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偉いつもりが

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第四章

「教育隊の方が怒るから」
「あっちがですね」
「作業員出してるのはあちらだしね」
「それじゃあねですね」
「あちらがどう動くかね」
「それ次第ですね」
「そうなると思うよ」
 士官はこう奥野に話した、そして彼も兵士も食事に行った。奥野はこの日寝るまで怒っていた。
 その錨の日曜から数日後だ、彼は昼休みに教育隊の中の売店で好きな菓子を買っているとそこに椎名が来て声をかけられた。
「給養のことですが」
「ああ、あの連中か」
「面白いことになりましたよ」
 笑って奥野に話してきた。
「これが」
「面白いこと?」
「ちょっとゆっくり話しますか」
「ああ、じゃあな」 
 二人は売店のところから基地の中にある娯楽室に入った、漫画や本科集められ椅子やテーブルも置かれている。
 そこに入ってだ、奥野は椎名と向かい合って席に着いてそれで彼の話を聞いた。
「それで何があったんだよ、あいつ等に」
「日曜のことですが」
「ああ、あれか」
 奥野はその日のことを思い出して眉をぴくりと動かした。
「今でも怒ってるぜ、俺は」
「あれで怒ったの奥野さんだけじゃなかったんですよ」
「そりゃそうだろ」
 当然だとだ、奥野は返した。
「あんなふざけたことしてな」
「それで教育隊の班長さん達が激怒して」
「それでか」
「はい、もう作業員を出さないって」
「決めたのか」
「一応教育を受けている子達に聞いたみたいですが」
「そんなの半分以上誘導尋問だしな」
「ああした作業は面倒ですしね」
 教育隊で受ける教育とは違う作業だ、それでは好き好んで行く筈もないということである。
「ですから全員賛成みたいな形で」
「作業員出さなくなったか」
「今から次の期からそれからも」
「ずっとか」
「はい、ずっと出さないことになりました」
「それはいいことだな」
 その話を聞いてだ、奥野は笑って言った。
「最高のニュースだ」
「奥野さんにとってはですね」
「ああ、飯炊きをつけあがらせるな」
 奥野はまた私情を出した。
「そんなの出してるからな」
「給養員がつけあがるんですね」
「余計にな」
 只でさえ、というのだ。
「つけあがるんだよ」
「ただでさえ偉いと勘違いしていて」
「そうだよ、俺達と一緒であいつ等もな」
 その給養員達もというのだ。
「仕事をしてるんだよ」
「当然のことですね」
「飯炊きは料理作るのが仕事だろ」
 まさにというのだ。
「それで何が偉いんだ」
「それはその通りですね」
「だからだよ、偉そうにするな」
「それで余計に偉そうになる要素はですね」
「どんどん減らせ、つけあがらせる要素は減らしていけ」
 出来る限りというのだ。
「本当にな」
「それでこのことはですね」
「いいことだよ、もう二度と出すな」
 作業員などはというのだ。
「それこそな」
「それはそうですが」
「俺の場合はか」
「ちょっと嫌い過ぎですけれどね」
「そうだろうな、他の船とか航空隊とかでもな」
「給養員を見てるからですか」
「こう言うんだよ。俺は給養員が嫌がること困ることならな」 
 自分達が偉いと勘違いしている彼等がだ。
「何でも賛成するぜ」
「それはそれでまずいんじゃ」
「まずいものか、偉そうにするな」
 給養員はというのだ。
「本当にな」
「その個人的な感情は抑えた方がいいですが」
「抑えないさ、奴等にはな」
 あくまでこう言う奥野だった、彼は自分達が偉いと思っている給養員があくまで嫌いだった。それで今回のことを喜びつつさらに思うのだった。彼等がより立場が弱くなっていくことを。


偉いつもりが   完


                 2017・8・20 
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