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ヘタリア大帝国

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81部分:TURN8 レーティア=アドルフその五


TURN8 レーティア=アドルフその五

「僅か二年で軍事、経済、内政の改革を全て成し遂げ」
「人材を抜擢して国家を立て直した」
「ドクツの産業は復活して国民にはパンと仕事が戻った」
「今のドクツにインフレはない」
 それがだ。まずなくなったというのだ。
「失業率はゼロになった」
「多くの画期的な艦艇が開発されているしな」
「全てあの総統が開発したものだったな」
「そうだ。噂では戦艦も巡洋艦も凄いらしいぞ」
「駆逐艦も水雷艇もな」
 そうしたもの全てをだ。レーティアが開発したというのだ。
「科学技術も一変した」
「化学もな」
「あの総統は多くの特許を取ってそれでドクツを支えている」
「しかも外交もな」
「そうだな。ドクツの誇りを取り戻した」
 それもだ。レーティアは成し遂げたというのだ。
「あのベルサイユ条約を破棄し賠償金を放棄した」
「あれは困った」
「全くだ」
 エイリス及びオフランスの者達からこう声があがった。
「賠償金はドクツに課した足枷だったというのに」
「ドクツをレモンの種が泣くまで搾り取るつもりだったが」
「我々は先の戦争でドクツに苦しめられた」
「報復だったのだが」
「ふん、あれはやり過ぎだ」
 列席している者達の中に白い軍服の八の字髭の男がいた。見れば日本帝国外相である宇垣だ。彼はエイリスやオフランスの者達のぼやきにこう呟いた。
「あんなことをすれば誰もが恨む」
「そうですね。あれはかなり」
「我々もどうかと思いました」
「やり過ぎでした」
 こうだ。日本の外交官達も宇垣の言葉に頷く。
 そしてだ。彼等はこう言ったのだった。
「だからドクツがあの条約を破棄しても多くの者が支持したのです」
「エイリスとオフランス以外の国々が支持したのです」
「彼等はあまりにもやり過ぎました」
「その為ドクツの経済は崩壊したのですから」
 敗戦と賠償金によってだ。そうなってしまったのだ。
「しかも余計な恨みを買いましたし」
「このことが後で大変なことになるのではないでしょうか」
「欧州も最近きな臭いですし」
「果たしてどうなるか」
「そうだな。欧州は特に危うい」
 宇垣は腕を組み難しい顔でだ。己の席から彼等に答えた。
「何時何が起こってもおかしくはない」
「そして今日それがはっきりしそうですね」
「あの総統が何を言うか」
「それで、ですね」
「欧州の命運がわかりますね」
「そうなるだろうな。しかしだ」
 ここで急にだ。宇垣はだ。
 その目を急に綻ばさせてだ。こう言ったのである。
「あの方だが」
「レーティア総統ですね」
「あの方ですね」
「実に見事だ」
 台にいるレーティアを見てだ。目をそうさせたのだ。
「美貌だな。しかもカリスマ性もある」
「確かに。我が国の帝とはまた違った美しさがありますね」
「ゲルマンの理想とも言うべき美貌でしょうか」
「金髪、そして碧眼」
「その美貌がありますね」
「小柄ですが」
 これがレーティアの特徴にもなっていた。彼女は確かに小柄だ。
 だがそれでもだ。その小柄らさもだ。
 宇垣は今度はその目を細めさせてだ。こう言ったのだった。
「いいものだな」
「あの、外相まさか」
「あの方は外相の好みでしょうか」
「そうなのでしょうか」
「素晴らしい方だ」
 宇垣はこの感情を隠そうとはしなかった。
 
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