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DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)

作者:あちゃ
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第十一話:手向けの花は炎の様に

 
前書き
メリークリスマス。
時事ネタ皆無のリュカ伝3.8です。
でもミニスカサンタコスのゼシカを想像して書きました。
作品には一切繁栄されてませんけどね。 

 
(リーザスの塔)
ゼシカSIDE

兄様を亡き者にした盗賊を、差し違えても討伐しようと心に誓い、勢い任せに家を出たのは良いのだけれど、兄様が亡くなった場所へ赴くにあたり、花を供えるくらいはするべきだと考え、生前兄様が好んでた野百合を沢山摘みに、リーザスの塔とは逆方向の丘へと足を向ける。

兄様の事を思い出しながら野百合を摘むと、視界は涙でぼやけてしまい、その都度手が止まってしまう……
それでも満足のいく量を束にして、本来の目的地であるリーザスの塔へ急ぎ向かった。

あのサーベルト兄様ですら勝てなかった相手だ……
多分私だけでは太刀打ち出来ないかもしれない。
でも……何もせずには居られない。
そんな思いで家を出たのだが……

何とリーザスの塔の最上階には、既に先客が来ていた。
間違いない……コイツ等が兄様を亡き者にした盗賊共だ!
そう思ったら私の怒りは頂点に達しており、無意識に花束を落としていた。

リーザス像を眺めてた盗賊共は、花束が落ちた音に気が付き、私の方へと視線を向ける。
人数は三人……一人はチビで筋肉ダルマな見るからに盗賊な風貌。もう一人は赤いバンダナを巻いており盗賊には見えない。更にもう一人も盗賊には見えず、生誕な顔立ちの金髪男。

「あ、ちょうど「やっぱり現れたわね盗賊共!」
私に気付いた盗賊のリーダー(金髪)が、何かを話しかけようとしてきたが、私はそれを無視。
「え!? ち、違「問答無用。メラ!!」
一人でも多くの盗賊を倒しかった私は、不意打ちでメラを浴びせた。

「危ね!」(げし!)(どん!)
しかし私のメラは盗賊には当たらず、その後ろのリーザス像へと直撃。
何と盗賊のリーダー(金髪)が、物凄い反射神経で筋肉ダルマを蹴り私のメラから逃れさせると、蹴った勢いを使って赤バンダナを押し倒して危機を脱する。

サーベルト兄様を亡き者にしただけはあり、やはり強い……
だが私の初手を逃れた事によって、盗賊の陣形にも乱れが生じてる。
凄腕のリーダー(金髪)は赤バンダナと共に飛び避けた為、筋肉ダルマが一人で孤立……

「メラ!」
一人でも多く倒そうと心に誓い、私は孤立してる筋肉ダルマに目掛け、更なるメラを発動させた。
これが決まれば二対一……三対一よりかは勝算が上がっただろう。

「ヒャド」(バシャン!)
一瞬の事だった……私のメラが筋肉ダルマに直撃する瞬間、真横から飛んできたヒャドによってメラが相殺された!

誰が放ったのか慌てて視線を移すと……
何とリーダー(金髪)が左手を翳し立っていた。
こ、この男……魔法も使えるのか!? しかも何て腕前だ……正面から相殺するのなら私にでも出来なくは無いだろうが、真横から高速で動くメラに当てるのは至難の業だ。

だが盗賊の陣形が乱れているのは変わりなく、もう一度筋肉ダルマを倒すべく、最大級のメラを発動させようとした瞬間……
「マホトーン」

「……」
何とマホトーンで魔法を封じられてしまった!
拙い……このままでは盗賊を一人も倒す事が出来ず、兄様の無念を晴らす事も夢と消える。

だけど、唯やられる訳にはいかない私は、腰に装備しておいた茨のムチを取り出し、一矢報いる準備をする。
「落ち着け、お嬢ちゃん。俺達は盗賊じゃないし、アンタの兄貴を殺してもいない」

「ふざけないで……盗賊の言葉を鵜呑みにすると思ってるの!?」
「だから盗賊じゃねぇって言ってんだろ。頭の悪いネーちゃんだな! 乳にばかりじゃなく、頭にも栄養を回せよ!」
ム、ムカつく男ね!

『待て、ゼシカ……』
リーダー(金髪)の言葉にムカッ腹を立てると、突然聞き覚えのある声が聞こえてきた……
「に、兄様?」
そう……死んだはずのサーベルト兄様の声だ!

