銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第四十八話 ワイン飲み逃げ
料金を踏み倒して逃げました。
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第四十八話 ワイン飲み逃げ
宇宙暦788年 帝国暦479年6月21日
6月20日銀河帝国国営放送で驚くべき放送が流された。
今回の皇帝陛下の俘虜に対する御心と救恤品下賜、
その輸送を頼んだ叛徒共が品物を窃盗したこと、
また帰還した臣民の中に諜報員を混ぜていたこと、
そしてその諜報員が各種事件を起こしたこと、
諜報員の数は10名だったこと。
そして帰国した臣民を守ったことなどが放送された。
帝国臣民は大いに驚き内容を噂し合った。
しかし証拠を重ねて放送が成されると、
同盟が聞くような理想の国であると言う幻想が曇っていったのである。
銀河帝国を駆け回った衝撃は、波が流れるように次第に各地へと伝わっていったのであった。
■銀河帝国各地
貴族達は所詮叛徒共に甘い目を見せるからだと皇帝を小馬鹿にして酒を飲み交わしていた。
『わざわざ陛下もこのようなモノを流すとは、
これで陛下も恥をかかれた訳だ、若き頃放蕩三昧であったがゆえか、
あのグリンメルスハウゼンが侍従武官であったし、朱に交われば赤くなると言うではないか』
『まっことそうでございますな余りにもひどうございますな』
『ハハハハ良いではないか、其れだけザビーネの帝位への道が開けるというよ』
ご機嫌なリッテンハイム候まあ酒の席での戯れ言であった。
『そうでございますな』
軍部では陛下下賜の品を叛徒共が略取した事に憤りを感じもしたが、
内心はこのまま和平になるのではないかとの思いがあった為、
同盟の横紙破りは歓迎されていたのである。
『これで懲罰行為ができますな』
『そうよ、あのままでは、我らが武勲をたてる機会が無くなるところであったわ』
『しかし陛下の御心で兵達の士気は上がっておる、ありがたい事だ』
戦馬鹿共は戦闘再開を喜ぶ。
庶民は、折角皇帝陛下がお慈悲を下さったのに、其れを踏み躙るとは恐ろしいことだと恐れる。
そして彼奴等は元々逃亡奴隷だから卑しんだろ、だから泥棒をするんだべ。
平等とか言ってるだが、捕まえた兵隊さんから、物を盗るんだから貧しいんだ。
等々が流れまくったのである。
庶民の感覚で同盟は宇宙海賊と変わらない存在と認識されていった。
庶民には皇帝陛下の評判は上々であった。
■ローエングラム領
ローエングラム領に移住した1400万人の家族達はその町を見て歓声に震えていた、
完璧な都市計画による、道路と街路、公園、公共施設、学校、スーパーなど、
オーディンの貧民街には逆立ちしてもない物ばかりであった。
移住者は一軒一軒の家をあてがわれ、その前職業を考慮した仕事が与えられていた。
無事移住した帰還兵達の家族と帰還兵がのんびりと生活を楽しんでいた。
其処で各家庭のTVに皇女殿下のお言葉が流された。
皆緊張していた。
『親愛なる我が臣民の皆々、我が領地ローエングラムへようこそ、
不便かも知れませんが、此よりこの地で元気に過ごして下さい』
老人などは手を合わせて拝んでいる。
此処では皇帝陛下と皇女殿下は敬愛の対象である。
今回の報道を見て多くの兵や家族が今更ながらに同盟に対しての憤りを見せ、
再志願への道を心に決めたのである。
■フェザーン
フェザーンでは、中継貿易していた酒の値段が一時的に暴落したのは、
同盟が酒をちょろまかしたのかと言う事が判り、
何人かの独立商人達が儲け損なったとじたんだ踏んで悔しがっていた。
放送自体同盟では流れないだろう、間違えなく検閲されるはずだ、
其れを利用して同盟の政治屋から利権の一部をちょろまかそうと考える者、
戦争が激化すればまた儲かると算段する者などがいた。
自由惑星同盟高等弁務官ラファエル・ラ・フォンテーヌは非常に慌てていた。
折角の帝国との蜜月が僅か数ヶ月で壊れてしまう、何処の馬鹿だ!
諜報員については仕方がないどちらも行っていることだ、其処を突けば何とか成るはずだ。
しかしお前等が抜き取った物は普段お前等が横流ししている物資とは物が違うんだ!
