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ガンダム00 SS

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ep11 I am qualified.

 
前書き
2ndでアロウズ指揮官を務めたアーバ・リント少佐が登場します。
個人的にわりと好きなキャラです。メメントモリ攻略戦の「いやぁぁぁあ!」は思い出深いですね。 

 
西暦2312年
元ユニオン領 軌道エレベーター『タワー』国連軍 低軌道ステーション基地

アーバ・リント少佐は司令室を離れ、来客室へ向かっていた。これから会わなければならない相手がいるのだ。

軌道エレベーター基地の司令を任されて2年ほど経っている。リント自身、そろそろ異動だろうと踏んでいた。

ーーしかし、まさかこの時期になるとは。

今、世界ではソレスタルビーイングの復活が大きな話題となっている。彼らは宇宙のコロニープラウドに表れた後、グッドマン准将率いる艦隊と交戦した。

噂では、この後ソレスタルビーイングは連邦軍に囚われた仲間を助けるために地球へ降下するらしい。独立治安維持部隊『アロウズ』が彼らに餌を蒔いたとのことだった。

リントは来客室をノックしてからドアの前に立つ。部屋の中にいたのは、アロウズの軍服を着た小太りの金髪男だった。

リントは部屋に入り、男の前に立って敬礼する。

「連邦正規宇宙軍、軌道エレベーター基地司令のアーバ・リント少佐であります」

小太りの男もその場に立ち上がって返礼する。

「アロウズ宇宙部隊のアーサー・グッドマン准将だ。任務中済まないな、少佐」

「いえ、問題ありません。准将自らおいでなさるとは光栄です」

「少佐とは顔を合わせて話したかったんでな。座ってくれ」

「失礼します」

リントは軽く目礼し、グッドマン准将の前に腰を下ろす。准将は「さて」と前置きして話を始めた。

「貴官も最近の情勢は知っているだろうが、ソレスタルビーイングがまた行動を始めた」

「はい。存じております」

「彼らの行動を許せば、反政府勢力の勢いを増長させる恐れがある。そこでアロウズは対ソレスタルビーイングを活動範囲に加え、作戦行動を取っているところだ」

「元々は対テロ対策のために設置されたアロウズ……。これでソレスタルビーイングを倒せば、アロウズの存在価値は確立しますね」

「その通りだ。そして、少佐にもアロウズへの転属辞令が下りている」

ーーきたか。

リントの口元が一瞬だけ弓状に歪む。グッドマン准将がようやく本題に入ったからだ。

リントは目を丸くし、さも驚いたような態度を取った。

「私がアロウズに、ですか?」

「貴官の噂は聞いている。任務のためならどんな苦渋の決断も淡々と下す優秀な指揮官だと」

「買いかぶりすぎですよ……。ですが、そうですね。掃討作戦には自信があります」

「結構だ。アロウズでその腕を存分に発揮してほしい。手続きは追ってすぐ連絡する。以上だ」

リントは席から立ち上がり、敬礼と宣誓をしてみせる。

「ありがとうございます。必ずや戦果を上げてご覧にいれます」



グッドマン准将を乗せたリニアトレインが地上へ向けて出発した時間だ。リントは自室から地球を眺めながらククッと笑う。

「アロウズ転属は2日後から。つまり今日がここでの最後の仕事か……」

自分がアロウズに転属するかもしれない。そんな話は前々から聞いていた。それに、リント自身もアロウズが自分にとって居心地の良い職場になることは何となく分かっていた。

ーー超法規的なあの部隊でなら、私のやり方をとやかく言うことはできない。

ーーたまにいる。私の作戦を『後味が悪い』などと言う者が。

リントは何も自分のために任務を全うしているわけではない。アロウズによる反政府組織の打倒は統一世界への第一歩となる。そのためには、力を押してでも潰すべきものは潰すのだ。
そのとき、中央管制室にいる副官から連絡が入った。

『司令、エレベーターに向けて進行する所属不明の物体を確認しました。映像を出します』

携帯機器の画面に表示されたのは、輸送艦2隻だった。そこからMSが出撃しているのが分かる。

「オービタルリングの上からエレベーターに特攻をかける気か?今どきそんな稚拙なテロをやる奴がいるとは……。第1、第2MS小隊を出撃させ、これらを掃討せよ」

『了解』

リントは自室を出て、管制室へ急ぐ。最後の最後でテロリストの攻撃を受けるというのは嫌な話だった。

ーーだが、ある意味好都合だ。

これからアロウズに入れば、前線で指揮を取ることになる。その準備運動だと思えば自分の中の士気も上がる。

ーー最後の仕上げだ。私のやりたいようにやらせてもらおう。


管制室に入り、司令席に座る。リントは目の前の大型モニターに映る敵を確認した。敵の戦力はこちらに比べてかなり劣っている。危険性は限りなく低い。

「ジンクスⅡ出撃確認」

第2小隊のジンクスⅡキャノン隊による長距離攻撃が放たれる。前方に展開していたMSの大破率は9割を叩き出していた。

続いて、後方に構えていた第1小隊が敵に急速接近する。ジンクスⅡソードが配されたこの部隊で敵の各個撃破を行うためだ。

輸送艦の1隻がジンクスⅡに包囲され、四方からビーム攻撃を受ける。
もう1隻はキャノン隊によって破壊され、増援部隊は艦の中で戦闘不能になった。

副官の淡々とした声が管制室に響く。

「敵勢力、沈黙を確認しました」

「破壊した機体の撤去作業を進めろ」

「了解」

実に呆気なかった。リントは手元のモニターで戦闘開始と終了の時刻を確認した。たったの2分だった。

ーー雑念が判断を遅らせ、解決を遠ざける。作戦指揮官にはこれができなければダメだ。部下に躊躇いを持ってどうする?

ーーソレスタルビーイング。彼らを私の手で落とすのだって、造作のないことだろう。

リント少佐は撤去作業の終了を待ちながら、きたるガンダムとの戦いを想像した。彼らがアロウズの圧倒的な戦力によってズタボロにされる姿をーー。

終 
 

 
後書き
アーバ・リント少佐が正規軍所属だったころのエピソードは外伝『00F』に掲載されています。まあ、ゲスト出演みたいな感じですが(笑) 
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