こんなチートでもありですかい?そうですかい。
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第6話。舞弥と変人。
切嗣と晋吾が死徒狩りを始めてから3カ月が経つ。一か月に一度のペースで仕事をこなしていったのだが・・・・
「舞弥姉ちゃん。」
「・・・・なんだ」
「親父マジで使えねぇ。」
・・・・らしい。
始めての仕事で晋吾は自らは無傷で死徒2体、リビングデッド1体、グール4体を撲殺する
といった驚くべき戦果をあげた。
対して切嗣は、切嗣の指示で私が仕掛けた爆弾で二階を破壊。しかし残念だが壊しただけで死徒もグールも倒していない。
地下でグール2体を相手にしてなんとか倒したが、
晋吾に瀕死の姿(無理して魔術回路を使ったとのこと)で発見させたらしい。
・・・・頭が痛い。所詮テロリストということか。壊すことしかできん。
こうして2回目の依頼をこなした後、晋吾に
「親父はこんでええ。俺がやるから。」
と言われ、非常に淋しい背中をしていた。・・・・つい、お父さん頑張ってぇ!と思ってしまった。
晋吾は本当に不思議な子だ。始めて切嗣が連れて来た時はほんとうに驚いた。
一命を取り留めた私は、ホテルで切嗣を待っていた。
ノックする音に安心し、切嗣を向かえ、聖杯戦争終了の報告を受けて頷くと、視界の端に
宙に浮かぶ赤毛の子をみた。
驚きそちらの方に目線を向けると、先ほどまで映っていなかった同じ顔をした黒髪の子がその子を背負っていた。
魔術師である可能性を浮かべ、警戒した目線を向けると、切嗣が彼らを保護すると伝えてくる。
正気を疑った。こんな『胡散臭い』ものを保護するという切嗣の正気を。しかし、切嗣はもう保護することを決めている様子だったので、私は何も言わなかった。
二人を家族をするために多額の金を使った。まず、彼らが被害のあった町に住んでいた記録を全てなくした。次に親権や戸籍などを新たに作った。
何故そこまでして保護する気になったのか理解できなかった。しかし晋吾の異常性に気づいた今、それも仕方なしだとは思っている。
次に会った時もいつの間に士郎の隣にいた。正直、なにか魔術でも使っているのかと思ったが本人は魔術自体を知らない様子。
そして3度目に顔を合わせた時、彼の異常性を理解した。・・・・その膨大な魔力。
あの聖杯戦争に参戦していたどのサーヴァントよりも膨大な魔力。人間であるのかも疑うレベルであった。
切嗣は、それに気づいていて、彼を認知することが難しい理由が、このあまりにもの膨大な魔力であることを推測していた。
人の認知を妨げるほどの膨大な魔力。聞いたこともない。なにかの冗談かと思った。
切嗣は彼ら兄弟に自衛の策を与えるべく魔術を教えることにした。
彼の異常性に戸惑う私だったが、晋吾は休ませてくれない。今度はあのバカは・・・・
魔力放出なんぞしてくれたからに。あほか?あほちゃうんか?