皇帝の財物だ、そんな物を盗めば皇帝の横っ面を張り倒したのと同じなんだぞ。
帝国じゃ皇帝の財物の横領犯は国事犯だぞ、お前等は其れを判っていない。
このままだと大変な事になる、ハイネセンへ早急に報告しなければ。
■自由惑星同盟 ハイネセンポリス 最高評議会 最高評議会議長 ディオニシオ・エンリケス
帰還兵を監視する為取りあえず惑星ネプティス、カッファー、パルメレントの警備隊へ編入をすると、統合作戦本部及び情報部から連絡が有った、
兵達は名誉の帰還として其れなりに優遇を受けたはずだ、
あれだけ我々が苦労したのだ、感謝されて当然なのに、
上官に対しての反抗や我々に対しての不平を言う物が居る、
ああいう者が諜報員の可能性が高、厳しく監視するべきだ。
一服後にフェザーンから緊急報告が入った、
慌てているのかフォンテーヌは挨拶も録にしない、
堅物の割には何を遣っておるんだ。
「フォンテーヌ君どうしたのかね?」
『議長大変な事が起こりました』
「自治領主でも死んだのかね、それとも皇帝が死んだか」
『冗談はよして下さい!』
「君その口の利き方は何だね!」
『帝国で大変な放送が流されたのです』
「ほう、それはなにかね?」
『放送を送りましたので見て頂ければ判ります』
全く何を慌てているのやら、彼は堅物で困る替え時か。
私のコントロールにおける人物に変えねば成らんな。
放送が始まると、各委員とも最初はせせら笑っていた連中も私もだが、
顔が引きつっていくのが判った。
救恤品を搾取したと言われても、そう言うこともあるだろう、
しかし帝国でも同じ事をするに違いない、
しかも民衆から搾取した物を再配しているだけで、何ら皇帝はしていないではないか。
恐らく搾取したのは末端の不心得者たちであろう。
諜報員とて、帝国も今回紛れ込ましているはずだ、
発見は未だ出来ないが、さらに厳しく取り調べをさせよう。
放送を見終わると、多くの委員が考え深くしているが、
一部委員は馬鹿にしたような顔をしている。
国防委員長は『その様な放送は戯れ言ですぞ、気にする事は無い』と言ってきた。
他の委員もおおむね同じ意見のようだ。
フォンテーヌが大変ですという顔で私を見ている、未だ帝国から何も行ってこないのだから、
慌てる必要はないのだよ。
此処は一つ活を入れてやろう。
「フォンテーヌ君、そんな放送を鵜呑みにしては駄目だよ、
プロパガンダだよ、我々は潔白だと逆に放送してやればいい」
『しかし帝国側から連絡が有った場合はどうなさるのですか』
「同盟と帝国は国交を結んでいないのだよ、国でもない同士が約束事を守る自体可笑しいのではないかね」
『ではどうすれば、無視すればいい或いは事実無根だと突っぱねるだ』
「本当にそんなことが通用すると・」
『フォンテーヌ君!黙りたまえ!!私が最高評議会議長なのだよ!!』
「・・・・・・・・」
『君もそろそろ疲れただろう、国に帰って孫の世話でもしたらどうかね』
「・・・・・・・・・・」
『まあそう言うことだ、くれぐれも帝国の言い分を飲まぬようにしてくれたまえ』
あの男は使えんな、やはり変えよう。
しかし問題はこの事が国民に知れたときだ、フェザーン経由の情報が流れる可能性が有る。
「情報交通委員長」
「なんでしょうか?」
「今の話だが、何れフェザーンからこのニュースが流れる可能性が有る」
「確かにあの守銭奴共なら遣りかねませんな」
「其処でだ、流れる前に此方の都合の良い情報を報道しようと思う」
「でどの様な物を流しますか」
「オリベイラ教授に発表文は作成して貰おう、早急にだ」
「判りました直ちに連絡を入れましょう」
「暫く休憩にする」
・
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・
・
「お呼びだと聞きましたが」
「オリベイラ教授実はこういう事があってな」
「なるほど、其れならば簡単ですな。
救恤品については既に軍刑務所に居る物を適当に罪を付ければ宜しいかと、
諜報員についは、知らぬ存ぜぬ帝国側のでっち上げだと声だかに発表し、
適当な人材を帝国側の諜報員として処罰すればいいのですよ、
