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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第19話 伝説の美食屋現る!フグ鯨を捕獲せよ!!

side:アーシア


「へへっ、まさか四天王のイッセーとココがいるなんてな…!奴らならデビル大蛇にも食い下がるだろう!この小娘は他の猛獣が出た時の生贄にしてやる!」
「んんんっ!?」


 イッセーさんたちがデビル大蛇に気を取られている内に私はこの美食屋の人に誘拐されてしまいました。私がもっとしっかりしておけばこんな事には…


「もうすぐ洞窟の砂浜だ!俺が一番乗り…!?ッな、何だと…!」


 広い場所に出た私たちに立ちふさがったのはデビル大蛇でした。さっきのとは違う個体でしょうか?足元にいる象のような猛獣を食べていました。


「ば、馬鹿な!?デビル大蛇が複数いるだと…!だが俺には囮がある。そうらっ!」
「あうっ!」


 私はデビル大蛇の目の前に投げ飛ばされてしまいました。こ、怖いです……


「俺は絶対に洞窟の砂浜に行くんだ!何が何でも洞窟の砂浜に!!」


 私を投げた美食屋の人は一目散に逃げていきましたがデビル大蛇は腕を伸ばして美食屋の人を捕まえました。ま、まさか……


「やめてください!」
「ぎゃああぁぁぁああ!?」


 美食屋の人はデビル大蛇に丸のみにされてしまいました。


「そんな、食べられてしまうなんて……」


 目の前で人が捕食された光景を見て初めて弱肉強食という世界の恐ろしさを知りました。


「このままじゃ私も食べられてしまいます、でもどうしたら……」


 デビル大蛇はゆっくりと私の方まで這いずってきます、私も逃げようとしましたが恐怖で足が動きません。このままでは私も殺されてしまいます、私は懐からお札のようなものを取り出しました。


「イッセーさんが万が一の時に使えってくれたお札…確か防御結界を出す物でしたね」


 イッセーさんが旅立つ前にくれたのがこのお札でした。朱乃さんに頼んで用意してもらった防御用の結界を生み出すお札で更にイッセーさんの『赤龍帝からの贈り物』で強化しているので並みの猛獣なら破ることは出来ないと言っていました。


「イッセーさん……」


 どんな時でも私の事を思ってくれるイッセーさんに感謝しながらお札を使いました。すると私を覆うように丸い結界が生まれて周りにいた小さな猛獣たちを遠ざけてくれました。


「これなら何とか…!?」


 私が安堵しているとデビル大蛇が結界を殴りつけてきました、大きな衝撃に転びそうになってしまいます。


「結界にヒビが……!?」


 デビル大蛇の攻撃で結界にヒビが入ってしまいました。デビル大蛇の攻撃は更に激しくなっていきヒビが大きくなっていきます。


「イッセーさん……小猫ちゃん……助けてください……!」


 しかしとうとう結界が壊されてしまいデビル大蛇の腕が私を捕らえようと迫ってきました。私は恐怖で目を閉じました。


「させません!」


 絶体絶命だと思ったその時でした、小猫ちゃんが現れて迫っていた腕を受け止めていました。


「祐斗先輩!」
「うん、任せて!」


 そこに祐斗さんも現れてデビル大蛇の腕を魔剣で切り裂きました。


「喰らいなさい!」
「うふふ、ちょっとオイタが過ぎますわね…雷よ!」


 リアスさんと朱乃さんの滅びの魔力と雷がデビル大蛇の胴体に直撃しました。


「小猫ちゃん、それに皆さんも…」
「話は後です!今は早く逃げましょう!」


 小猫ちゃんは私をお姫様抱っこしてデビル大蛇から逃げようとします。ですがデビル大蛇は先程の攻撃が効いてない様子でこちらを追いかけてきました。


「くっ、魔剣よ!」
「これでも喰らいなさい!」


 リアスさんたちが魔剣や魔法で足止めをしますが直に再生して腕を伸ばしてきました。


「きゃあっ!!」
「しまった!?」


 一瞬の隙をつかれて私と小猫ちゃんがデビル大蛇に捕まってしまいました。


「小猫!?アーシア!?」
「今助けるよ!」


 リアスさんたちが私たちを助けようとしますがデビル大蛇の攻撃で近づけないみたいです。


「小猫ちゃん、私のことはいいから小猫ちゃんだけでも……」
「そんなの駄目です!先輩と約束したんです、必ずアーシアさんを助けるって…それにアーシアさんは先輩やオカルト研究部の皆と同じくらい大切な人なんです!だから絶対に見捨てたりはしません!!」
「小猫ちゃん……」


