| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ロザリオとバンパイア〜Another story〜

作者:じーくw
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第66話 邪悪な顔

 
前書き
~一言~

放置しまくっててすみませんっっ!! こっちの小説は元々、みぞれちゃんが出てくるところ辺りまでは原文が残っているので 投稿できるはずなのですが……。そ、その、文があまりにも稚拙だと言うか、地の文とかも 変だったり 主人公の会話にこの→『』 かっこを使ってて印象付けてたり……と、修正点が多すぎて、全然進んでませんでした……
こ、これからはガンバリマスので! どうぞ、よろしくお願いします!!! 

 


「え――――・・・ 今日の美術なんだが、先週に続いて自分の『大切なもの』をテーマに絵を描いてもらおう。 大切なものこそ、それぞれ心の中にある芸術(アート)なんだ。 皆 自由に描くといいよ」


 今行われているのは美術の授業。その先生が石神先生だ。丁度 昨日モカと話していた先生である。
 今回の授業のテーマを訊いたつくねは、無意識なのか 或いは意識しているのか判らないが、モカの方をじっと見ていた。
 そして、そんなつくねの行動はカイトの位置からだったらはっきりと判る。

「(あの様子じゃ・・・ まだ言えてないな。うん 間違いなく)」

 本人にはっきりと訊けば良い――とアドバイスをしたカイトだったが、つくねの様子を見て苦笑いをしていた。

 そして授業も進み、軈ては クラスの女子生徒たちが、石神先生のほうへ集まりだした。

 その中には他のクラスから来ている生徒もいた。今は授業中なのに…… つまり、授業をサボってきていると言う事だろう。

「やっぱり大人気だな。石神先生は」

 教師と生徒が仲がいいことは、何か微笑ましいとも言える。
 だが、他の事ばかり気にしてたら、しなければならない事も出来なくなってしまう為、カイトは改めて集中した。自分の大切なものを頭の中に思い描いて。

 そんな中で、つくねは何やら美術の教本を凝視していたのにカイトは気付いた。
 何かモチーフになるものを探しているのだろう、と思ってまた自分の作業に戻ったのだが……、結構凝視する時間が長い。
 
「なぁつくね。さっきからずっと凝視しっぱなしだけど、そんなに美術好きだったっけ?」
「うひゃあ!」

 話しかけたらつくねは、飛び上がらん勢いで驚きつつ、ばんっ!と勢いよく教本を閉じてた。

「いっ いや! なんでもないよ!?」

 どう見ても なんでもないように見えないのだが、追及するつもりも無いカイトはと言うと。

「ま、別にいいか。好みは人それぞれってもんだ。んじゃ オレは絵描きに戻る。つくねも頑張れよ? 5教科と違って、そこまで重要視されてない美術だけど、内申点には響くらしいからな」

 手をひらひらさせて、カイトはモチーフ探しを再開した。

 正直に言うと カイト自身も非常に悩んでいる。今回のテーマは カイトにとっては多すぎるから。大切なものが、多すぎるから。




 そして 授業が終わった。



 つくねは 意を決した様で色々とモカと話そうと努力を重ねているのだが、その成果が全然実らない。

 ある時は くるむに、またある時は ゆかりに、果てにはギン先輩にまで 邪魔をされる形になるのだ。

 一応説明をしておくが、皆別につくねの事を妨害してるわけじゃない。
 けれど どう言えば良いだろうか……、何と言うか 絶妙なタイミングとでも言うべきか、悉く失敗を繰り返していたのだ。


 そのシーンを全てじゃないけど ある程度は見ているカイトはと言うと。


「(あぁ……成る程な、こりゃもうこの世界のカミサマってヤツに嫌われてんだろうなぁ…… つくねってヤツは。不幸にも程があるだろ……)」

 
 神懸り的なタイミングで次々と妨害にあうつくねを見たら そう思ってしまうのも仕方のない事だった。






 そして、成果が全く実らないまま、何やかんやで つくねの誕生日前日にまでに来てしまった。






 つくねは単身モカがモデルをやっているらしい美術室の前に来ていた。



「こうなったら美術室に乗り込むぞっ! 明日をオレの為にくれって直談判だッ!」

 つくねは 拳を握りこみ気合を入れて威勢良く美術室への扉を開けた。


「すっ・・・ すみませーーーん! モカさんに話がッ!!!」



 力いっぱい叫んだのだが、帰ってくるのは自分の声。つまりは木霊のみだった。

「……って誰もいないのか・・・ まあいいや・・・中でモカさんを待とう」

 ちょっと拍子抜けしてしまったが、すぐに切り替え美術室の奥へ行こうとしたその時だ。


『シクシク シクシク シクシク………』


 聴こえてきたのだ。消え入りそうな小さな声。それは小さいのだが悲痛なものだった。すすり泣き声とでも言うべきものか。
 その発生源がロッカーの中である事は つくねにも判った。