『この方々は私を殺した者ではない』
見ると、私が最初に放ったメラで炎上してるリーザス像から、死んだはずのサーベルト兄様の声が響いてくる。
私は持っていたムチを手から落とすと、慌ててリーザス像へと駆け寄った。

「サーベルト兄様! 本当にサーベルト兄様なの!?」
『ああ本当だとも……それよりも聞いてくれゼシカ。そこに居る旅の方々も……』
リーザス像から聞こえる兄様の声は、何かを伝えたくて焦っている様に聞こえた。

『死の瞬間……リーザス像は我が魂の欠片を預かってくださった……この声も、その魂の欠片の力で放っている……だからもう時間が無い……』
つまり兄様は何かを伝え終われば消えてしまうと言う事!?

『像の瞳を見てくれ……そこに真実が刻まれている……さあ急ぐんだ……あの日、塔の扉が開いていた事を不審に思った私は、一人でこの塔の様子を見に来た……そして』
そこまで聞こえると、突然頭の中に映像が映し出され、死ぬ前の兄様の姿が映っていた。

完全武装の兄様は、塔の最上階(この場所)に辿り着くと周囲を警戒している。
しかし一瞬後ろを振り返ると、リーザス像の手前に見慣れない男が立っていた。
兄様は、その男を見るや『だ、誰だ……貴様は!?』と剣へ手を伸ばし威嚇。

『悲しいなあ……』
正体不明の男は不気味な道化師の格好をし、意味不明な言葉を呟く。
『な、なんだと!? 質問に答えろ! 貴様は誰だ。ここで何をしている!?』
しかし怯まない兄様は、道化師に再度詰問を浴びせる。

『くっくっくっ……我が名はドルマゲス。ここで人生の儚さについて考えていた』
『ふざけるな!』
ドルマゲスと名乗る道化師のふざけた態度に激怒した兄様は、一喝と共に剣を抜こうとした……だが抜けない。

『くっ……どうしたことだ? け、剣が……抜けん!?』
『悲しいなあ……君のその勇ましさに触れるほど、私は悲しくなる』
ドルマゲスはそう言うと、持っていた杖を兄様に向けて翳した。

『ぐわっ! き、貴様……何をした? か、身体が……動かん!』
どうやらドルマゲスに何かをされ兄様は身動きがとれなくなっている様だ。
そんな兄様に近付くドルマゲス……止めて!

『おのれ……ドルマゲスと言ったな。その名前、決して忘れ』
『ほう……私の名前を忘れずに居てくれるというのか。何と喜ばしい事だろう。私こそ忘れはしない。君の名は、たった今より我が魂に永遠に焼き付く事になる。さぁもうこれ以上私を悲しませないでおくれ……』

『くぅっ! き、貴様ぁぁぁあっ!!』
次の瞬間、ドルマゲスは兄様を抱き寄せる様にして、持っていた杖で身体を貫いた!
こ、こんな……み、見たくなかった……兄様の最後なんて……
それでも兄様は最後までドルマゲスを睨み続けてた……

『君との出会い……語らい……その全てを我が人生の誇りと思おう。 ……君の死、無駄にはしないよ』
ドルマゲスは息絶えた兄様に呟くと、一転して立ち上がり狂った様に笑い出した。
その手には不気味に光る杖が……一体、コイツは何者なのか!?

『旅の方よ……リーザス像の記憶、見届けてくれたか』
気が付くと頭の中の映像は終わっており、私の周囲には先程戦った盗賊だと思っていた連中も集まっている。多分、彼等にも見えたのだろう……先程の映像が。

『私にも何故だかは解らぬ。だがリーザス像は其方等が来るのを待っていた様だ……願わくば、このリーザス像の記憶が其方等の旅の助けになれば……私も報われる……』
兄様の言葉を聞き連中を見ると、先程の映像が助けになってるかの様に頷き合っている。

『ゼシカよ……これで我が魂の欠片も役目を終えた。お別れだ……』
「いやぁ! 如何すれば良いの!? お願い逝かないでよ兄様……」
折角また声を聞けたのに……お別れなんて嫌っ!