 小猫ちゃんは必死で腕を外そうとしますがデビル大蛇は更に強く締め付けてきました。


(主よ、どうか小猫ちゃんだけでも……)


 どうして私はこんなにも非力なのでしょうか…何もできない自分が嫌になります。私は薄れゆく意識の中で主に祈る事しか出来ませんでした。


「何じゃ、騒がしいのう。人が折角フグ鯨のヒレ酒を楽しんでいるというのに無粋な奴じゃな」


 そんなときでした、不意に誰かの声が聞こえたかと思うと急にデビル大蛇が私たちを手放しました。宙に投げ出された私たちを救ってくれたのは大きな手でした。


「大丈夫か?怪我はしていないか?」


 意識がはっきりとしてきた私の目に映ったのは大きな白髪のリーゼントをしたお爺さんでした。よく見るとデビル大蛇がお爺さんの横に倒れていました。


「小猫!アーシア!」


 駆けつけてきたリアスさんが私と小猫ちゃんを抱きしめました。


「良かった…二人が無事で…」
「リアスさん…皆さん…ご心配をおかけして申し訳ございません…」


 リアスさんは安堵して涙を流していました。私はこんなにも沢山の人に思ってもらえていることを知って泣いてしまいました。


「貴方が二人を助けてくれたのね、ありがとう」
「なあに、礼には及ばんよ。お前さん達には列車での借りがあったからのう」
「借りって……もしかして貴方は列車にいたお爺さんですか!?」


 リアスさんのお礼にお爺さんは気にしてないという風に手を振りました。でも祐斗さんはお爺さんの正体を聞いて驚きました。無理もありません、今目の前にいるお爺さんは列車で出会ったお爺さんとはまるで体格が違いますから皆が驚いています。


「でもどうしてお爺さんがこんな所にいるんですか?」
「あっしはフグ鯨を捕獲しに来たんじゃよ。こいつのヒレ酒は絶品じゃからのう」


 小猫ちゃんの問いにお爺さんは持っていたバケツの中身を見せてくれました。これがフグ鯨なんですか?何だか可愛いです。


「そんじゃあ気を付けてな。連れの少年にも宜しく言っておいてくれ」


 お爺さんはそう言って去っていきました。


「彼は一体何者だったんだろうか?」
「命の恩人であるのは間違いありませんわね、私たちではデビル大蛇から逃げる事はかなり厳しい状況でしたしまさに運が良かったとしか言えませんわね」
「人の縁って本当に不思議なものね」


 リアスさんの言う通りあの時小猫ちゃんがお爺さんを助けて無かったら今頃私たちは生きてはいませんでした。これも主の導きなのでしょうか?命が助かったことを感謝しないと。



「アーシア!皆!無事か!」
「イッセーさん!」


 そこにイッセーさんとココさん、そしてティナさんが駆けつけてくれました。私はイッセーさんに駆け寄り彼に抱き着きました。


「アーシア!ごめんよ、君を守るなんて言っておきながらこんな怖い目に合わせちまって…」
「そんな事ありません、イッセーさんがくれたお札が無かったら私はもう死んでいました。イッセーさんは約束通り私を守ってくれました」
「アーシア……」
「イッセーさん……」


 えへへ、不謹慎ですがこうやってイッセーさんに抱きしめられるとさっきまでの恐怖が嘘のように和らいでいきます。


「皆もありがとう、アーシアを救ってくれたんだな」
「イッセーくん、それなんだけどね……」

 
 祐斗さんが先程までの出来事をイッセーさんに話しました。


「…という訳なんだ」
「…白髪の爺さんにノッキングされたデビル大蛇……間違いない、それは『ノッキングマスター』次郎だ」
「ああ、デビル大蛇をノッキングできるなんて彼くらいだろう」
「嘘!ノッキングマスターに出会ったの!?めちゃんこ美味しいニュースになったのにーーーっ!!」