「何だ………? ロッカーの中から・・・ まさかモカさん!?」

 つくねは 慌ててロッカーを開けた。

 そこにはモカはいなかった。
 いたのは 《石像》だ。明らかに普通ではない石像。眼から涙を流しているのだ。
 妖怪の学校だから、石像が泣いていたって不思議じゃないかもしれないが、何処か不気味さを更に演出していた。何よりも この石像は嫌にリアルに作られているのだ。

「せっ、石像が!? うわあああああ! 石像が泣いている―――っ!! 何で!? こんなものが……? それにこのコ何処かで………」

 つくねは最初は気味の悪さからしっかりとは見ていなかったのだが、改めてよく観察してみると、その石像の容姿には見覚えがあった様だ。 もう一度、確認をしようとしたその時だ。



「…………おい 私の芸術(アート)に何をしているんだ?」



 石神先生がいつの間にか、つくねの後ろに立っていたのだ。 見なくとも判る。恐ろしい形相で見られていると言う事が。

「わあ! いっ……石神先生!! すみません……っ! その、勝手に入っちゃって!!」

 今の石神は 教師の時の顔ではなかった。そう まるで 害虫を見るような嫌悪の表情をしていたのだ。

 だが、すぐにつくねと分かると 一瞬で表情を戻した。

「ん……? なんだ3組のつくね君じゃないか。」

 いつもの笑顔に戻っていたのだが、つくねは一切安心できなかった。この笑顔が上辺だけだと言う事くらい直ぐに理解出来たから。……先ほどの表情を見ているから。

「(今、先生の顔死ぬほど怖かったような………)」

 妖怪の学園に来て怖い目になど何度だってあってるつくね。それらにひけを取らないどころか、睨まれただけで死ぬ様な思いまでしてしまっていた。

 そして、石神は つくねに開けられたロッカーを閉じた。

「フフ……… つくね君モカさんを連れ戻しに来たのかい? モデルにかまけて全然かまってくれないから」
「えええ!! どっ どうしてそれを!!?」

 つくねは図星をつかれたせいか さっきのことを忘れうろたえだした。
 
「いやいや、どうしてって……」

 つくねの仕草や表情、それらを見ていれば、極端な朴念仁、超鈍感出も無ければ普通に判る事だから。少々呆れ気味な様子で石神は言ったその時だ。

「あれ……? つくねが何で美術室(ここ)に?」

 ここに来たのは石神1人ではなかった。遅れたモカが美術室に入ってきたのだ。

「モカさん!?  いやっ・・・ その・・・これは!」

 つくねを見た途端、モカは顔を俯かせた。

「モカさん! ちょっとだけ聞いて! オレ、その……モカs「だっ……駄目よ!」っ!」

 つくねが最後まで言い終える前に、モカが慌てて制した。
 そして、つくねを美術室から追い出すように、背中を押した。

「今は恥ずかしいから来ちゃダメーーっ! 帰って!!」
「まっ・・・まさか本当にヌードモデルを??」

 つくねは 授業で見た教本から連想させたのだろう。石神の持ってきた教材の中には 所謂裸婦画もあったから。つくねが美術の教材を凝視していた理由はそこにあった。

 でも モカがそんなモデルを引き受けたとは考えにくい。……いや、考えたくなかったと言うのが正しいかった。

 だが、その返答は……。

「わたしが何をしたってつくねには関係ないでしょ!!? とにかく帰って―――!!!」

 ただただ、つくねの事を拒絶する反応だけだった。
 それを訊いたつくねは、内に秘めた炎が瞬時に小さくなっていく。

「……そうだったんだ。 その程度だったんだ」
「え?」
「よくわかったよ モカさんはオレのことなんてどーでも良かったんだっ!!!」

 つくねは、直接的にモカに言われた言葉がよほどショックだったのだろう。それ以上は何も言わず、美術室から飛び出す様に逃げていった。

 モカは 理由があるとは言え 強く言い過ぎた事を思い知る。

「つくねっ!? そっ・・・そんな! 違うの! 待ってつくねっ……!」

 だからこそ、つくねを追いかけようとモカも美術室を飛び出そうとしたその時だった。

 石神に、腕を掴まれたのは。


「え? いっ 石神先生・・・?」


 それは 封じられているとは言え バンパイアであるモカの力はかなり強力だが、それでも振りほどく事が出来ない程の力だった。

 石神の表情は再び邪悪なものへと変わっていた。いや、戻った―――と言う方が正しい。



「ごめんね。 君を帰すわけにはいかなくなったみたいだ………」



 そこにあるのは いつもの生徒に慕われている先生の顔じゃない。
 邪悪な笑みを浮かべた妖の顔だった。






 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