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悪行が善行に

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第二章

「俺は破天荒に生きてやるぜ」
「じゃあやってみろ」
 友人達はこうポールに返した。
「俺達に迷惑かからないならいいさ」
「それならな」
「別にいいからな」
「悪戯やってみろ」
「それでフォルスタッフ爺さんみたいに生きてみろ」
「そうするな」
 実際にとだ、彼は友人達に返した。そしてだった。
 彼は実際にあらゆる悪戯をして羽目を外して生きることにした、そうしたワルになろうと決意してだ。
 それでまずはだった。
 ビールを家でごくごくと飲んでみた、すると母にこう言われた。
「あら、ビール飲んでるの」
「そうだよ」
 台所に座ってこれみよがしに飲みつつ母に返した。
「悪いか」
「ああ、じゃあどんどん飲んでね」
「えっ!?」
 母の思わぬ返事についこう返した、驚いた声と顔で。
「お袋、今何て」
「だからどんどん飲んでって言ったのよ」
「未成年がビール飲んでもかよ」
「うちの家が何やってるかわかってるでしょ」
「居酒屋だろ」
「居酒屋はビール売るでしょ」
「しかもうちは色々なビール売ってるからな」
 それを店のウリにしている。
「美味いビールを沢山な」
「自家製のもね、ただビールはね」
 売りもののそれがというのだ。
「余ったり下手に出来たりもするし味見も必要だから」
「だからかよ」
「そうしたビールは飲んでくれないとね」
「親父がいるだろ」
「実はお父さん痛風なのよ」
「それ初耳なんだけれどな」
「さっき急に足が痛くなって」
 足の親指の付け根、そこがというのだ。
「病院に行ったらそう言われたのかよ」
「ビール飲んでか」
「それでよ、もうお父さんビール控えないといけないから」
 痛風にビールは悪い、ドイツ人に痛風が多いのもビールのせいであるとはよく言われていることだ。
「だからあんたがね」
「家の商売の為にか」
「どんどん飲んでね、ただお水とかも飲んで」
「俺も通風にはなるな、か」
「なりたいの?」
「いや、痛風って痛いんだよな」
 ポールはビールをジョッキで飲みつつ母に真顔で返した。
「そうだよな」
「お父さんさっき死にそうな顔してたわ」
「じゃあなりたくないさ」
 絶対にという返事だった。
「俺だってな」
「じゃあそっちは気をつけてね」
「家の為にビールをか」
「飲んでね」
「ああ、わかったよ」
 こうしてだった、ポールがビールを飲んだことはかえって家の為にいいということになった。それでこれからも飲むことになった。
 だがこれでへこたれては根性がないと友人達にも自分自身にも思われると考えてだ。それでだった。
 今度は壁に落書きをしようとした、しかし。
 落書きをしようとしていた駅のところで何と弱い者いじめをしているならず者達を見付けた、それで条件反射でだった。
 彼等のところに行ってだ、いじめられている少年の前に立って問うた。
「何してんだよ」
「何してるもあるかよ」
「御前に関係あるかよ」
 金髪と黒髪の如何にもガラの悪そうな中学生位の男二人にやはりまともでなさそうな女三人だった。彼等はすぐにポールを囲んで言ってきた。 
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