『ゼシカ……最後にこれだけは伝えたかった……この先も母さんはお前に手を焼く事だろう。だがそれで良い……お前は自分の信じた道を進め……さよならだ、ゼシカ』
そこまで言うと、リーザス像の炎が消え、兄様の気配も感じられなくなった。

私は思わずその場に崩れ落ちる……
両目から溢れる涙を両手で押さえ込む様に……
でも止まる事は無い……

「ふーむ……何たる事じゃ。あのサーベルトとやらを殺した奴め……間違いなくドルマゲスじゃ!」
「オ、オッサン…! 何時の間に!?」
何やら緑の魔物が現れ、先程の映像の事を語り出した。先程まで居なかったので、筋肉ダルマが驚いている。

「この娘さんが一人で塔の中に入っていったから、心配になって後を付けたのじゃ……だがそんな事より、何故だか解らんがサーベルトとやらもまた、ワシ等にドルマゲスを倒せといているようじゃ。ふむ……彼の想い……決して無駄には出来んな! これでまた一つ、ドルマゲスを追う理由が増えたと言う事じゃ」

ドルマゲスを追う……ドルマゲスを倒す!?
そうよ……兄様の敵は分かった。
彼等がドルマゲスを追うのなら、私も一緒に追う。そして倒すのよ!

「それじゃワシは馬車で待っておるぞ」
「何だあのオッサン? アイツがこの嬢ちゃんを心配して後を付けた所で、何の戦力にもならないだろうに?」
緑の魔物がこの場から居なくなると、リーダー(金髪)が不貞不貞しい態度で先刻(さっき)の緑を貶し出す。

「さて、お嬢ちゃん……流石に俺等が盗賊じゃない事は解ったよね?」
「ええ、ゴメンなさい……先刻(さっき)の事は後でちゃんと謝るわ……でも今はお願い、一人にしてほしいの」
涙でボロボロの顔を見られたくない私は、話しかけられても顔を上げる事なく会話を続けた。

「……解った。俺等は先にリーザスの村へ帰るけど、嬢ちゃんも気を付けるんだぞ」
私の勘違いで一方的に攻撃したのに、私の身を心配してくれるリーダー(金髪)等。
本当に後で謝らなければ……





リーダー(金髪)等も居なくなり、一人リーザス像の前で泣いていたが、そろそろ帰らなければ拙いだろうと思い、お腹に力を入れて立ち上がる。
すると塔の外から、先刻(さっき)の連中の声が聞こえてきた。

「アハト君等は先に帰っててよ」
「ウルフさんは帰らないんですか?」
先刻(さっき)の連中が丁度塔の出口に着いたのだろう。今後の行動を話し合っている……

「俺は先刻(さっき)の嬢ちゃんを待つよ」
「やっぱり一人で帰らせるのは心配ですか?」
あれだけ一方的に攻撃されてても、私の事を心配してくれている……

「心配つーかさぁ……おっぱいデカかったじゃん」
胸? 胸の大きさが何だって言うの?
「胸が大きいと心配なんですか? 意味が解らないんですけど……」

「いや心配なんじゃなくて、悲しみに暮れてる女性って落としやすいんだよね。口説くなら今じゃねーかなって」
「……最低な思考回路ですね。親族を失って悲しんでる女性を、胸が大きくて好みだからって口説こうと考えてるんですか?」
サイテーだ……あの金髪、心底最低だ!

「まぁ良いから行けよ、お前等は。貧乳好きには関係ないだろ!」
「はぁ~……行きますよ。でもリュリュさんに言い付けてやりますから! またグチグチと文句を言われるが良いです」
リュリュ? あの金髪の彼女かしら……

「言えば良いさ。このテクニックは、あの女の親父から教わったんだからな!」
「やれやれ……」
如何やら金髪以外は村へ帰った様で、また静寂がリーザスの塔を包み込む。

先程の会話を聞いてしまった私は、口説かれまいと意を決して塔を降りる。
出口に到着すると、壁により掛かる様に金髪が立っており、私の姿を見付けると表情を変えずに手を上げた。
まぁ理由は如何有れ、先程失礼をした相手だし、軽く会釈だけはしておく。

だが私は金髪の前で止まる事なく、村への道を大股で歩き出す。
金髪もその事には何も言わず、私の歩調に合わせて歩き出した。
さぁ何時でも口説いてみろ……鼻であしらってやるわ。

「本当は口説かないから、そんなに警戒しなくても良いよ」
だが金髪からは、思っても居ない言葉が出てきた。
口説かないのに、何で私の事を待ってたのよ!?

先刻(さっき)の会話……君に聞こえる様にワザと大声で言ってたんだ。あれを聞いて、少しは悲しみから奮起出来たろ? 完全には癒えないけども、村へ帰る為の勢いくらいは得られたろ?」
……た、確かに先刻(さっき)の会話を聞いて、一瞬だけども悲しみを忘れる事が出来た。

な、何よ……ちょっとは格好いいじゃない。

ゼシカSIDE END



 
 

 
後書き
年内最後の更新。
可能なら1/1に更新したい。
抗がん剤次第…… 
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