マジック
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第一章
マジック
誰もが思った、あと少しでマジックが点灯するとだ。
しかしこの試合ではだった。
「あれっ、負けたよ」
「それも二位の阪神に」
「今日勝てばマジック点灯だったのに」
「上手に行かないな」
「そうだよな」
そのチーム、広島東洋カープのファン達は残念そうに言った。折角愛するカープにマジックが点灯すると思ったからだ。
だがこの試合は阪神が健闘してだったのだ。
「兄貴も必死だよな」
「阪神の方もな」
「そりゃ向こうも優勝させたいないだろ」
「優勝するのは自分達であって欲しいし」
「まだ僅かでも可能性あるしな」
「まだな」
「優勝したいからな」
「だからな」
「今日は健闘したな」
そして勝ったのだ。
「投手陣が必死に踏ん張って」
「それで何とかな」
「逆転したいって思ってるんだな」
「優勝したいって」
「逆に自分達がマジックか」
「それを点灯させたいか」
「しかしな」
それでもと言うのだった。
「今年はカープだ」
「カープが優勝するからな」
「絶対にな」
「どっちにしろマジックはうちが点灯させる」
「カープがな」
「そうなってやるぜ」
こう言うのだった、彼等は残り試合と広島と阪神のゲーム差の状況を見てそうして言っていた。そして実際にだった。
阪神が次の試合から広島に連敗してだ、気付けば。
マジックが点灯していた、これでファン達はまた笑顔になった。
「よし、これでな」
「またマジックが点灯したな」
「阪神に連勝したからな」
「マジックがゼロになった時が楽しみだぜ」
「優勝だ」
「カープ優勝だぜ」
彼等は笑顔でマジック点灯を喜んでいた。しかし。
何とだ、次の勝率二割三分代で今年も他のチームを大きく引き離して定位置である最下位にいる自称球界の元盟主巨人にだ。
連敗し阪神は連勝してだ、折角点灯したマジックが。
「消えたな」
「巨人なんぞに負けてな」
「折角点いたのにな、マジック」
「それがどうしてなんだよ」
「巨人に連敗したんだよ」
「あんなチームに」
最早十二球団最下位の状況であるチームにだ、尚パリーグではオリックスが巨人と同じ立場になっている。
「それって何なんだよ」
「巨人に連敗とかな」
「巨人の方も驚いてたよな」
「久し振りに連勝してな」
「それもカープにな」
「ここでマジックが減るって思ったら」
それがだ。
「まさかの消失」
「参ったな」
「マジックが消えて」
「どうしたものか」
巨人にまさかの連敗を喫した状況に苦い顔になる彼等だった、そして。
次の横浜とのカードではだ。見事にだった。
「今回は勝ったな」
「よし、またマジック点灯したぞ」
「しかも前より減ってるぜ」
「じゃあこのままだな」
「次の阪神戦も勝って」
「マジックさらに減らしていこうぜ」
「そして優勝だ」
それを目指そうというのだ、尚巨人は広島に連勝したがそれでも次のヤクルトには見事三試合連続完封そして二桁得点を許すという実に巨人らしい心地よい負け方をした。巨人には無様な負けがよく似合う。
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