レーヴァティン
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第三十話 返還と賠償の後でその二
「確実にね」
「その通りだ、しかし貴殿は人は一切傷付けていない」
団長は淳二の盗んだ時のこのことを話した。
「これまで一度もな」
「盗む時はね」
淳二も団長に笑って話した。
「絶対に誰も傷付けない」
「貴殿の主義か」
「そうさ、誰も傷付けずに盗んで」
「捕まらずに去る、か」
「おいらはシーフで強盗じゃないからね」
淳二は実際に自身のポリシーを述べた。
「戦う時は戦っても」
「それでもだな」
「その時以外は誰の命も奪わないよ」
「一切だな」
「そう、一切ね」
そこは絶対にというのだ。
「若し誰かを傷付けたら」
「盗む時にだな」
「おいらその時点で怪盗止めてたから」
こう団長に話した。
「もうね」
「そうした考えだからだ」
「それでなんだ」
「貴殿はそれで許される」
「誰も傷付けなくてポリシーがあるから」
「遊びで人を傷付け殺める輩はだ」
団長はその目を鋭くさせてだ、淳二に告げた。
「私が許さぬ」
「若しおいらがそんな奴ならだね」
「斬っていた」
本気での言葉だった。
「容赦なくな」
「首をだね」
「人を苦しませるのは騎士道ではないが」
「悪党はだね」
「斬る」
やはり返事は一言だった。
「世の為人の為にな」
「ひいてはこの島の為だね」
「人と呼ぶにも値しない外道はいる」
この島にもというのだ、何時でも何処でも聖人の如き人格者もいればそうした外道もいる。どちらもその存在は流石に稀ではあるがだ。
「貴殿がそうした者でなくてよかった」
「それでだね」
「貴殿はだ」
まさにというのだ。
「これからはだ」
「この力を使って」
「この島を、世界を救って欲しい」
是非にという言葉だった。
「そうしてくれるな」
「おいらもこの世界の話は聞いてるけれどね」
それも詳しくだ、盗賊家業は情報収集も大事であり彼もそれは怒怠ってはいないということだ。
「それじゃあね」
「やってくれるか」
「まあ財宝を集めていたのは趣味だったけれど」
「この世界についてはか」
「楽しい世界じゃない」
明るく笑ってだ、淳二は団長に答えた。
「何かとね」
「だからか」
「うん、崩壊とかしたら駄目だよ」
それこそというのだ。
「おいらもいられないし寂しいし」
「それでか」
「この世界を救うのなら」
それならというのだ。
「おいらに出来ることをするよ」
「ではだ」
「うん、財宝を全部戻して」
「賠償金もだ」
そちらもとだ、団長は言うのを忘れなかった。
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