所詮国家有っての国民です、犯罪者の有効的な使い方ですぞ」
この老人は恐ろしいこと平気で言う、しかしこれは良い案だ。
他の委員達は殆どが肯定の首を振る。
そうすることとしよう。
■フェザーン 自由惑星同盟高等弁務官オフィス ラファエル・ラ・フォンテーヌ
連絡を負えて私は悲壮感に包まれた、あれではどうしょうもない。
もう止め時か、悔しいことだ。
秘書が帝国側の弁務官シューレンブルク伯から連絡が有った、
案の定、伯は今回の事を厳しく指摘をしてきたが、
自分の無力を感じながら伯に事実無根であり、逆に帝国側が諜報員を送り込んだと、
指摘し、結局その後無言で終わった。
もう疲れた、やはり辞任しよう。
宇宙歴788年 帝国歴479年6月23日
この日、自由惑星同盟政府から、帝国が捕虜に対して虐待を行っていること、
其れを棚に上げて、同盟に対しての事実無根の報道を行い、
帰還兵を洗脳し叛乱や破壊活動を企んだことなどが報道された。
同盟市民は驚きを持ってその報道を聞いた、
フェザーン商人が違う情報を持ち込んだが、
その情報を報道しようとした動きは、政府による検閲で禁止された、
それでも流そうとする記者は憂国騎士団により襲撃を受けた。
最早自由惑星同盟の自由とはいったい何なのであろうか?
それは後世の歴史家に委ねるしかないのであろう。
帝国暦479年6月26日
■オーデイン ノイエ・サンスーシ 小部屋 テレーゼ・フォン・ゴールデンバウム
叛徒の放送をフェザーンから入手し見てみたが、
こりゃ酷い無茶苦茶だ、あの長い名前の爺さん辺りが作ったのかもね。
みんなそう思っいるようで苦い顔です。
けど此処までしらを切るとは流石同盟だ、権力欲は何よりも強いね。
ブラウンさんとかリッテンさんとかが可愛く感じるよ、基本彼ら単純だから。
でっち上げられた偽諜報員の方南無です、怨むなら同盟政府を怨んで下さい。
ケスラーのターン。
「今回我が方の放送により起こった各勢力の反応ですがこのようになります」
資料を出します。読んでくれたら楽なんですけどね。
「ハハハ相変わらず儂は馬鹿にされておるな」
「そうですな、私も馬鹿にされております」
「昔から卿と共に馬鹿にされておったからな全然平気じゃ」
「リッテンハイム候もお戯れが過ぎますな」
「あの者ととて夢を見たいのであろうすておけ」
「ですな」
「しかし最初400〜500万だと思っていた移民が1000万を越えるとは驚いたの」
「はっ結果的に薬が効きすぎたようで、皆社会秩序維持局におびえておりますので」
「まあその分施設はあるわけだし、大丈夫でしょう」
「軍部に於いても今回の陛下の詔は好意的に受け止められております。
兵の士気が非常に上がったそうです」
「良いことですよね」
「そうじゃな」
「諜報員数は欺瞞ですね」
「良くおわかりで」
「ええ安心させて元から居る諜報員諸共潰す算段ですね」
「その通りです」
「ふむふむ」
てことは鮎の友釣りじょうたいだね。
「しかし叛徒は見事にしてくれましたな、テレーゼ様の策略を返しきっております」
「まあ仕方がないですね、元々帰還兵と臣民の支持を得る為の策ですから、
叛徒の不和は当たれば儲けモノですから、何時までも引きずっていて仕方ないですよ」
「調べによると叛徒共の中でも疑問に思うモノが居るようです」
「それはそうでしょうね、利益を受けたのが居るわけだから隠し通せる訳がない」
「何れ矛盾が生じるやもしれんな」
「まあ気長に待ちましょう」
「全くです」
「しかし自由惑星同盟と称しているけど何処が自由なのかしら、判らない連中よね」
「名前負けしているのを良くありますんじゃ、帝国貴族なんぞ名前負けだらけですぞ」
「ハハハハ、良い話じゃな」
「まあ確かに彼奴とか彼奴とかはそうですね」
「これで短い休日は終わりじゃな」
「ですね、またぞろ戦闘が始まりましょう」
「そうですの」
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次回は第四十九話 新婚さんいらっしゃーい(桂三枝風に)
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