 イッセーさんたちはどうやらさっきのお爺さんの事を知っているみたいです。


「ノッキングマスター次郎……世界で数人しかいないとされているグルメ界に入ることが出来る伝説の美食屋だ。あらゆる猛獣のノッキングを熟知しており体の形態すらも自在に操ることが出来るとも言われている。彼のフルコースは未だに世界中の人間がほとんど口にしたことのない未知の食材で捕獲レベルも測れんらしい」


 そんな凄い人物に会っていたなんて…!私たちは本当に運が良かったんだと思いました。


「いつかまた会えたらお礼を言わないとな」
「はい、そうですね」


 いつかまた次郎さんに会えたらちゃんとありがとうございましたってお礼を言いたいです。


「でもノッキングマスターが向こうから来たって事はもう洞窟の砂浜はすぐそこだって事だね」
「ああ、いよいよフグ鯨とご対面って訳だ!行こうぜ、皆!!」


 私たちは洞窟の砂浜を目指して歩きだしました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー
 
side:祐斗


 アーシアさんを助けてイッセー君たちと合流した僕たちは洞窟の砂浜を目指して歩いていた。しばらくすると前方に光が見えてきたので皆で駆け足でそこに向かった。するとそこには美しい自然の風景が広がっていた。


「なんて綺麗な光景なのかしら…」
「水も透明で泳いでいる魚が見えますね、じゅるり…」


 部長達もこの光景に目を奪われている、僕も思わずため息が出てしまうくらいの美しさだ。


「さてさっそくフグ鯨に会いにいくとするかな!」


 イッセー君はそういうと上着を脱いで半裸になっていた。相変わらず引き締まったいい体だね。


「イッセー先輩の半裸……!たまりません……!」
「はわわ、すっごく逞しいです!」
「あの腕で抱きしめてほしいですわ……♡」
「小猫と朱乃は自嘲しなさい」
「若いわね~」


 女性たちがそれぞれの反応をしているが小猫ちゃんやアーシアさんは分かるけどもしかして朱乃さんもイッセー君の事を…?だとしたらイッセー君も中々に罪な男だね。


「じゃあ行こうぜ、小猫ちゃん!」
「えっ?でも私は水着を持ってませんよ?」
「あ、そういや言い忘れてたな…すまん、女性陣はここで待っていてくれないか?」
「ええ、分かったわ」


 まあ女の子が水着も無しに海に入る事なんて出来ないよね。フグ鯨の捕獲は僕たち男性陣だけで行くことになった、正直僕は足手まといかもしれないけど二人の美食屋の技術を見てみたいし付いていく事にしたんだ。


(うわ…海の中ってこんなにも透き通ってるものなんだ…)


 海に潜ってみると水の透明度がよく分かる、まるで空を泳いでいる感覚だ。


(祐斗、こっちだ)


 イッセー君とココさんの後を追って泳いでいくと二人が急に止まった。


(イッセー君、どうしたの?)
(見てみろよ、お目当てのフグ鯨がいたぜ)
 

 イッセー君が指を刺した方を見てみるとそこには鯨ほどの大きさをした魚が泳いでいた。


(あ、あれがフグ鯨!?普通に鯨サイズじゃないか!)
(よーく目を凝らして見てみるんだ。どうやら今年は大当たりみたいだね)


 ココさんに言われた通り目を凝らして見てみると目の前にいた大きな魚の正体に気が付いた。


(あれは……小さな魚が何匹も集まっているのか…?)


 そう、僕が見た巨大なフグ鯨は何十匹ものフグ鯨が集まって出来たものだった。凄い数のフグ鯨だね。


(さてここからが本番だ。フグ鯨はほんのちょっとした刺激で直に毒化してしまう。まずはこちらの気配を消して近づくんだ。見ていてくれ)


 ココさんはゆっくりとフグ鯨に近づいていく。そしてココさんは懐から何か道具を取り出した。


(イッセー君、あれは何?)
(あれはノッキングガンのデリケートタイプだ。刺激に弱い動物や一瞬の緊張や痛みで肉が劣化してしまうような猛獣に使うんだ。フグ鯨はまさにデリケートな生き物だからな、一瞬でツボをつかなくちゃならねえ)


 ココさんはノッキングガンを構えながらフグ鯨一匹一匹を見て回っている。


(イッセー君、ココさんは何をしてるの?)
(ココ兄は今フグ鯨を見て警戒心が薄い個体を探しているんだ)


 目で見ただけで警戒心のない個体が分かるのかな?そういえばココさんは電磁波も見えるって言っていたからそれが関係してるのかな?


