レーヴァティン
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第三十話 返還と賠償の後でその九
「アメリカ軍がイタリアに来てからと言われていますし」
「カルボナーラもかよ」
「そうです、当時イタリア軍は戦争中で物資不足でしたが」
イタリアでもそうだったのだ、戦争中は戦争という行為自体が相当な消費行為なのでどうしてもそうなってしまうのだ。
「アメリカ軍は物資で戦っていましたね」
「日本相手にもな」
「そうだったので物資があったので」
「全部アメリカ軍の物資から作ったんだな」
「ベーコン、生クリーム、卵と」
そうしたもの全てがというのだ。
「イタリア側がアメリカ人の好きそうなものを集めて作りますと」
「カルボナーラになってか」
「美味しかったのでアメリカ軍から好評で」
それでというのだ、
「定着したとか」
「そうだったんだな」
「どちらもアメリカ軍からとなりますね」
ナポリタンもカルボナーラもというのだ。
「東西で違いますが」
「それが面白いな」
「そうだね、僕もどっちも好きだけれど」
源三も話に入ってきた。
「アメリカ軍からとはね」
「予想外でしたか」
「まさかだよ」
「確か最初のスパゲティは」
進太が言うには。
「粉チーズをまぶしただけで手で持って食べていたとか」
「そんなのだったかよ」
「そうだったと聞いています」
こう久志に話した。
「拙者は」
「シンプルだな」
「フォークも使っておらず」
「今のスパゲティと全然違うな」
「ナポリの名物料理だったそうでござる」
「南イタリアか」
「あちらでござる」
イタリアはイタリアでもそちらからというのだ、イタリアは南北それに中央部と大きく三つに分けられているのだ。
「元々はそちらの名物だったでござるよ」
「そうだったんだな」
「ただ、ナポリタンはござる」
「さっき話した通りにだよな」
「日本生まれでござる」
名前とは違ってというのだ。
「そうでござる」
「そこ本当に意外だな」
「しかも美味しいからね」
淳二は笑ってナポリタンの味のことを話した。
「ケチャップのその味がね」
「あれがいいよな」
「それで久志はやっぱり大蒜とオリーブオイルはだね」
「欠かせないな」
スパゲティならというのだ。
「何といってもな」
「そうだよね」
「逆に言うとこの二つがないとな」
「パスタ自体が」
「もの足りないな」
久志としてはというのだ。
「だからな」
「そっちのお店でもだね」
「どっちもあるんなら最高だな」
「無論でござる」
進太は久志にすぐに答えた。
「パスタにその二つがないのはお蕎麦に山葵がないのと同じでござる」
「その違いが大きいよな」
「はい、山葵がありませんと」
かけそばにである。
「どうしてもです」
「もの足りないな」
「ですから」
それでというのだ。
「そのお店もでござる」
「大蒜とオリーブオイルはか」
「たっぷり使っているでござる」
「たっぷりか」
「そうでござる」
実際にというのだ。
「どちらもでござる」
「それはいいな」
「ではこれより」
「行こうか、食いにな」
そのパスタをというのだ、こう話して一行は淳二のアジトに行くまでに腹ごしらえに進太が紹介するその店に入ったが。
その店のカルボナーラを食べてだ、淳二は目を瞠ってこう言った。
「確かにな」
「美味しいでござるな」
「ああ」
実際に食べてこう答えた。
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