とある3年4組の卑怯者
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68 無失点(ノーゴール)
前書き
これまでの試合結果
男子サッカー
3組 0-4 1組
1組の勝利
女子バレー
1組-4組 2勝0敗で1組の勝利
1セット目 1組 16-9 4組
2セット目 4組 5-16 1組
突き指と捻挫をした前田はリリィとたまえに連れられて保健室に向かったが、前田は泣き喚いていた。
「ちょっと、負けちゃうじゃない!私は勝ちたいのよ!!」
「でもそんな怪我じゃ、まともにできないよ・・・。むしろ皆の迷惑になっちゃうよ・・・」
たまえが力なく言った。
「次の試合こそ勝てばいいのよ、ね?だから皆を信じてよ。怒ってばかりじゃ皆に悪いわよ。約束したでしょ?怒らないって?」
リリィも必死で前田に約束を思い出させた。
「う、分かったわよ・・・。もう知らないわよ!!」
前田は不貞腐れていた。保健室に入り、保健の先生に左足と左手の中指を見せた。
「突き指に捻挫しているわね。これじゃあ、試合には出られないわね」
「そんな!!」
前田は抗議した。
「残念だけど、後は応援で頑張るしかないわね」
「前田さん、怪我は仕方ないわよ。皆を信じて応援しましょうよ!」
リリィが前田を慰めた。
「うん・・・」
前田は悔しかった。自分の出しゃばりが逆に自分を戦線離脱させる結果になるなど皮肉でしかなかった。
4組対5組の試合が始まった。大野と5組の阿部野がじゃんけんをした結果、4組がキックオフの権利を得た。4組も5組も4-3-3のバランスの良いフォーメーションだった。
4組
FW
大野、内藤、三沢
MF
ナベちゃん、ひらば、関口
DF
ブー太郎、永沢、山田、若林
GK
小杉
5組
FW
阿部野、藤井、飛田
MF
市尾、越部、福田
DF
滝谷、吉野、長野、鷲山
GK
喜志田
大野がボールを蹴った。しかし、5組は守りを固めた。内藤や三沢へのマークも厳しい。
(なんてチームプレイだ。これじゃあ、簡単にシュートできない!)
藤木は5組のチームプレイに驚いた。前半戦の時間が半分過ぎようとしているというのに、未だに0-0のままだった。
小杉もキーパーとしてよく頑張っていた。シュートを2つ必死で止めていた。そして女子が応援に来た。
(笹山さん・・・。笹山さんにも僕の試合姿を見て欲しかったなあ~)
藤木は笹山に自分が試合に出る姿が見られなくて残念に思っていた。
「藤木君」
笹山が藤木のそばに来て話しかけた。
「さ、笹山さん」
「頑張ってる?」
「あ、うん、さっきの2組との試合、一度も僕はゴールを許さなかったんだ!」
「へえ、凄いわね!」
「うん、この試合の後半戦も出るよ!」
「そっか、頑張ってね!」
(笹山さんが僕を応援してくれている・・・!!)
「うん、ありがとう!」
やがて、越部が飛田にロングパスしたボールをナベちゃんがインターセプトし、ひらばにパス、そして内藤にパスされた。内藤は滝谷と長野にマークされたため、三沢に、そして大野にパスした。大野がシュートした。喜志田は取り損ねた。遂に4組が先制した。
「大野君、凄いわあ~!!」
大野のシュートに冬田が感激した。
(ふ、冬田・・・)
大野は冬田に気付くと少し引いた。
(す、杉山君はベンチか・・・)
かよ子は杉山が出ていないことに落ち込んだ。そして、前半戦が終了した。
「よおし、次は俺の番だ!」
藤木は燃えた。
「藤木君、頑張ってね!」
「笹山さん・・・。うん、頑張るよ!」
藤木は笹山に言われたことで嬉しく感じた。
「笹山さん、もしかして笹山さんも藤木が好きなんじゃないの~?」
まる子がからかった。
「え?やだ、さくらさんったら・・・。藤木君は友達よ!」
笹山は顔を赤くした。
「へえ~」
4組
FW
杉山、ケン太、中島
MF
ナベちゃん、とくぞう、花輪
DF
ブー太郎、永沢、山根、たかし
GK
藤木
5組
FW
阿部野、上津、飛田
MF
石橋、鈴川、中川
DF
滝谷、吉野、松崎、青山
GK
横山
「大野君、かっこよかったわよお~」
冬田は大野に近づいていた。
「あ、ああ、サンキュー・・・」
大野は冬田に引きながら感謝した。
(す、杉山君、頑張って!)
かよ子は杉山を心の中で応援していた。
今度は5組のキックオフだった。5組はチームプレイが持ち味と藤木は前半の試合を観戦して見えていた。フォワードの飛田がドリブルしてくる。ブー太郎と永沢がマークするとすぐに、阿倍野にパスした。
(しまった。阿部野君はノーマークだ!)