(…こいつがいいな)


 ココさんは近くを泳いでいたフグ鯨にゆっくりとノッキングガンを構える、そして……


 パシュンッ


 ノッキングガンから針が出されフグ鯨に刺さった、そしてフグ鯨がゆっくりと動きを止めた。


(ノッキング成功だ!流石はココ兄、見事なもんだぜ)


 どうやらココさんはノッキングに成功したらしい。


(ふう、上手くいって良かったよ)


 ココさんは網の中にフグ鯨を入れてこちらに泳いできた。


(祐斗くん、君も良かったらフグ鯨を捕獲してみないか?)
(え、僕がですか?)
(ああ、君がよければだけど…)
(は、はい!やらせてください!)


 ココさんからノッキングガンを借りた僕はココさんと同じ要領でフグ鯨に接近する、だがフグ鯨はちょっと指先が当たっただけで紫色に変色した。


(えっ、もう毒化したのか…!?)
(祐斗くん、フグ鯨は意識に非常に敏感なんだ)


 困惑する僕にココさんが話しかけてきた。


(意識…ですか?)
(そう、どんなに気配を隠しても攻撃する瞬間殺気は生まれる…野生の猛獣は殺気に敏感だ。だから意識を消すんだ)
(意識を消す……でもどうすれば…)


 ココさんのアドバイスを聞いてもいまいち実感がつかめない。意識を消すってどういう事だろうか?


(祐斗、次は俺が行くぜ。そこで見ていてくれ)


 今度はイッセー君がフグ鯨の捕獲に向かうようだ。


(イッセー、ほら、ノッキングガンだ)
(いや、俺は素手でいく)


 イッセー君はココさんからノッキングガンを受け取らずにフグ鯨に近づいていった。


(さて…こうやればいいのかな?)


 その時だった、イッセー君の体が一瞬消えてしまったかのように見えたんだ。でもイッセー君はそこにいるし今のは一体…?


(驚いたな、意識を完全に海水に溶け込ませている……一回見ただけでもうコツを覚えたのか…)
(ココさん、イッセー君は何をしたんですか?)
(イッセーは自身がフグ鯨に向ける意識を完全に消し去っている。フグ鯨からすればイッセーが近くにいる事は分かっていても意識が向いてないから自分に何かしようとしてるだなんて思ってもいないだろう)


 ココさんの説明と今のイッセー君を見て何となくだけど意識を消すという事が分かったような気がする。意識を消すっていうのは注意や敵意、そして殺気を完全に抑え込んだ状態の事なんだ。だからイッセー君が近くにいてもフグ鯨は警戒しないんだ。


(…エラから頭部の中心へ…斜め45度の角度…ここだ!)


 イッセー君は素早く指をフグ鯨に刺した。そしてフグ鯨がゆっくりと動きを止めた。


(やったか…?)


 でもフグ鯨は紫色に変色してしまった。


(しまった、ノッキングの角度が悪かったのか…それとも一瞬殺気をだしちまったのか?)
(いや、ノッキングの角度も意識も完ぺきだった。今回は運悪くエラの近くに毒袋があったんだ)
(くそ、もう一度だ!)


 イッセー君は再びフグ鯨を捕獲しに向かった。


(どうかな?意識を消すっていう事が掴めたかい?)
(あ、はい。何となくですが分かったような気がします)
(そうか、それにしてもイッセーの才能には驚かされるな。初めて見た技術もあっという間に吸収して自分のものにしてしまうんだからな)


 ココさんの話を聞いて僕は驚いた。イッセー君は今日初めて知った技術を驚くべき速さで習得したとのことだ、てっきりもう既に慣れているんだと思っていた。


(…凄いな、イッセー君は…)


 僕と同い年なのに強いし頼りになるし色々な事を知っている、まるで年上の兄みたいな存在だ。


(僕も負けてられないね…!)


 そんな彼に追いつきたい、そう思った僕は再びフグ鯨を捕獲しに向かった。


 
 

 
後書き
 こんにちは小猫です。いよいよフグ鯨を調理するときがきました。でも特殊調理食材とされるだけあってココさんも相当苦戦しています。はたしてフグ鯨を食べる事は出来るのでしょうか?次回第20話『小猫、初めてのグルメ食材。フグ鯨を調理せよ!!』でお会いしましょう……って私が調理するんですか!? 
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