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ホームランバッター、アベレージヒッター

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第一章

               ホームランバッター、アベレージヒッター
 そのチームには二人の主力打者がいた。
 一人はロジャー=ストイコビッチ、メジャーを代表するパワーヒッターで三度のホームラン王に輝いている。
 もう一人はホセ=サンターナ、首位打者を四回獲得しているメジャーきってのアベレージヒッターだ。
 この二人がチームの打線の軸だ、そして。
 その二人についてだ、監督のダニエル=ワンも言っていた。
「あの二人の起用の仕方が軸だ」
「チームのですね」
「それのですね」
「そうだ、パワーならストイコビッチだ」
 何といっても彼だというのだ。
「飛ばすことならな」
「もうメジャーでダントツですね」
「何といっても」
「毎年三十本以上打ってますし」
「四十本以上もざらですし」
「そうだ、そしてアベレージはな」 
 安定したヒットならというと。
「サンターナだ」
「彼ですね」
「三割切ったことないですし」
「いつもコンスタントに打ちますね」
「バットコントロールも確かで」
「この二人をな」
 まさにというのだ。
「どう使うかでな」
「チームも変わる」
「そうですね」
「そうなりますね」
「そうだ」 
 アジア系独特の切れ長の目で言う、ワンはメジャーの選手では背はそれ程高くはないが独特の雰囲気を醸し出している。仇名は策士である。
 そしてその策士がだ、こう記者達に言うのだ。
「具体的にはどっちが三番か四番かだ」
「打順ですね」
「それがどうか」
「それで、ですね」
「チームは大きく変わりますね」
「そういうことだ、だからよく変えている」
 その打順をというのだ。
「うちのチームはそうだな」
「そうですね、相手や二人の調子を見て」
「その都度変えてますね」
「二人の個性も考えて」
「そのうえで」
「どっちかが三番でもう一方が四番でも」
 それでもとだ、記者達も言う。
「問題ですね」
「何時どう起用するか」
「それ次第で、ですね」
「チームの勝敗も決まりますね」
「五勝っていうな」 
 ワンは今度は勝ちのことを言った。
「ペナントで監督の采配で決まるのは」
「大体五勝位ですね」
「五勝影響するっていいますね」
「チームの勝利数に」
「監督の采配はそれだけだと」
「五勝落としたらな」
 監督の采配、それでというのだ。
「優勝争いだと終わりだろ」
「はい、確かに」
「五勝は本当にデッドラインです」
「若し五勝落としたら」
「優勝争いから落ちますね」
「そこは俺の仕事だ」
 監督である自分の、というのだ。
「フロント、選手、コーチも勝ちの数を稼いでな」
「そしてですね」
「監督もですね」
「五勝稼ぐ」
「優勝の為に必要な数を」
「その為にもな」
 まさにというのだ。 
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