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真田十勇士

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巻ノ百十三 加藤の誓いその九

 すぐに熊本を後にした、そうして言うのだった。
「ではな」
「銭を払いましたし」
「心残りなくですな」
「薩摩に向かう」
「そうされますな」
「うむ」
 その通りだとだ、共に向かう十勇士達に話した。
「そうする、それでじゃが」
「はい、島津殿に文をお渡しし」
「いざという時にですな」
「万全な様にしておく」
「そうしておきますな」
「戦なぞないに限るが」
 しかしというのだ。
「起こればな」
「勝った場合も負けた場合も」
「共に考えてですな」
「備えておく」
「そうしていくのが兵法ですな」
「そうしたものですな」
「真田の兵法は必勝を期すが」
 しかしというのだ。
「それだけではない」
「むしろ生き残ることですな」
「それが第一ですな」
「何としても生き残る」
「それが真田の兵法ですな」
「そうじゃ、父上もそうである」
 昌幸、彼と兄の信之の兵法の師匠でもある彼もというのだ。
「何といってもな」
「まずは生き残る」
「それからですな」
「兵法というものは」
「それを第一とされているのですな」
「だから拙者もそうするのじゃ」
 まさにというのだ。
「生き残る、右大臣様もじゃ」
「生き延びて頂く」
「例え敗れようとも」
「その時は」
「そうする、しかもな」
 ここでだ、幸村は十勇士達にこうも話した。
「今の拙者はこれまで以上に生き延びられる様になった」
「その様にもなりましたな」
「術を備え」
「そうされて」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「そうなった、ではな」
「その時は」
「その術を思う存分使われ」
「そして、ですな」
「右大臣様をお助けし」
「生き残って頂く」
「何としてもな」
 こう十勇士達に話した。
「その策はある」
「して殿」
「その術とは一体」
「どういったものでありましょう」
「宜しければです」
「我等によくお話して頂けますか」
「前にもお聞きしましたが」
 今はというのだ。
「我等殿の義兄弟」
「生きるも死ぬも同じと誓った仲」
「それだけにです」
「知っておきたいのですが」
「うむ、そろそろ話そうと思っておった」
 幸村もこう返した。
「友であり義兄弟でもあるお主達にな」
「さすれば」
「どういったものでしょうか」
「こうした術じゃ」
 幸村はその術のことを細かく話し見せもした、するとだ。十勇士達は誰もが驚いて言うのだった。
「何と」
「そうした術とは」
「凄いですな」
「その術ならばです」
「必ず」
「そうだな、だからだ」
 術の話からだ、幸村は十勇士達に述べた。 
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