真田十勇士
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巻ノ百十六 明かされる陰謀その十二
「必ず」
「そうせよ、しかしな」
「大助がいても」
「あと一人じゃ」
十二神将達に対するにはというのだ。
「必要じゃが」
「どなたかおられれば」
「その時は何とかせねばならぬ」
「誰か一人が二人を相手にしますか」
「そうするしかなかろう、その一人をな」
「何とか、ですな」
「探すのもお主の務めじゃ」
幸村のその目を見て告げた。
「わかったな」
「わかり申した」
「それだけじゃ、わしがそなたに今言うのは」
「では」
「あと数日じゃ」
己の命が尽きる、その時が来るのはというのだ。
「それでじゃ」
「はい、それでは十勇士達もそして」
「大助もじゃな」
「呼びましょう」
「常にあちこちを動き回って生きてきた」
真田家、この家を生き残らせる為にだ。昌幸は己のこれまでの生涯を回想してこうしたことも言った。
「謀も使い相手を騙す様なこともな」
「してきてですか」
「生きて来た」
まさにというのだ。
「これまでのわしはな、しかしな」
「それでもですか」
「わしに後悔はない、だが悪事もしてきたわしが」
「これからですか」
「お主達に見送られて世を去るとはな」
何時しか微笑んでいた、その顔が。
「思わぬことじゃ、嬉しく思うぞ」
「有り難きお言葉」
「上田ではないが屋敷の中で死ぬ」
「そのことは」
「思いも寄らなかったわ」
戦の場で死ぬと思っていたのだ、兄達と同じく。
「数えきれぬだけ戦に出てそれじゃからな」
「それも運命かと」
「わしはこうして死ぬ運命だったか」
「そうなったかと」
これまでの生でというのだ。
「父上は」
「そう、わし自身でか」
「そうされたのでしょう」
自分で自分の運命を作ったとだ、幸村は昌幸に話した。
「そしてです」
「今じゃな」
「この様にしてです」
「そういうことか、ではな」
「これより」
「最後の最後まで生きてやるわ」
この言葉通りにだ、昌幸はこれから数日生きた、そして幸村と大助、十勇士達に九度山までついて来た家臣達に看取られてだった。
世を去ることになった、その死ぬ僅か前にだ。昌幸は大助のそのまだ幼い顔を見てまだ確かな声で言った。
「いい顔だ」
「そう言って頂けますか」
「うむ」
そうだとだ、孫に応えた。
「元服した頃の源二郎にそっくりだ」
「父上に」
「必ず父の様な立派な武士になるわ」
幸村と同じ様なというのだ。
「そうなるのじゃ」
「わかりました」
大助も毅然として昌幸に応えた。
「さすれば」
「精進せよ」
そうしてというのだ。
「それから立派な武士になれ」
「父上の様に」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
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