

「見かけた顔だと思ったら男の方の松永先輩じゃないか」
「弁慶……」

本当に今日は武士道プランの女の子と縁がある。

「どうしたこんなところで?」
「夜の川神水のアテを探しに」

ツマミ探しかよ。休日も飲んでるんだな。

「それならあそこの店が美味いらしい」

熊飼満、最近じゃクマちゃんと呼んでいる食通の友達だ。
そのクマちゃんが美味いと教えてもらった店である。

「ほう。ならば買うか……。あと奢ってくれ」

だるーんと俺に絡みついてきた。
むにむにとした感触……これは胸!
こいつ、小悪魔だ。
くせっ毛の髪からは女の子らしく良い香りがする。

「はっはー。先輩らしく買ってやろう」
「へへへ、ありがたい」

奢らされたが後悔は全くない。

「松永先輩は強いはずなのに、今日は随分と弱々しく感じるな」
「昨日の水上体育祭の疲れが残ってるんだな」

目聡く気付くか。
武蔵坊弁慶。普段のやる気のないような態度とは別で武人としては一流である。

「私達と戦うつもりがあるのだろう?」

名を挙げるにはそれもあるだろうが、今のところ先客がある。

「今んとこないね。先に倒さないといけない相手がいるもので」
「それは残念。どちらの松永先輩も戦うと面白そうだ。いずれ機会があれば手合わせしても良いよ」
「本気を出されると相当強い癖に軟弱な俺を買い被るなよ? 普通に負けるぞ」
「はは、どうだが」

買ってやったツマミを渡すと、弁慶はすっと離れた。
現金な奴め。

「では。ありがたくツマミを頂いて帰るとする。美味い川神水の為に」
「じゃあ、また明日な。飲み過ぎるなよ。身体を壊すぞ」
「ああ、程々に飲むとしておく」

ダメだろうな。
そう言うヤツだ。
弁慶は歩く。帰るつもりだろう。
だが、

「よっ、と。何のつもりだ? いきなり攻撃とは卑怯な……」
「なぁに。お礼のつもり。弱々しくなってるけど、鈍っているわけじゃないってね」

不意の杓丈の一振りを避けた。
だが、いつも以上にギリギリだった。

「今度やったらおっぱい揉むからな」
「松永先輩。やれるものならやってみな。私はそんなに安くないよ」
「奢ってやった時のアレは?」
「……帰ろう」
「おい! あの絡みつきは? ツマミの値段で言えば1000円もしないのに胸を当ててたよな?!」

俺の追求を無視して弁慶は帰っていった。
都合の悪い事は聞こえないらしい。



運命の赤い糸
偶然の出会い
配点:(縁がある)




 
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