藤木は焦った。阿部野がボレーシュートを放つ。藤木も必死でボールに飛びついた。
「うおおおおーっ!!」
藤木は体を張った。何とかボールを止めた。
「よおし、ナイスキャッチだ、藤木!」
杉山が藤木を賞賛した。
(藤木君、凄いわ・・・!)
笹山が藤木に感心した。藤木はボールを山根に投げ渡した。山根はボールを花輪にパスし、さらに花輪はケン太にロングパスした。ケン太を松崎と吉野がマークした。
「ケン太、こっちだ!」
杉山が呼び掛けた。ケン太が杉山にパスした。杉山がシュートを放つが、横山はボールをがっちり掴んだ。
ボールの競り合いが続く。4組の陣地にボールが入った。上津がドリブルするが、ナベちゃんとブー太郎がボールを奪いに来たところを阿倍野にパスした。永沢のタックルを交わしてシュートした。藤木が反応して飛び付いた。
「藤木君、止めて!!」
笹山が思わず叫んだ。藤木は捕れはできなかったが横に弾いてゴールを許さなかった。しかし、ボールが出たため、5組のコーナーキックとなった。
「みんな、守りを固めろ!」
ケン太が呼び掛けた。ディフェンダーもミッドフィルダーもペナルティーエリアに集合した。飛田がキックした。上津にパスするつもりだったのだが、山根が執念でカットし、遠くへ蹴り飛ばした。胃腸の弱い山根とは思えない強力なキックだった。中島がそれを受け止めた。それをドリブルし、杉山に渡す。杉山がマークされるとケン太にパス、そしてケン太がシュートした。しかし、弾かれた。4組が1点リードしたまま試合は続いた。また5組のシュートのチャンスが来た。飛田がドリブルで打ち込んできた。残り時間は2分を切っていた。同点にされればPK戦で、覆される危険もある。藤木はゴールを守る事に必死になっていた。笹山も藤木がゴールを守ることを祈っていた。その時、近くに上津が回りこんでいた。
(しまった、上津君にパスされると、絶対にゴールされる!!)
藤木は危機感を持った。藤木の予想通り、飛田は上津にボールをパスした。藤木は必死でパスを妨げようとした。
(絶対にノーゴールに終わらす!)
ヘディングシュートを仕掛けようとする上津。ボールを捕ろうとする藤木。全ての皆がその様子を見守った。藤木が上津の頭に当たるすれすれでボールを掴んだ。藤木と上津が交錯する。しかし、藤木はそれでもボールを放さなかった。藤木は立ち上がるとボールを杉山のいる方向へと思いきり投げた。杉山がマークされ、中島にパス、そして中島は滝谷にボールを奪われたが、滝谷がロングパスしたところでホイッスルが鳴った。4組が勝利したのだ。
(ふう、必死でゴールを守ったんだ・・・)
藤木は相手にノーゴールに終わらせたと確信した。両者整列をした。そして藤木は笹山に声をかけられた。
「藤木君、お疲れ様。凄い活躍だったわ」
「笹山さん・・・」
藤木は感動した。
「ふん、普通なら怖くてボールを避けたのにこういう時だけは卑怯じゃなくなるんだから、呆れるよ」
永沢が後ろから水を差す言い方をした。
「へえ、そういう永沢だって目立った事したのかしら?」
城ヶ崎が口を挟んだ。
「うるさいな!さっさと体育館に戻れよ!君達も試合があるだろ!?」
「ええ戻るわよっ!あんたの活躍する所なんて見たくもないからねっ!!」
「何だと!?」
いつもの喧嘩が始まった。そして二人は「ふんっ!」とお互い顔を背けた。何も言えない藤木と笹山だった。
「笹山さんも頑張ってね、僕も応援に行けたら行くよ!」
「そうね、さっきは負けちゃったけど、次は頑張るわ!」
笹山はそう言って他の女子達と共に体育館に向かった。
リリィとたまえは体育館に戻ってギャラリーからバレーの試合を観戦していた。
「お~い、たまちゃん、リリィ~!」
まる子がやって来た。
「あ、まるちゃん」
「サッカー見てきたけど、藤木がさあ、凄い活躍してたよ!」
「へえ、私たちも見に行けばよかったわね、たまちゃん」
「う、うん・・・、あ、5組と1組の試合が始まった」
「ってその次の試合アタシ達じゃん、練習始めようよ!」
「そうね!」
その頃5組は4組同様、1組に苦しめられていた。1セット目を6点しか奪えずに落とした。たまえは練習の間に5組の様子を盗み見していた。
「穂波さん、ボール取って!」
「あ、ごめん・・・」
たまえは練習に向き直した。
1組と5組の試合が終わり、次は4組と3組の試合だった。4組は試合用のコートへと移った。
後書き
次回:「執念」
女子バレーボール、4組は3組との試合が始まった。初勝利を手にすることができるのか。そして男子も3組との試合に臨む・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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