すぐに終わった戦争
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第一章
すぐに終わった戦争
はじまったのは些細な理由だった。スポーツの試合で騒動が起こった。
選手同士が触れた触れないで互いに言い合いをはじめた。これ自体はよくある話だ。
だが問題はこの試合が国際試合、しかも緊張関係にある国々の間でのことだった。
領土問題に貿易問題、そして民族問題。両国にある問題は多岐に渡っていた。
そうしたものはスポーツに影響してはならないが中々そうはいかない、それでだった。
選手達の言い合いはやがて乱闘になり観客達も怒り出した。
「おい、どういうつもりだ!」
「そっちが先に手を出しただろうが!」
「何っ、先にやったのはそっちだろ!」
「そっちだろうが!」
両国の観客達がお互いに言い合いだした。そして。
彼等も乱闘に入った。選手達と同じく激しい揉み合いになり多くの怪我人が出る馬鹿げた事態になってしまった。
それを受けて両国の首脳は事態を沈静化させるどころかそれとは全く逆の行動に出てしまったのだった。
ほぼ同時に相手を批判する声明を出し合ったのだ。彼等は政治の場とは思えないまでに感情を剥き出しにしてお互いを攻撃し合った。
「これは相手に責任がある!」
「あちらが悪い!」
「この事態は我が国に対する挑戦である!」
「断じて許せはしない!」
こう言い合い国境での軍の配置を増やした。双方激しいデモを行い合いそれぞれの製品を破壊し合った。
「あの国のものなんて買うな!」
「不買だ不買!」
「俺達の国のものを買え!」
「経済制裁だ!」
両者は全く同じことを言い合う。しかも彼等の言語は同じものだった。
それで激しく言い合う言葉は通じた。それが余計に対立に拍車をかけた。
対立はさらに激化して国際社会の舞台でも顔を見合せばいがみ合う状況になった。最早首脳会談なぞ夢だった。
激しく言い合いそして遂にだった。
両国の国境で双方同時に発砲し合った。何時起こっても不思議ではなかったがそれが遂に起こったのである。
それが基となり国境で戦闘が起こった。これを受けて双方は同時に宣戦布告をした。
戦いがはじまり国境で戦闘が本格的なものとなった。両国の国民達はさらに激昂した。
「あの場所は俺達のものだ!」
「俺達の手に取り返せ!」
「奴等を許すな!」
「皆殺しだ!」
こう言い合い戦争状態特有の極端な興奮に陥った。
戦車が動き航空機が空を飛ぶ。ミサイルも砲弾も飛び交う。
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