・・・・あの方便はすぐうつるから困る。
挙句のはてには私が見ている目の前で、「動くなドアホ!」とか言って魔力を硬化させる始末。
思い出すだけで頭が痛くなる。・・・・最近は士郎がくれた半分がやさしさでできている頭痛薬の存在がありがたい。
そして得物とやら。やめだ。止め止め。人生初のツッコミとやらをしてしまったエピソードを
思い浮かべてそっこーでゴミ箱に投げ捨てた。
・・・・私も変ったな。
思わず遠い目をしてしまう舞弥であった。
裏方に回った切嗣とともに依頼の受諾と偵察を兼ねて九州に来ている。晋吾と士郎は共に留守番。
「しかし、守ろうとした者のに雑魚扱いされるとは思いもしなかったよ。」
「・・・・切嗣はいつから気づいていたのですか?」
「何に?」
「晋吾のことです。」
「町からホテルに向かう際中にね。あの廃墟と化した町の中で普通にしてるんだもん。
何かあるなと思ったら・・・・」
・・・・有り過ぎだったと言うことか。
「・・・・しかし切嗣。死徒を余裕で、とは思ってませんでしたが、グールにも後れを取るなんて・・」
「んー晋吾達には内緒にしておいてね。実は・・僕の魔術回路、ほとんど動いてないんだ。
体も動きにくいし、あの聖杯のせいかな?」
「なぁ!?じゃなんで死徒狩りなんてやろうと思ったんですか!?」
「いや、晋吾もいるし、なんとかなるかなーって。」
ダメだこの親父。こんなにダメな奴だったけ?・・・・あのコ達は私が守ろう。うん。特に士郎。
晋吾は別にほっといても大丈夫でしょ。
今回の仕事でドイツまでの二人分の旅費や、帰る時の3人分の旅費、これからの5人分の生活費数か月分などが揃う。
晋吾も士郎も、そして切嗣、私でさえも、アイリスフィールの娘を迎えることを楽しみにしている。
晋吾と士郎は『おかえりイリヤ姉ちゃん』と書かれたくす玉を作っていた。
あの少女が、この二人と出会いどのような反応をするのが楽しみで仕方がない。
願わくば、私の頭痛の肩代わりをしてもらいたいものだ
晋吾がいるとホッとする。そんな安心感、温かさを与える何かをあの子は持っている気がする。
でなければ私も切嗣もここまで気を許さないだろう。戦場を知ったものはどうしても人を信じられなくなる。
だが切嗣にいたっては緩みすぎだ。あれでは単なるダメ親父ではないか。
「舞弥ねえちゃん。飯できたで~。今日はシロちゃんが作ったんよ。」
「そうか。今行く。」
「シロちゃんはな。お母さんの手伝いをよくしててな。めちゃめちゃ料理上手なんや。きっとビックリするで?」
「そうか。楽しみにしておこう。」
今までなら、このように足を止め、座り、両手を箸と茶碗で塞ぐような食事を取ることですらしないだろう。
しかし、この騒がしくも温かい食事がほんとうに楽しみになってたりする。
切嗣の部品でしか思っていなかった自分。しかしそれが間違えであることに気づき、『人』になった。
そして、晋吾や士郎といった人の間に挟まれ、『人間』になっていく自分を感じる。この『人間』になっていく感覚が・・とても温かい。
「こんにちはー!」
「やぁいらっしゃい。大河。」
「うゎ。今日も来よった・・・・」
「なにか言った?晋吾?」
「なんでもありまへんがな。」
この騒がしくも温かな時間がいつまでも続くことを・・・・
「うっ!」
「あっ、すまん親父。それソースやったわ。」
「ちょっと晋吾!何してんのよ!!切嗣さん大丈夫ですか?」
「大丈夫や。ソースは食べれる。」
「ニイちゃんニイちゃん!これ食べた?」
「おお、上手いぞシロちゃん!」
「やった!」
「ピーマン嫌い・・・・」
「子供か!?親父子供か!?」
「野菜も食べないとダメだよ?」
「虫とかなら食べれるのに・・」
「きめぇ!親父きめぇ!!」
「親父。それはないよ~」
「がーん!」
「私もちょっと引いちゃうな・・・・」
・・・・いつまでもはちょっと勘弁かな?
後書き
晋吾の精神安定A+のおかげなのか、頭のネジがどっか逝っちまったキリツグ。
前線で晋吾がかき乱し、2列目の士郎とイリヤが時に前線に、時に後衛に活躍し、3列目のキリツグが遠距離射撃。最後尾の舞弥姉ちゃんが手綱をとる。
こんな我が衛宮家ですが、これからもよろしくお願いします。
・・・・笑いの話ですよ?
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