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歌集「春雪花」

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 野辺の風

  銀杏も紅葉も

    散り果てぬ

 つもりし道そ

   踏みて行きけり



 冬の風に銀杏も紅葉も散ってしまい…残るは葉のない木々と落ち葉の積もった道…。

 田舎では、既に雪が降り始めただろう…そう考えると、無性に寂しくなってしまう…。

 もう帰る場所のない故郷とは言え…彼と会えた場所であり…彼を愛した場所…。


 寂しさを抱き…枯れ葉を踏んで今を歩み行く…。



 小夜寒み

  風に朽ちにし

   枯れ尾花

 虫の鳴く音を

     偲ぶ月影



 夜の風は冷々とし、凛とした冬の匂いが辺りを覆う…。

 夏には野原を覆っていた芒さえ、今は枯れ果て…頽れている…。

 日々に疲れ果て…恋も叶わず…溜め息だけの毎日…そんな私には丁度良い風景なのかも知れない…。

 月はまるで秋の虫の音を偲んでいるかのように…淡く枯野に差し込む…。


 世は無常…それでも変わらず彼を愛している私は…どうかしているのだろうか…。



 
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