歌集「春雪花」
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終歌
寒み月に
ため息つかば
夢霞み
嘆くは叶わぬ
恋なれば
痛みしこゝろ
野辺の風
待つも虚しく
帰り来む
袖ぞ濡らせど
玉の緒は
絶へんと思へば
いかばかり
朝を見つる
切なさを
たとふるものも
なかりせば
けふを限りと
君想ふ
儚き冬の
月影も
滲みて見ゑし
夜も更けて
想い寒みて
身を抱くも
なぐさむものも
見つからず
枯れし花さへ
愛おしき
忘らるゝものと
知りながら
さても想いは
変わらずに
時そふりせば
恋しさも
消ゆるものかと
思へども
たれそ聞かんや
わがこゝろ
消ゑぬ痛みに
たへかねて
独り侘しく
生くるかと
思ゐてため息
ついたとて
さやき月影
身を焦がし
落つる涙を
うつしたり
憂きしわが身の
恨めしき
現のつらき
枯れ尾花
春も来たらぬ
想い抱き
静けく本を
とじにけるかな
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